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第2章

第73話 豪華な馬車

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数日経って、携帯型記録魔道具「何時でも撮れる君」の状況を見に行こうと、兄様と一緒にエルスト商会に向ったら、エルスト商会の前に豪華な馬車が停まっているのが見えた。

別にエルストベルク家の馬車が、質素というわけではないんだけどね。辺境伯家の馬車だから、頑丈さがメインになっているんだよね。
僕達の馬車は、その馬車から少し離れた位置に静かに停車した。

何となく予想していたけれど、豪華な馬車から降りてきたのは、ジョシュア殿下とエミリア嬢だった。
殿下が一緒だと、僕たちがエミリア嬢に気軽に声をかけるわけにいかないよね。

ジョシュア殿下の顔色が白く見える。光の加減じゃなくて、顔色悪いのかな、表情もなんだか曇っている。

馬車から降りて一歩踏み出したところで、ジョシュア殿下がふらついたように見えた。
慌てて、エミリア嬢が寄り添って支えている。反対側を、侍従らしき人、この間プティに嫌われた人だな、が支えている。

え?大丈夫なのかな。

ジョシュア殿下はどんどん具合が悪くなっている様に見えた。歩く度に身体が少しずつ前傾していく。

「殿下!無理なさらないでください!馬車に戻りましょう!」

侍従の人の声が通りに響く。
でも殿下は、首を振って、進み、商会に入って行った。

それを見つめていた僕と兄様。僕は兄様の服の端を引っ張った。

「ねえ、すぐ後に続いて入るとあまりよくないよね」
「うん‥‥。雰囲気的にね。少しだけ、待ってから入ろうか」

殿下達の姿が店内に消えてから、3分くらい待ってから、僕と兄様は商会のお店に入った。

入った途端、穏やかな笑い声が聞こえた。
入ってすぐのフロアに設置されているソファーに腰を下ろして、ジョシュア殿下が微笑んでいる。顔色も良くなっている。
隣にいるエミリア嬢の表情も柔らかい。

僕達が入店したのに気がついたのかエミリア嬢がちらりとこちらを見て微笑んだ。

「ケニー様、ソーマ君、ごきげんよう」
「こ、こんにちは。ジョシュア殿下、アドラー公爵令嬢。」

エミリア嬢から声をかけてくれたので、僕達はゆっくりと、二人に近づいた。侍従の人が、ギロリと睨んでくる。
この人護衛騎士じゃないのに、一番ぴりぴりしている気がする。

「お加減いかがですか」

さっき、具合が悪そうだったとは、聞けないけど、パーティで、体調を崩されたという話は広まっているので、具合を聞いても一応問題ないと思う。

「ありがとう。良くなってきているよ。先ほど少し目眩がしたけれど、今はもうなんともないんだ」
「そうでしたか。回復されているようでしたら何よりです。」
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