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23日目―焦らし責め、及び、悪魔達の確執―

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 部屋に入ると、土下座のような姿勢で声を上げていた蛍が、がばりと顔を上げた。
 悠々と近づく梓を待ちきれないとばかりに、鎖でつながれた限界まで近づいて、疲労の色が濃い歪んだ表情で言う。
「どめ、で……、とめで、ください……、っく、ぁ、っは、ぁ」
「えー、昨日後悔させるだのなんだの言ってたじゃん、ねえ蛍ちゃん?」
「謝るからあっ! もう、許してよぉぉぉ! あ、また、イっくイく、っ」
 掠れ切った声では満足にあえぐこともできず、股間に入れられた張形で奥を抉られて、ただどろどろの体を戦慄かせる。
 その座り方が楽なのか、土下座の姿勢から太ももを開き、尻を少し浮かせた姿勢を再び取る蛍。
 その後ろに回って、梓は蛍の陰唇の襞をめくりあげている張形を、こんこんと何度も足で蹴った。
「ほら、昨日までの威勢は、どうしたのかなあ蛍ちゃん、ねえ、ねえ」
「あっ! っぐ、んっ! だ、っで、え、あうっ! も、う……、気持ち、良すぎて……ひんじゃ、うぅぅっ…………っくあ!」
 ごつんと強く蹴られて、子宮まで伝わった震えに絶頂を極める蛍。
 性器と菊門をぱっくりと敵に割り開き、這いつくばって女の悦びを強制される姿に、暗い笑みを浮かべて、梓は充実感に満たされていた。
「ふふ、今まで開発されっぱなしで脳まで馬鹿になっちゃってたところ、一回冷静になっちゃったからねぇ。可哀想な蛍ちゃん」
「もぉいいでしょ! いや、また……っ! ね、え! とめて、止めて止めて止めて止めてぇぇええええええええええっ!」
「ふふ、じゃあこうしよう」
 蛍の淫液と唾液と汗でぐっしょり濡れた床に靴をきゅっと鳴らして、梓はにっこり笑う。
「股間のそれ、止めてあげる」
「はやく、はやくっ!」
「ああもう、うるさいなあ」
「あんっ! も、ういや、いやあ……」
 また張形を蹴られ絶頂し、嗚咽を漏らす蛍のわき腹を蹴って仰向けにして、梓は続ける。
「その代わり、今日一日は蛍ちゃん、自分の意思で、私の言う通りに体を動かしなさい?」
「………か、らだ?」
「そうそう」
―――パスワードでも良いんだけど、もう少し楽しみたいからね。
 でも、この子で遊ぶのも、そろそろ佳境だ。
「パスワードは聞かないよ。立てとかお座りとかちんちんとか、犬の芸みたいなことして私を楽しませてよ。せっかく用意してあげた張形を外せって言うんだから、それぐらいのサービス精神はないとね」
 一瞬、蛍の目に烈火のような光が戻った、ような気がした。
 しかし、そのタイミングで。
 力なくあお向けにされた蛍の張形を、思いっきり蹴る。
「ぅあああああっ!」
「ねえねえ、さあどうする? このまま責められたい?」
 さらに体重をかけて、ヴィィィィッ! と暴れる張形で、ぐりぐりと蛍のGスポットとポルチオを刺激してやる。
「ああああっ! 従う、従うからあ! も、許して! とめてぇぇっ!」
「はいよくできました、じゃあ最後にイって休憩だ。はい、最初の命令、笑えー」
「へ、あ、そん、……な、あああっ、あ、っく、っそ………、イぐ、イくイく、うぅぅうううゔゔゔうううっ!」
 そして。
 完全に馬鹿になったからだと、梓の命令を受けて追い詰められた心に挟まれ。
 白い頬を涙で汚し、さらにその上に歪な笑みを張り付けて、貞操帯から漏れ出るほどの愛液を吹き出して、蛍は絶頂を迎えた。
 
■■■
 
「はい、お話聞くときはお行儀よく―。ちんちん」
「……………ぅ、っぐ……っ!」
 これのどこが行儀が良いんだ、と思うも、従わざるを得ず。
 拘束は、四肢を別個に鎖でつながれる、という緩いものになったものの。
 踵は挙げて、肩幅の倍ぐらいに膝を開き、だらだらと愛液を滴らせる秘裂に気持ち悪さを感じながら、蛍は唇を噛む。
 唯一の救いは、自分でもはしたないと思う秘部を、梓に見られなくて済むところか。
 梓の命令の一環で、蛍はダイバースーツのようなぴっちりとした服を着させられていた。
 首、手首、足首と、末端まで覆われ、落ち着かなくて身じろぎする。
「……次は、どうするつもりよ」
 剣呑、というより恐る恐るといった気が増してしまった口調に、梓は答える。
「うんうん、今日はあんまり長くいれないからね。今週の平日の予定を教えてあげよう」
「……………もう、早く飽きてよ」
「まあまあそう言うなって。これだってクソ高い試作品なんだぜ」
「あ、ちょっとっ! …………?」
 がっ、と開いた股に手を入れられるが、予想した刺激はやってこない。
 にたにたと笑みを浮かべて、梓は言う。
「すごかろう。外部刺激遮断スーツだってさ。そんなわけで、今週はお休みできるね、蛍ちゃん」
「どうせ、休ませる気なんてないんでしょ……もう、わかってるわよ」
「あ、以心伝心? ちなみに正解はこちら」
「ひうっ!」
 梓が言った直後。
 乳首と陰核にぴりりとした刺激がきて、蛍は悲鳴を上げる。
「ひ、あっ! な、にこれ⁉」
「微弱なビリビリで気持ちよくなろうのコースね。あ、普通に振動もあるから」
 言葉の通り、電気信号と振動が交互に来て、蛍は喘ぎ声を漏らしながら、腰を揺らす。
 刺激が来るたびに太ももを震わせ腰を引き、止むと梓の命令に従うため前に突き出す動きは、卑猥なダンスで誘っているようで。
 しかし、さらに凶悪な仕掛けがあった。
「あ、っく、はあっ! だ、め……イっ………ぅ……?」
「残念でした」
 ちんちんの姿勢でヘこへこ腰を動かす蛍に、梓は告げる。
「そのスーツ、バイタルとかいろいろ取れるんだよね」
「あっ! え、ま、って、それって! あ、また、イっ……、あ、くぅ……ぅ。く、は、あっ……――~~~っ、今、度、こ、そ、ぅ、あ、あああ⁉ いや、イけな……っ!」
 もはやつま先で体重を支えきれなくなり、べしゃりとうつ伏せに倒れる蛍。
 力なく四肢を伸ばし、腰だけ別の生き物のようにびくびくと震える愛しい玩具の頬を撫で、梓は笑った。
「パスワード、教えてくれる?」
「…………ひ、っぐ、ぅぅ、ぅぅああああああっ! もう、ゆるじでぇぇっ! あ、またイく、イっく、いやあイけないっ⁉ いやああああああああっ!」
「あー、まだギリ耐えてるのかな? いやいやすっごいなあ」
 否定の言葉は口にせず。
 ただ無言でのたうち回る蛍を、梓は追い詰めるようなことはしなかった。
 ころりと、白衣から一錠の薬を取り出して、床に落とす。
「はいこれ、本当につらいとき用に、一錠だけあげるよ」
―――飲んだら終わりだなあ。
 一度の投薬で、あれほどの揺り戻しが来たのだ。
 もう一度飲んで、5日も焦らされたら確実に壊れる。
「あ、あ……………」
 そして、蛍は。
「……ん」
 何のためらいもなく、薬を口に含んだ。
(あーあ、終わった)
 効くまでに時間がかかるのか、少しずつ弱まっていく喘ぎ声を背に、梓は何となく寂しいような気持ちを抱えて、白い部屋の扉を開けた。
「それじゃあまた来週、それと、さよなら。蛍ちゃん」
 
■■■
 
 研究棟に備え付けられた自室に帰る途中で、面倒な奴に捕まった。
 梓よりも大きくて肉感的なブロンドの女性に進路をふさがれて、ため息をつく。
「………?」
「暇だったからあなたの調教、みせてもらったわよ。ずいぶんとお熱だこと」
「まあね」
 それに関しては否定するつもりもなく、梓は答える。
 アイリーンだって、さっきまで別の部屋で誰とも知らない玩具相手に楽しんできているはずだ。
 だってそれが、義務だから。
「まあ、見せしめって言っても、ほとんどだれも見ていないでしょうけどね」
「あんた今見てたって言ったくせに」
 初日に蛍に言ったことは、嘘ではないがおそらく正しく伝わってはいなかっただろう。
 半分は見せしめ、半分は暇つぶし。
 そして、研究所外部に出るわけがない調教記録が、誰への見せしめになるかというと。
 梓の肩を掴んで壁に押し付け、アイリーンは首筋を撫でる。
「あんた、あの子飼うつもりなの?」
「まあ、愛着も湧いたし。折れても飽きるまでは楽しむつもりだよ」
「あら、いけない子だこと」
 調教後の玩具を私的に占有するのは、一応は禁則事項となっている。逃がしたら研究奴隷落ちは免れない。
 ただし、セキュリティが鉄壁すぎて逃走なんてできっこないので、形骸化している。
「何人も囲ってるあんたに言われたくないよ」
「私はちゃんと管理してるもの。でも初心者には難しいんじゃないかしら」
 つー、と細い首を撫でて、服の上から胸を撫でる。
 まったく無反応の梓を愉快そうに見て、アイリーンは笑った。
「もしヘマしたら、あなたの調教は私がやってあげるわ」
「寝言は寝ていいなよ、おばさん。あなたにできることが、私にできないわけないでしょう」
「言ってなさい、小娘が」
 身の程もわからないのか? と憐れみの目を向ける梓に笑みを向けて、アイリーンは悠々と去っていった。
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