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17-3 エルウィンの依頼
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その時――。
「エルウィン様ー!」
「お帰りなさい!」
ミカエルとウリエルが謁見の間に飛び込んできた。そしてその後を追ってきた騎士の姿もある。
「ミカエル!ウリエル!元気だったか?」
両手を広げるエルウィンに2人は飛び込んでいくと交互に話をする。
「はい!僕もウリエルも立派な騎士になれるように毎日剣術を頑張っていました!」
「僕はね、勉強も沢山頑張ったよ」
「そうか。それは偉かったな。2人には王都の土産を買ってきたから後で部屋に届けさせよう」
エルウィンは2人の頭を撫でながら話をしている。
その様子を見ながら、再びシュミットとスティーブは話をしていた。
「う~ん……こうしてみていると、いつもと変わらないエルウィン様に見える……」
「ああそうだな。俺もお前と同じ意見だ。確かに普段通りに見えるが…‥絶対に旅先で何かあったに違いない。そうだ、後でマティアスに話を聞いてみよう」
「そうだな。彼はこの旅に同行していたし、騎士団のリーダーだったから何かしらの事情を知っているに違いない」
その時、ミカエル達との話を終えたエルウィンがシュミットを呼んだ。
「シュミット、急ぎの案件がある。すぐに執務室へ来い」
「え?はい。かしこまりした」
シュミットが返事をすると、エルウィンはさっさと謁見の間を出て行ってしまった。
「それでは行ってくる」
するとスティーブが小声でシュミットに囁いた。
「おい、エルウィン様の急ぎの案件とやらは何だったのかちゃんと幼馴染のよしみとして後でちゃんと教えろよ?」
「全く野次馬根性だな」
シュミットは苦笑すると、急いで執務室へ向かった――。
****
「エルウィン様、急ぎの案件とは一体どのようなことでしょうか?」
執務室に到着すると、すぐにシュミットは尋ねた。
(重要書類は全て目を通してサインをしてあるし……一体どのようなことだろう?)
「勿論アリアドネのことについてだ」
「え?アリアドネ様のことですか……?あ!もしや結婚式についての話ですか?」
すると途端にエルウィンの頬が赤く染まった。
(嘘だろう?!またしてもエルウィン様が赤くなられたぞ!)
思わず見間違いでは無いだろうかと、目をこするシュミットにエルウィンは怒鳴りつけて来た。
「ば、ば、馬鹿野郎!そんなはずあるか!だ、第一結婚の話すらしたことは無いのに?!」
(そうか……お2人はまだ結婚の話が出ていないのか……)
そのことに安堵しながら、改めてシュミットは尋ねた。
「ではアリアドネ様のどのようなことについてのお話ですか?」
「シュミット、お前は知っていたか?アリアドネは今までずっと無給で働いていたんだぞ?」
「えっ?!そ、そうだったのですかっ?!」
そしてシュミットは思い出した。アリアドネはこの城から出れば行き場を無くしてしまうので、働く代わりに置いて貰いたいと訴えてきたことを。
それでそのままアリアドネは無給のまま働くことになってしまったのだった。
「申し訳ございません……完全に私の落ち度でした」
シュミットは額を押さえた。
「ああ。全くだ。そこで、アリアドネには今までの給金分と褒美も兼ねて
300万レニーを支払ってやれ。やはりこの世で必要なのは金だからな」
「はい、エルウィン様」
しかし、2人はまだ知らない。このお金をアリアドネに渡すことにより、何が起こるかを――。
「エルウィン様ー!」
「お帰りなさい!」
ミカエルとウリエルが謁見の間に飛び込んできた。そしてその後を追ってきた騎士の姿もある。
「ミカエル!ウリエル!元気だったか?」
両手を広げるエルウィンに2人は飛び込んでいくと交互に話をする。
「はい!僕もウリエルも立派な騎士になれるように毎日剣術を頑張っていました!」
「僕はね、勉強も沢山頑張ったよ」
「そうか。それは偉かったな。2人には王都の土産を買ってきたから後で部屋に届けさせよう」
エルウィンは2人の頭を撫でながら話をしている。
その様子を見ながら、再びシュミットとスティーブは話をしていた。
「う~ん……こうしてみていると、いつもと変わらないエルウィン様に見える……」
「ああそうだな。俺もお前と同じ意見だ。確かに普段通りに見えるが…‥絶対に旅先で何かあったに違いない。そうだ、後でマティアスに話を聞いてみよう」
「そうだな。彼はこの旅に同行していたし、騎士団のリーダーだったから何かしらの事情を知っているに違いない」
その時、ミカエル達との話を終えたエルウィンがシュミットを呼んだ。
「シュミット、急ぎの案件がある。すぐに執務室へ来い」
「え?はい。かしこまりした」
シュミットが返事をすると、エルウィンはさっさと謁見の間を出て行ってしまった。
「それでは行ってくる」
するとスティーブが小声でシュミットに囁いた。
「おい、エルウィン様の急ぎの案件とやらは何だったのかちゃんと幼馴染のよしみとして後でちゃんと教えろよ?」
「全く野次馬根性だな」
シュミットは苦笑すると、急いで執務室へ向かった――。
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「エルウィン様、急ぎの案件とは一体どのようなことでしょうか?」
執務室に到着すると、すぐにシュミットは尋ねた。
(重要書類は全て目を通してサインをしてあるし……一体どのようなことだろう?)
「勿論アリアドネのことについてだ」
「え?アリアドネ様のことですか……?あ!もしや結婚式についての話ですか?」
すると途端にエルウィンの頬が赤く染まった。
(嘘だろう?!またしてもエルウィン様が赤くなられたぞ!)
思わず見間違いでは無いだろうかと、目をこするシュミットにエルウィンは怒鳴りつけて来た。
「ば、ば、馬鹿野郎!そんなはずあるか!だ、第一結婚の話すらしたことは無いのに?!」
(そうか……お2人はまだ結婚の話が出ていないのか……)
そのことに安堵しながら、改めてシュミットは尋ねた。
「ではアリアドネ様のどのようなことについてのお話ですか?」
「シュミット、お前は知っていたか?アリアドネは今までずっと無給で働いていたんだぞ?」
「えっ?!そ、そうだったのですかっ?!」
そしてシュミットは思い出した。アリアドネはこの城から出れば行き場を無くしてしまうので、働く代わりに置いて貰いたいと訴えてきたことを。
それでそのままアリアドネは無給のまま働くことになってしまったのだった。
「申し訳ございません……完全に私の落ち度でした」
シュミットは額を押さえた。
「ああ。全くだ。そこで、アリアドネには今までの給金分と褒美も兼ねて
300万レニーを支払ってやれ。やはりこの世で必要なのは金だからな」
「はい、エルウィン様」
しかし、2人はまだ知らない。このお金をアリアドネに渡すことにより、何が起こるかを――。
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