双璧の退魔師

blueblack

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2章

権力には屈しない

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「ふう……っ」

 彩音は護符の効果を解く。音峰家が好んで使う特殊な護符だ。使用中は防音と施錠効果があり、使用後は空間の状態を使用前に戻す。
 さらさらになったシーツに力尽きた流華を寝かせて、彩音はそっとドアを開ける。

「うわ……っと」

 仙華はドアの前にうずくまって眠っていた。
 少し考えてから、仙華を流華の隣に寝かせ、彩音はそっと家を出た。
 姉妹の邪魔をするのもどうかと思ったし、それ以上に、あの家の中に留まりたくなかった。
(ひでぇ生活してますね、ルカちゃん。どこもかしこも、監視カメラだらけじゃないっすか)
 風呂やトイレにも容赦なく設置してある気配があった。
 最強レベルであっても、権力のない現場の退魔師なんて、こんなものだ。
(まあ、最強のボクでさえ、拮抗するのが限界ですからねえ)
 鼻歌まじりに夜の街を歩く。ゆらりゆらり、遊歩に見せかけて、一直線に目的地へ。
 今日もまた、任務が入っている。

    ◇

 彩音が気を利かせてくれたのか、身なりは至って清潔だった。
 横で眠る仙華を抱きしめて、流華は決意を再確認する。
(仙華のためなら、なんでもする。なにをされても、お前だけは姉ちゃんが守ってやる)

「すぅ……、すぅ……」
「可愛いなあ、お前は」
「いひゃ、いぃ……」

 頬を摘むと、寝言混じりの抵抗が返ってくる。まだまだ小さな手を握って、流華は鋭い目をベッドサイドに向ける。
 規則的に明滅する携帯端末。
 老害共が呼んでいる。

    ◇

 老害と言っても、彼らはよぼよぼの外見で杖をついているわけではないらしい。どうやら特殊な方法で、老化を抑えているようだ。
 断定はできない。彼らが流華に、頑なに姿を晒さないから。
 八柱本家、謁見の間。
 マジックミラー越しに堂々と立つ流華に、臓腑に響く低音がかけられる。

「また負けたそうだな」
「悪いかよ。勝敗に関するペナルティは無いはずだぞ」
「決闘とそれ以降の浄化の映像は八柱の記録に加えられる。それがわかっていての、あの結果か。無様を晒すと、妹が悲しむのではなかったのか?」
「うるせえ。文句があるならテメェがやれ。あと仙華を巻き込むなっつーのは絶対条件だ。そこが破られてみろ、あたしはお前ら全員の首を刎ねるぞ」

 大剣をマジックミラーに突きつけた。しかし微塵も威嚇にはならず、淡々とした声が続く。

「契約は守る。だが、八柱流華、先に契約を破ったのは貴様の方だ」
「あたしが何したってんだよ」
「昨夜、午後六時から零時ごろ、寝室の監視カメラの映像が途絶えた。音峰との密会だったのではないか、という疑惑が出ている」
「ば……っ! そんなもん……っ!」

 言葉に詰まった。護符を使用していたのは事実で、思い返せば契約違反ではある。

「無論、本気で疑っているわけではない。ただ、違反にはけじめをつける必要があるだろう」

 マジックミラーに隙間が生じて、軟膏のようなものを放られる。

「胸にそれを塗り、自慰で果てろ」

 合成音声のように淡々と、権力者の声が響いた。

    ◇

「下衆どもが」

 吐き捨てて、流華は大剣を置いた。袴の合わせ目をはだけて、サラシに手をかける。

「やけに素直だな」
「抵抗した方がテメェらクズは喜ぶだろ。見たけりゃ見ろよ」

 すぅ、はぁ、と小さく呼吸をして、下着がわりの布を緩めていく。潰されていた胸が外気に触れてぶるりと揺れる。

「ん……、はあ……」
「正座だ。罰だということを忘れるな」
「……くそ、ったれめ」

 言われた通りに正座になり、サラシを抜いて床に落とす。袴も肩を抜いてしまえば、もう白い上半身に纏ったものは何もない。
(今更、この程度で……、揺らぐと、思うなよ……っ)
 まだ隠すことはできたが、流華は両手をすとんと落とした。
 重力に逆らってつんと上向きの双丘が晒される。柔らかそうな質感と、頂点の桜色に視線が刺さるのが、マジックミラー越しでもわかった。
 軟膏を手に塗りたくる。

「気持ち、わりぃ……っ」

 ピンク色で、指でこねると重たく糸を引く。

「胸全体には塗らなくて良い。頂点にだけ重ねろ」
「おい……。なんだよ、これ」

 返事はない。
 覚悟を決めて、流華は右の乳首に軟膏を乗せた。

「ん……っ」

 最初はつんとした刺激、次いでじわじわと、胸の奥に浸透していく熱さがある。

「はあ……、はあ……っ」
「まだひと塗りだぞ」
「う、るさい……っ! ふぅ、ぁあ」

 機械的に、すくっては塗り、すくっては塗りを繰り返していく。乳首の色が軟膏の色のように濃くなっていき、みるみる硬さを増していった。
 左の乳首も、同じように薬漬けにしていく。

「あ、うあ……っ、ふぅ、……あっ」

(嫌な、感じ……。身体の中から、作り替えられる、ような……っ)
 ぴりぴりとした刺激が乳房全体に走る。捏ね回している乳首以外にも、乳房に小指が当たっただけで快感が生じた。

「ん、はあ……っ!」
「似合っているぞ」
「黙、れ……っあ、ぐく……っ」

 反駁するが、股座が濡れるのを止められない。正座というには締めすぎた内股の谷間がじっとりと濡れていく。もう感じたくなんかない。それでも自慰はやめられない。

「はあ……っ! あ、ああ……っ! ああ!」

 尖った乳首を摘んで扱く。硬く芯を持った蕾を右に左にいじめていくと、頭が白く染まっていく。
(ああ、もうすぐ……果てる、な)

「良い顔ではないか」
「うる、せえ……っ! っく、ああっ! あああ……っ!」

 睨みながらも手を止めない姿は滑稽でしかなかった。
 ぬちぬちと軟膏の音を響かせて乳首を扱き、最後にぎゅううう、と絞るように摘んで、

「あ、ああ……っ! イ……っく!」

 流華は乳房を押さえて身体をこわばらせた。

「あ、ああ……っ」

 公開自慰の憤辱と、薬漬けになった乳首の刺激で身体が熱い。マジックミラーに写っていたのは、唇を薄く開き、涙を浮かべた女だった。

「く、そ……っ」
「今日の分は塗ったな」
「今日、のぶん……?」

 乱れた着衣のまま問う流華の前に転がされたのは、数えきれない量の軟膏の瓶。
 マジックミラー越しに、権力者は淡々と言った。

「言い忘れていたが、今日からそれが、お前の日課だ」

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