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17-14 落ち込む暴君と耐える側近
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アリアドネがアイゼンシュタット城を出て行った理由を知ったシュミットとエデルガルトは項垂れているエルウィンに報告した。
「聞いて下さい、エルウィン様。アリアドネ様がこの城を出て行った理由が判明致しました!」
「アリアドネが城を出た理由だと……?それは俺の気が利かず、戦うだけしか脳の無い男で嫌気がさしたからだろう?事務処理の仕事だって苦手だし……何しろアリアドネに仕事を手伝って貰ったくらいだからな……」
シュミットの言葉に、ボソリと呟くエルウィン。
「何を言っておられるのです?アリアドネ様はそんなことで出ていったわけではありませんぞ?」
エデルガルトはバンッと机を叩いた。
「そうですよ、エルウィン様。自分が今迄どのような人間だったのか自覚できたのは成長の証ですが、問題はそのようなことではありません!」
「おい。シュミット、いくら何でも、言い過ぎだろう?」
眉をしかめるエデルガルト。
「あ、申し訳ございません。興奮のあまり、つい思ったことを口にしてしまいました」
「思ったことって……」
エデルガルトはその言葉に、思わず苦笑してしまう。
「そうだ、俺はペンを握るよりも剣を握るほうが得意な男だ。ダンスだって踊れないし、女性を喜ばせる術も知らない。何しろ、趣味は人骨を並べて酒盛りをする血に飢えた暴君だなどと言われているくらいだからな……」
そしてエルウィンは深いため息をつく。
「ですから、話を聞いて下さい。いいですか?アリアドネ様は勘違いされたのです!」
シュミットの言葉に、ようやくエルウィンは顔を上げた。
「勘違い?一体どんな勘違いなのだ?」
そこでシュミットはエデルガルトに声を掛けた。
「では、エデルガルト様からエルウィン様にご説明して頂けますか?」
分かったと言わんばかりに、エデルガルトは大きく頷くと説明を始めた。
「エルウィン様。よく聞いて下さい。アリアドネ様はメイドの仕事を解雇されたと勘違いしてしまったのです」
「え?師匠……それは一体……?」
「昨日エルウィン様は母君であるレイア様の形見のバッグと一緒に300万レニーを渡されたのですよね?」
「そうです。アリアドネはずっと無給で働いていましたから」
「アリアドネ様はそのお金を退職金だと思ってしまったのです。エルウィン様は今迄ご苦労だったと声を掛けられたのですよね?」
「はい。本来彼女はメイドをする立場の者ではありませんでしたから」
「そう、そこですよ。エルウィン様はアリアドネ様にメイドの仕事を辞めてもらい、自分の妻になってもらいたかった。違いますか?」
「は……はい……師匠の仰る通りです……」
エルウィンが顔を赤らめて頷く姿に、シュミットは吹き出しそうになってしまうのを肩を震わせながら必死で堪えた。
(う、嘘だろう?!あ、あのエルウィン様が顔を赤らめるなんて……!だ、駄目だ……おかしすぎる……!だが、今ここで笑っては……き、斬られてしまうかもしれない……!耐えろ…耐えるんだ……!)
シュミットが必死になって笑いを堪えている側で、エデルガルトが話を続ける。
「エルウィン様の言葉をアリアドネ様はそのまま受け取ってしまったのですよ。メイドの仕事はクビにされたのだと」
「な、何ですって?!そ、それは絶対に違うっ!」
エルウィンはガタンと席を立ったものの……すぐにまたドサリと座り込んでしまい、俯いてしまった。
「エルウィン様?何故また落ち込まれるのですか?」
「ですが……結局アリアドネは誰にも知られず城を出たわけですよね?やはり俺から逃げ出したかった為では無いですか?」
エデルガルトの問いかけにエルウィンはため息をつくのだった――。
「聞いて下さい、エルウィン様。アリアドネ様がこの城を出て行った理由が判明致しました!」
「アリアドネが城を出た理由だと……?それは俺の気が利かず、戦うだけしか脳の無い男で嫌気がさしたからだろう?事務処理の仕事だって苦手だし……何しろアリアドネに仕事を手伝って貰ったくらいだからな……」
シュミットの言葉に、ボソリと呟くエルウィン。
「何を言っておられるのです?アリアドネ様はそんなことで出ていったわけではありませんぞ?」
エデルガルトはバンッと机を叩いた。
「そうですよ、エルウィン様。自分が今迄どのような人間だったのか自覚できたのは成長の証ですが、問題はそのようなことではありません!」
「おい。シュミット、いくら何でも、言い過ぎだろう?」
眉をしかめるエデルガルト。
「あ、申し訳ございません。興奮のあまり、つい思ったことを口にしてしまいました」
「思ったことって……」
エデルガルトはその言葉に、思わず苦笑してしまう。
「そうだ、俺はペンを握るよりも剣を握るほうが得意な男だ。ダンスだって踊れないし、女性を喜ばせる術も知らない。何しろ、趣味は人骨を並べて酒盛りをする血に飢えた暴君だなどと言われているくらいだからな……」
そしてエルウィンは深いため息をつく。
「ですから、話を聞いて下さい。いいですか?アリアドネ様は勘違いされたのです!」
シュミットの言葉に、ようやくエルウィンは顔を上げた。
「勘違い?一体どんな勘違いなのだ?」
そこでシュミットはエデルガルトに声を掛けた。
「では、エデルガルト様からエルウィン様にご説明して頂けますか?」
分かったと言わんばかりに、エデルガルトは大きく頷くと説明を始めた。
「エルウィン様。よく聞いて下さい。アリアドネ様はメイドの仕事を解雇されたと勘違いしてしまったのです」
「え?師匠……それは一体……?」
「昨日エルウィン様は母君であるレイア様の形見のバッグと一緒に300万レニーを渡されたのですよね?」
「そうです。アリアドネはずっと無給で働いていましたから」
「アリアドネ様はそのお金を退職金だと思ってしまったのです。エルウィン様は今迄ご苦労だったと声を掛けられたのですよね?」
「はい。本来彼女はメイドをする立場の者ではありませんでしたから」
「そう、そこですよ。エルウィン様はアリアドネ様にメイドの仕事を辞めてもらい、自分の妻になってもらいたかった。違いますか?」
「は……はい……師匠の仰る通りです……」
エルウィンが顔を赤らめて頷く姿に、シュミットは吹き出しそうになってしまうのを肩を震わせながら必死で堪えた。
(う、嘘だろう?!あ、あのエルウィン様が顔を赤らめるなんて……!だ、駄目だ……おかしすぎる……!だが、今ここで笑っては……き、斬られてしまうかもしれない……!耐えろ…耐えるんだ……!)
シュミットが必死になって笑いを堪えている側で、エデルガルトが話を続ける。
「エルウィン様の言葉をアリアドネ様はそのまま受け取ってしまったのですよ。メイドの仕事はクビにされたのだと」
「な、何ですって?!そ、それは絶対に違うっ!」
エルウィンはガタンと席を立ったものの……すぐにまたドサリと座り込んでしまい、俯いてしまった。
「エルウィン様?何故また落ち込まれるのですか?」
「ですが……結局アリアドネは誰にも知られず城を出たわけですよね?やはり俺から逃げ出したかった為では無いですか?」
エデルガルトの問いかけにエルウィンはため息をつくのだった――。
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