双璧の退魔師

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4章

芽生える友情

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 やって、しまった。
 涙が滲んで、白濁した仙華の身体がぼやける。
 洗脳されたのも、服を剥かれているのも、そもそも攫われたのだって、流華が強ければ防げたことだ。
 流華が汚したも、同然だ。

「ふ、ぐ……っ、うぅ……っ」
「あらあら、じわじわ後悔してきたかしら?」

 仙華の身体が、触手に飲み込まれる。
 拘束された流華の前で、彩音と仙華が四つん這いで固定された。食事のスタイルだった。
 ノウは言う。

「流華さんには、これから任務に行ってもらうわ。あなた方二人じゃないと対処できない依頼も回ってきてるのよ」

 そして、意地悪く笑いかけた。

「もし次の食事に間に合わなかったら、ここで張型を咥えるのは仙華さんになるからね。覚えておきなさい」
「湯船に入れて、布団で寝かせてやってくれよ……っ。お願いだから……っ!」
「それを叶えたいなら、さっさと依頼をこなすことね。ああそれとも、自分だけ逃れたいなら別に逃げても良いわよ?」
「……くそっ! この下衆が!」

 やけっぱちのように叫んで、流華は犬歯をむき出しにした。

「依頼書寄越せよ! 秒で終わらせてきてやるからな! 終わったら仙華をちゃんと休ませろ! わかったか!」
「はいはい、善処するわ」

 そして、流華の拘束が緩まった。

    ◇

 そして三日が経過した。
 昼間、当主用の広い部屋で欠伸をして、ノウは積み上がった処理済みの依頼書を眺める。
(ほんっとう、凄いわね)
 今のところ、日付前には流華は帰ってきている。それで仙華も、睡眠と食事はまともに摂れていて血色がいい。
 その代わり、流華は毎食を精液を模した流動食で済ませているわけだが、事務員によると討伐中は疲れなど感じさせない立ち回りだそうだ。
 だから。
(もう一押しね)
 仙華を守れなかった罪悪感から、麻痺しているだけだろう。疲れは溜まっている。
 もっと追い詰めて、仲間も妹も失わせてやろう。

    ◇

「は……?」

 流華は、言われたことが信じられなかった。
 食事と排泄が終わり、搾乳という名の凌辱を受けた後だった。
 ノウは同じことを繰り返す。

「だから、今日の任務は彩音に行ってもらうわ。あんまり彼女を閉じ込めとくと疑われるしね」

 だが、そうすると……。
 仙華と流華。四つん這いの拘束を姉妹で並べられているのが答えだった。

「クソガ……っ、彩音!」
「今ボクのことクソガキって言おうとしましたよね」
「お願いだから早く戻ってきてくれ……!」
「えー、どうしよっかにゃー」

 真面目くさった顔で思案する彩音に、流華は必死で頭を下げ続ける。
(ほんとうに、どうしようかにゃ)
 割と真面目に悩んでいた。
 自由になった両手で前を隠しつつ、彩音はノウに連れられて牢を出る。

「隠しちゃダメよ」
「あ、うぅ……」

 また、操身の触手。これがあるから逃げることはできない。

「ボクはいつまでに戻れば良いのかにゃ?」
「次の昼、つまり牢での食事が終わって、一時間後ぐらいかしらね。まあ、仙華さんを助けたいなら早く帰ってきても良いけど」

 あなたはそんなことしないわよねえ、と言われて、まあねえ……、と返す。
 でも。
(流石にルカちゃんが可哀想な気も、するんだよなあ……)
 心身ボロボロになって、年下に縋り、敵の足を舐めていた流華を思い出す。そうすると胸の辺りが鈍く痛む。
(ルカちゃん……。泣いてたな)
 竹を割ったような彼女に泣き顔は似合わない。見てはいけないものを見てしまったような罪悪感が膨らんで、どうして良いかわからなくなる。

「……はあ」

 ノウから双剣を受け取って、彩音は迎えの車に乗り込んだ。

    ◇

 嫌がらせのように、牢には時計が新設された。
 午前一時。流華の啜り泣く声だけが響いている。

「う、ぅ……っ。ぐず……っ、う……っ!」

 彩音はきっと戻ってこない。そんな義理はないのだから。
 半日もすれば、仙華は口淫と排泄を強要される。こんなに近くにいるのに、流華にそれを止める術はない。
 隣で同じく四つん這いの仙華は、洗脳が効いた虚ろな状態で、狛犬のようにじっとしている。その後ろにはノウの、おそらく分体。
 流華の尻を撫でまわしつつ、気楽な調子で話しかける。

「流華さん、今どんな気持ち?」
「……うる、ざい……っ」
「彩音さんが憎い? 私が憎い? まあどっちもかしらねえ。ねえねえ、どんな感じ?」
「……っ、ぅう……っ」

(なにやってんだろ、あたし……)
 これ以上耐えてなんになるんだ。
 どうせ捕まってる。彩音も帰ってこない。数時間後には姉妹仲良く肉棒を咥えて排泄する。
 もう、耐える意味なんて。

「……ははっ」
「あら? 壊れちゃったかしら」
「……はは、あは……っ」

 涙が止まらないのに、不思議と口角が上がっていた。
 惚けた笑みを浮かべたまま、流華は床に頬を付ける。体に力が入らない。沈む、沈む、沈む……。

「ちょっと? ボクがいなくなった途端に堕ちてるんじゃないですよ」

 沈みかけた意識が、急に浮き上がった。
 驚いて流華は顔を上げる。ノウですら目を見開いていた。
 仕事着代わりのセーラー服姿で、彩音が平然と立っていた。

「……なんで、お前……っ」
「ルカちゃんが言ったんじゃないですか。早く帰れって」
「お前そんな良い奴じゃないだろ……」
「ああん? 喧嘩売ってるんですか」

 強がってはいるが、彩音が無理しているのは明白だった。
 膝は震えているし、瞳は揺れている。ぴくりとも動かないのは、操身触手が発動しているからだろう。
 心底つまらなそうに、ノウは言った。

「いちおう、約束だからね。仙華さん、上でシャワーを浴びて、そのまま眠りなさい。それであなたは全て忘れる」
「はい……」

 仙華を解放し、そして入れ違いに彩音が牢に入ってくる。するすると下着まで全部脱ぎ、任務直後で汗ばんだ身体を、そのまま四つん這いで固められる。

「ん、う……。何回やられても、気持ち悪い、ですねえ」
「彩音」
「はい?」
「……ありがとう、ホントに」

 流華がつぶやくと、彩音はにたりと意地の悪い笑みを浮かべた。

「じゃあこっから出られたら、また仙華ちゃんのご飯が食べたいです! あ、あとルカちゃんのも。不器用が頑張りました、みたいな料理をバカにしながら食べてみたいです」
「……超性格悪いじゃねえか」
「へへへ。そりゃーボクですから。……ひぃっ!」

 突然、彩音が体を反らした。 
 ノウがガリガリと頭を掻く。

「私がいること忘れてない? ただでさえ予想が外れて苛立ってるっていうのに。彩音、任務終わりで昂ってるんでしょ? 抜いてあげる」

 彩音の陰茎が張り詰めていることは、流華も気づいてはいた。気づいていたが、見ないようにしていた。

「ひ、いあ……っ! あ、くう……っ」

 中が空洞の触手に飲み込まれ、肉棒を吸い立てられて、彩音はすぐに顔を蕩けさせる。
 深夜の牢に、吐精の喘ぎが響いたのは、それから幾許もしないうちだった。
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