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第2章
第51話 チョコレートを食べよう
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「ごめんなさい。」
ミラ嬢が突然、謝った。
「え、なんでミラ嬢が謝るんですか?」
「あの人、ヨナスは、私の婚約者なの」
「ええ!?」
ミラ嬢とヨナス・モーガン侯爵令息は2年くらい前に婚約をしたんだって。
でも、ミラ嬢は最近まで領地に住んでいた事もあって、会う機会は少なかったそうだ。
王都に来たので、これからは交流を多くしようと、先日、エルスト商会に来たときにもらったチョコレートをヨナスにプレゼントしたらしい。
「ミラ嬢は悪くないでしょう?」
「でも、私がチョコレートを渡したから‥‥」
「それでも、悪いのはあの男だと思うよ!あんなやつ!一発殴ってやればよかった!」
兄様が拳を握りしめた。
ヨナスが騒いでいたからか、フロアには他のお客さんの姿はなかったんだけど、お茶を出してくれると叔父様が言ってくれたので、三階の商談室に移動した。
商談室で、ソファーに腰を下ろすと、ユリアさんがお茶と、お菓子を持ってきてくれた。
そのお菓子がチョコレートだったので、半泣きだったミラ嬢が、それを見てぷっと吹き出した。
「チョコレート、どうぞ沢山召し上がってくださいねぇ。甘い物を食べると落ち着きますよ」
「ふふッ‥‥。そうね」
ミラ嬢はチョコレートを一口食べて、口元を緩めた。
「美味しいっ。ふふっ。」
「やっぱり、苦みと甘みのバランスが絶妙で美味しいわね。こんなお菓子はあの男にはもったいないわよ」
「そうね、ふふっ」
エミリア嬢が言うと、ミラ嬢は、もう一口食べて、笑って、頬を指先で拭った。
兄様が、そっとハンカチを差し出した。
ミラ嬢はお礼を言って受け取り、涙を拭った。
エミリア嬢は、紅茶を一口飲んでから、カップをおいて、ミラ嬢に言った。
「あの、モーガン侯爵令息と一緒に居た女性は、知っている方なの?」
ミラ嬢が首を横に振る。
「そう。モーガン侯爵令息との婚約は考え直した方がいいんじゃないかと思うわよ。」
「そう‥‥ね。お父様に相談してみるわ」
ミラ嬢が頷くと、兄様が、はっとして顔を上げ、ミラ嬢を見つめた。
「あ、あの!婚約解消、するの?」
「父に相談してみないとわからないわ。私は出来ればそうしたいと今は思っているけど」
「そ、そう。その方がいいよ! あんなやつ‥‥」
兄様は先ほどの場面を思い出したのか、眉をひそめて、拳を握りしめた。
僕は、いつも出される果実水でなくて、今日は温かいミルクティを出してもらったので、ちょっと嬉しい。落とさないように両手でカップを持って、飲んでみた。
濃いめに入れられた紅茶にミルクが混ざってまろやかで美味しい。茶色っぽい砂糖が陶器の入れ物に入った状態で添えられている。
チョコレートが甘いから、砂糖はお好みで入れるという事なんだろうと思う。
チョコレートを一口食べて、口の中で溶けてきてから、ミルクティをもう一口飲んでみた。口の中のチョコレートの苦みがミルクティで洗い流されて行く感じがなんともいえない。
僕がお茶を楽しんでいる間も、ミラ嬢と婚約者の話が続いていたようだった。
ノックの音がして、一旦話が途切れた。
「お騒がせし、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。」
叔父様が入ってきて、ミラ嬢達に謝罪をした。
ミラ嬢は、自分も当事者なので、と、応えていた。
その後、「素敵髪生活」のヘアクリームのお試し会が始まり、空気が一変した。
ミラ嬢とエミリア嬢は、ヨナスの事はすっかり忘れたかのように、楽しそうにヘアクリームを試していた。
販売した「素敵髪生活」のセットの他に、今日のお詫びと言って、叔父様は、二人が気に入ったヘアクリームをミニボトルにしておまけで付けたら
すごく喜んでいたそうだ。
ミラ嬢が突然、謝った。
「え、なんでミラ嬢が謝るんですか?」
「あの人、ヨナスは、私の婚約者なの」
「ええ!?」
ミラ嬢とヨナス・モーガン侯爵令息は2年くらい前に婚約をしたんだって。
でも、ミラ嬢は最近まで領地に住んでいた事もあって、会う機会は少なかったそうだ。
王都に来たので、これからは交流を多くしようと、先日、エルスト商会に来たときにもらったチョコレートをヨナスにプレゼントしたらしい。
「ミラ嬢は悪くないでしょう?」
「でも、私がチョコレートを渡したから‥‥」
「それでも、悪いのはあの男だと思うよ!あんなやつ!一発殴ってやればよかった!」
兄様が拳を握りしめた。
ヨナスが騒いでいたからか、フロアには他のお客さんの姿はなかったんだけど、お茶を出してくれると叔父様が言ってくれたので、三階の商談室に移動した。
商談室で、ソファーに腰を下ろすと、ユリアさんがお茶と、お菓子を持ってきてくれた。
そのお菓子がチョコレートだったので、半泣きだったミラ嬢が、それを見てぷっと吹き出した。
「チョコレート、どうぞ沢山召し上がってくださいねぇ。甘い物を食べると落ち着きますよ」
「ふふッ‥‥。そうね」
ミラ嬢はチョコレートを一口食べて、口元を緩めた。
「美味しいっ。ふふっ。」
「やっぱり、苦みと甘みのバランスが絶妙で美味しいわね。こんなお菓子はあの男にはもったいないわよ」
「そうね、ふふっ」
エミリア嬢が言うと、ミラ嬢は、もう一口食べて、笑って、頬を指先で拭った。
兄様が、そっとハンカチを差し出した。
ミラ嬢はお礼を言って受け取り、涙を拭った。
エミリア嬢は、紅茶を一口飲んでから、カップをおいて、ミラ嬢に言った。
「あの、モーガン侯爵令息と一緒に居た女性は、知っている方なの?」
ミラ嬢が首を横に振る。
「そう。モーガン侯爵令息との婚約は考え直した方がいいんじゃないかと思うわよ。」
「そう‥‥ね。お父様に相談してみるわ」
ミラ嬢が頷くと、兄様が、はっとして顔を上げ、ミラ嬢を見つめた。
「あ、あの!婚約解消、するの?」
「父に相談してみないとわからないわ。私は出来ればそうしたいと今は思っているけど」
「そ、そう。その方がいいよ! あんなやつ‥‥」
兄様は先ほどの場面を思い出したのか、眉をひそめて、拳を握りしめた。
僕は、いつも出される果実水でなくて、今日は温かいミルクティを出してもらったので、ちょっと嬉しい。落とさないように両手でカップを持って、飲んでみた。
濃いめに入れられた紅茶にミルクが混ざってまろやかで美味しい。茶色っぽい砂糖が陶器の入れ物に入った状態で添えられている。
チョコレートが甘いから、砂糖はお好みで入れるという事なんだろうと思う。
チョコレートを一口食べて、口の中で溶けてきてから、ミルクティをもう一口飲んでみた。口の中のチョコレートの苦みがミルクティで洗い流されて行く感じがなんともいえない。
僕がお茶を楽しんでいる間も、ミラ嬢と婚約者の話が続いていたようだった。
ノックの音がして、一旦話が途切れた。
「お騒がせし、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。」
叔父様が入ってきて、ミラ嬢達に謝罪をした。
ミラ嬢は、自分も当事者なので、と、応えていた。
その後、「素敵髪生活」のヘアクリームのお試し会が始まり、空気が一変した。
ミラ嬢とエミリア嬢は、ヨナスの事はすっかり忘れたかのように、楽しそうにヘアクリームを試していた。
販売した「素敵髪生活」のセットの他に、今日のお詫びと言って、叔父様は、二人が気に入ったヘアクリームをミニボトルにしておまけで付けたら
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