上 下
88 / 466
第3章

第88話 可愛いレターセット

しおりを挟む
メイドに、手紙を出したいから封蝋用のシーリングワックスと、シーリングスタンプを使いたいと言ったんだけど、なぜか、母様と兄様がいる居間に呼ばれた。

「ソーマ、お手紙を書いたんだって?」
「うん! ラルフ君達から手紙がきたからお返事を書いたんだよ」

兄様は、僕が差し出した封筒を受け取って、じっと見つめた後に、その封筒を母様に手渡した。

「お手紙を書いたのは初めてだよね。」
「うん!宛名はラルフ君達の家名が入っていたら大丈夫?」

僕宛の手紙も、住所とかでなくて、「エルストベルク辺境伯家 ソーマ・エルストベルク様」って書いてあった。王都なら、家名だけで宛先が分かるからそのまま届けてくれるんじゃないかな。

「ちょっと見せて。‥‥うん、宛先は大丈夫だけど‥‥。」

兄様は僕から封筒を受け取って、少し眺めてから、母様の方を見た。母様に封筒を手渡す。
母様は、封筒を受け取って見つめた後、手で撫でたり光にかざしてみたりした。

「ソーマ、宛先は大丈夫だけれど、この封筒はどうしたのかしら?」
「作ったんだよ。レターセット持ってなかったから」
「そうなのね。‥‥マーカスを呼びましょう」

母様はそう言うと、メイドを呼んで、叔父様に使いを出した。

どうやら、封蝋を持って来てとメイドに言ったときに、僕が持っていた封筒が見た事がないピンク色の封筒だったので、母様と兄様にすぐに連絡をしたようだ。
手紙を出す前に確認しようということになったみたい。

「この色とても素敵ね。手触りもいいし‥‥。この猫ちゃんのマークはどうやって入っているのかしら‥‥。」
「透かしだよ。そこだけ薄く作ってるんだよ」

えへっと僕は胸を張った。でも、母様と兄様はちょっと残念そうな様子だ。

「ソーマ、叔父様に判断してもらうけど、この封筒は素晴らしすぎて、送ったらすごく話題になってしまうかもしれないよ。
せっかく書いたお手紙だけど、別の封筒に入れ替えてもらうかも‥‥。あ、もしかして中の便箋も、かな?」
「うん! 便箋もお揃いだよ」

可愛いでしょ、というと、兄様は微笑んで頷いた。

「ソーマ、これはやっぱり目立ちすぎると思うわ。」

手触りがよかったり透かしだけならまだしも、うっすらピンク色の封筒は、他の手紙と一緒においていてもすごく目立ってしまうだろうと母様が言う。
この手紙の用紙はどうしたんだと、ツヴァイトベック家から聞かれる可能性が高いから、答えられる準備をしておく必要があるんだって。

確かに、プティ用に可愛くしたくてピンクにしたけど、ラルフ君達宛もピンクにしなくてもよかったかもね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

怪力令嬢だって幸せになりたい。

瑞多美音
恋愛
 見目麗しく朗らかなイレーナ・ロベールは侯爵家のご令嬢。  将来は自分の家の嫁に迎えたいという人で溢れることは簡単に予測できました。  一見して欠点など、どこにも見当たらないような彼女にもひとつだけ致命的な欠点があったのです。  それはスキル。別名神の贈り物。彼女が神から贈られたスキルは「怪力」だったのです。  一生独身の教会生活か幸せな結婚……もちろん目指すのは幸せな結婚ですわ!  怪力令嬢だって幸せ目指していいですよね!?  これは怪力令嬢が平凡な生活と幸せな結婚を目指す物語です。   ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  つたない部分もあると思いますが温かい目で見ていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。  ※1話約3000〜4000字程度です。  2019.12.25 本編完結いたしました。ありがとうございます。  2020.2.15 2万字以上の加筆と修正をしました!話の大筋に変更はありません。よろしくお願いします。  今後は不定期で番外編を投稿する予定です。よろしくお願いいたします。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

見知らぬ世界で秘密結社

小松菜
ファンタジー
人も足を踏み入れぬ『緑の谷』 その奥には人知れず佇む大きな屋敷があった。そこに棲むのは…… 一回1000字程度の更新となります。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

処理中です...