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第2章

第77話 自称ヒロイン系の何か

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「とぼけるな! 教室に置いてあったニコラ嬢の教科書を切り刻んだり、ダンスの授業用に準備していたドレスにワインをかけたりしただろう!」

会場が、ざわめき、一気に緊張が走った。

会場に居る人の脳裏にエミリア嬢の件が浮かんだんだろう。皆、ちらりと、エミリア嬢の方を見たような気がした。
だって、言っている事が、エミリア嬢の事件のときとそっくりだ。

ニコラ嬢とよばれたピンクブロンドの女性は、ヨナスの腕に胸を押し当てるようにしてしがみつきながら、涙目で震える声で言った。

「私、本当に怖くって‥‥。ヨナス様に近づくなって、体育館裏に呼び出されて、脅されたり‥‥。一年のクセに生意気だって言われたり。」
「見ろ! 可哀想に!ニコラ嬢はこんなに怯えてるんだぞ!そもそも上級生が下級生を脅すなんて、あるまじき事じゃないか!」

ミラ嬢は、こみ上げる怒りを抑えるような表情をしていたが、途中から、残念な物を見る目に変わった。

「‥‥、私、まだ入学すらしていないんですけど」
「は?」
「ですから、まだ入学できる年齢ではありません。学園に居ないですし、上級生でもないです。そもそも学園に居ないので教室に入って教科書を破ったりとかできません。」
「う、嘘だろ」
「婚約者だった?あなたが、なぜ私の年齢をご存知ないんですか?」
「な‥‥!」

ヨナスはあんぐりと口を開けたまま、ミラ嬢と、ニコラ嬢を交互に見た。

「ニ、ニコラ、体育館裏に呼び出されたというのは‥‥?」

混乱した様子で、ニコラ嬢に問いかけた。ニコラ嬢は動揺した様子だ。

「え、嘘、年下? 何それ‥‥。」

すっと、エミリア嬢が、前に出てきた。
ミラ嬢をかばうように立ち、ヨナスとニコラ嬢を睨みつけた。

「そもそも、体育館裏とは、一体どこのことでしょう。体育館という施設は学園にはございませんわよ。有りもしない施設の事まで言って、私の従姉妹を侮辱するのはやめていただきたいわ」

学園長も、ミラ嬢の前に駆けつけた。離れた場所に居たのか、肩で息をしている。
学園長がさっと手をあげると、近くにいた護衛騎士らしき人が数人、ヨナスとニコラ嬢を取り囲んだ。

エミリア嬢が、冷たい目で二人を睨みながら言った。

「私の大切な従姉妹に言った事、公爵家からも両家に抗議をさせていただきます。」
「もちろん、ファルケン家からも抗議をさせていだきますよ。それに、パーティを壊し騒ぐようなもの、他の出席者に迷惑なので、出て行ってもらうか」
学園長がそう言って、護衛騎士に目配せをする。

護衛騎士の手が、ニコラ嬢の腕をつかむと、ニコラ嬢が叫んだ。

「な、何よ、オジサンだれよ!あ、あんた!そのドリルヘア!悪役令嬢ね!」
「は?」

え、オジサンって学園長の事かな‥‥。

「私がヒロインなんだから! いずれ逆ハーして、王子様も私のものなんだから!」
「‥‥、何をおっしゃっているのか全くわかりませんわ」

エミリア嬢が首を傾げた。扇で口元を隠しているけれど、不気味なものを見るような目をしている。

ニコラ嬢って、アレかな? 転生しちゃった系? 
何だろう、この乙女ゲーム要素?

でもそもそも、侯爵令息と一緒に盛大に婚約破棄騒動をしてから、逆ハーで王子様とって、順番間違ってない?
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