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13−9 気後れするアリアドネ

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 空がオレンジ色に染まる頃……。

エルウィンにプレゼントする為に編んでいるマフラーは半分程出来ていた。

「ふぅ…流石に少し疲れたわ。馬に乗っている騎士の方たちには悪いけれど……少し寝かせて貰いましょう」

実はアリアドネは前日、初めて国王陛下に謁見する旅に出ることに緊張して殆ど眠ることが出来ずにいたのだ。

編みかけのマフラーをバスケットにしまうと窓枠に寄りかかり、アリアドネは目を閉じた――。



**

「よし、皆。宿場村に到着したぞ。早速宿屋の馬小屋を借りてこい。」

愛馬から降りたエルウィンは指示すると、アリアドネが乗っている馬車に向かった。


「どうした?カイン」

エルウィンが馬車へ行くと、そこには困り顔のカインの姿があった。

「はい、実は到着したのでアリアドネ様に声を掛けようとしたところ…ぐっすりお休みになっておられたので、どうしようかと思って……」

「何だって?」

エルウィンは迷わず扉を開けると、そこには窓枠に寄りかかったまま眠りにつくアリアドネの姿があった。

「アリアドネ?」

「……」

しかし、エルウィンが声を掛けても全く目を覚ます気配はない」

「先程自分も声を掛けたのですが…やはりこのような状態で…」

「うむ…余程つかれていたのかもしれない。…仕方ない」

エルウィンは馬車の中に乗り込むとアリアドネを軽く揺さぶってみた。

「アリアドネ」

「……」

それでもアリアドネは目を覚まさない。

「仕方ないな……」

エルウィンはアリアドネを抱きかかえると馬車から降りた。

その姿に驚く騎士達。

「お、おい…見たか?」

「ああ、エルウィン様が……」

「お姫様抱っこしてるぞ」

「女性に触れると蕁麻疹を起こすという話はデマだったのか?!」

エルウィンは騎士たちの言葉に苛立ちを感じたが、怒鳴りつけるわけにはいかなかった。何故なら抱きかかえているアリアドネを起こすわけにはいかなかったからだ。

(くっそ~あいつらめ…城に帰ったら1ヶ月山籠りさせてやる……!)

そしてエルウィンはアリアドネを抱きかかえたまま、騎士たちと共に今夜の宿へ向かった――。



****


「う~ん……」

不意にアリアドネは目が覚め…自分がベッドの上で眠っていたことに気がついた。
部屋の中は中央に置かれたアルコールランプの炎がゆらゆらと揺れている。

「え?!」

慌てて起き上がり、外を見ると空には星空が浮かんでいた。

「そ、そんな…眠ってしまっていたなんて…一体今は何時なのかしら?」

キョロキョロと部屋の中を見渡し、壁にかけてある時計に気付いた。

時刻は7時半をさしている。

「7時半…もうそんな時間に…」

(とにかく様子を見る為には部屋を出なくちゃ……)

ベッド下には自分が履いていた靴が揃えてある。
アリアドネは靴を履くと、早速部屋を出た。


 廊下に出ると階下に降りる階段が目に止まった。
そして賑やかな声が聞こえてくる。

(1階は食堂のようね……)

そろそろと降りると、食堂には騎士たちがテーブルを囲んで賑やかに食事をしている姿が目に入った。
そしてその中心にはエルウィンがいる。

(エルウィン様だわ……)

すると1人の騎士がアリアドネの姿に気付き、声を掛けてきた。

「あ!アリアドネ様!目が覚められたのですね!」

するとその声に一斉に全員の目がアリアドネに向けられた。

「あ、あの……」

視線が集まったことが気恥ずかしくて、思わず足を止めるとエルウィンが手招きをしてきた。

「何をしている。早くこっちへ来い」

「は、はい……」

呼ばれたアリアドネは気後れしながらもエルウィンの傍へ行った。

「ほら、ここへ座れ」

エルウィンの隣は空席になっている。

「はい」

アリアドネは早速着席すると、すぐにエルウィンは目の前に並べられた料理を勧めた。

「ちょうど、つい先程食事を始めたばかりなんだ。何でも好きなものを食べるといい」

「はい、ありがとうございます……」

アリアドネは恐縮しながら返事をした――。
 


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