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断罪
しおりを挟む国王ジョーセフの容体が回復し、毒の件を調査しようとした矢先、新たな事件が起こる。
今度は、側妃カレンデュラが毒を盛られたのだ。
使われた毒は、国王ジョーセフを狙ったものと同じだった。
「カレンッ!」
王妃の部屋、カレンデュラが眠るベッドにジョーセフが走り寄る。
カレンデュラが毒で倒れたとの報告を執務中に聞き、取るものもとりあえず駆けつけたのだ。
側には5歳になる第一王子セドリックと3歳のリゼット王女、そして乳母に抱かれた10か月の第二王子マーカスがいた。
「ちちうえ、ははうえが」
「大丈夫、大丈夫だ。お前の母は必ず助ける。死なせてなるものか」
涙を浮かべるセドリックの頭を撫で、ジョーセフは側に控える医師に心配そうに視線を向ける。
「ご安心を。妃さまが口にされた毒はかなりの少量でございました。茶の味が変だとすぐに吐き出されたそうです。数時間後には目を覚まされるかと」
「そうか・・・そうか・・・」
命に別状はないと聞き、ジョーセフの胸に安堵が満ちる。
それと同時に、ふつふつと怒りが湧いてきた。
ジョーセフ自身、毒を盛られたからその苦しみを知っている。
今それを、他ならぬ彼の最愛が味合わされているのだ。
「・・・許さぬ」
「陛下?」
「犯人を決して許しはせぬ。俺を狙うに飽きたらず、カレンまで・・・っ」
ジョーセフは全臣下を召集した。
そして、側妃の毒殺を指示した人物として、正妃アリアドネの名をあげた。
事件発生時、その場にいたカレンデュラ付きの侍女が証言したのだ。毒入りの茶葉は正妃からの贈り物だったと。
その繋がりで、先に起こったジョーセフ毒殺未遂も、アリアドネによる犯行とされた。
アリアドネはそれを否定した。
自分は毒など盛っていない。そもそも茶葉を贈ってもいない。カレンデュラにもジョーセフにも、そんな恐ろしい事を企んだりしないと。
だが、ジョーセフがそれを信じる筈もない。
「悪足掻きをするな。証人もいるというのになんと諦めの悪い、醜い女だ」
その後、約10日かけて全土から召集した全貴族の前で、ジョーセフはアリアドネを糾弾した。
本当なら、王国で一番高貴な女性である筈のアリアドネの両腕には枷が嵌められている。
さすがに拷問までは行われなかったが、心労のせいかアリアドネの顔色は酷く悪かった。
アリアドネの父であるデンゼル・ポワソン辺境伯が「陛下」と声を上げる。
「どうか再度よくお調べになってください。妃陛下はそのような事を企てる方では・・・っ」
「黙れ、デンゼル。これが娘だからとて私情を挟むでない。一族諸共処刑されたいか」
「・・・っ!」
ぐっと言葉に詰まるデンゼルに向かってジョーセフは更に続ける。
「前の王国騎士団長を務めた男であれば、この件の早期解決に尽力すべきであろう。デンゼル、お前は清廉潔白な男だと思っていたが、やはり家族の情の前では正義を曲げる事も厭わぬか」
「・・・っ、決してそのような・・・っ」
「ならば、せめて黙していよ。裁きの邪魔をするな」
ここでふと、ジョーセフが何かを思い出したかのように顎に手を当て、目を見開いた。
「裁き・・・そうだ、そういえば古の言い伝えにあったではないか。精霊王の裁きとやらが」
「な・・・っ」
その時、広間で驚愕の声を上げたのは誰だったのか。一人や二人ではなかった事だけは確かだ。
それだけ、国王の発した言葉は異常だった。
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