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9-18 アリアドネの頼み
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「必要が無いと言っても…それではアリアドネ様のほうがお困りでしょう?何処へ行くにもロイに頼むことになってしまいますよ?」
「ええ…そうなのです。それで…少々困っておりまして…」
アリアドネはため息を付いた。
(やれやれ…2人の仲が噂になっているのは知っていたが…ここまでロイがアリアドネ様に入れ込んでいたとは思わなかった)
「分かりました。松葉杖の件は私から医務室に頼んでおきます。後は…メイドの件ですよね?」
「はい。そうです…。ですが、ここ南塔にはあまりメイドがおりませんよね?東塔には大勢おりますが…」
アリアドネは困った様子でシュミットを見た。
「ええ…。以前はこちらにも大勢のメイドがおりましたが…エルウィン様が城主になってからは…殆どのメイドを東塔に移してしまったのです。その…過去に色々ありまして…」
その色々…と言うのは言うまでもない。
それはエルウィンに対する誘惑だった。
メイド達の誰もが、エルウィンに憧れ…何とか彼に取り入ろうと必要以上に接近し…時にはゾーイの様に大胆にも誘惑を試みたメイドは数しれない。
女性に奔放な祖父のせいで、極端な程潔癖になってしまったエルウィンに取っては耐え難いことだった。
それ故、殆どのメイドを東塔に追いやり、フットマンを中心に使用人を置くようになってしまったのであった。
「ミカエル様とウリエル様は東塔のメイドは嫌だと仰られています。なので、お2人のお世話をしてくれそうなメイドを手配して頂けないでしょうか?」
アリアドネは頭を下げ、その様子にシュミットは焦った。
「そんな、私などに頭を下げる必要はありません。元々アリアドネ様は…」
そこで慌ててシュミットは口を閉じた。
(そうだ、ここはエルウィン様の執務室だった。いつ戻られるか分からない状況でするような話では無かった)
「シュミット様?」
「い、いえ。何でもありません。ではエルウィン様がお戻りになられたら、すぐに相談してみましょう」
「本当ですか?ありがとうございます」
笑みを浮かべてシュミットにお礼を言うアリアドネ。
その美しい姿に思わずシュミットは見惚れかけ…慌てて軽く咳払いした。
「で、ではアリアドネ様はもうお戻りになって下さい。怪我をされたのですから本日はゆっくりお休み下さい」
「ありがとうございます」
「では、ロイを呼びましょう」
シュミットは席を立つと、扉へ向った。
カチャ…
扉を開けると、そこにはロイが姿勢を崩さずに立っていた。
「話は終わりました。リアを連れて行ってあげて下さい」
「…分かりました」
相変わらず美しい人形のように無表情のロイ。
そのまま無言で部屋に入ってくると、アリアドネの前で足を止めた。
「リア。部屋に戻ろう」
「ええ。分かったわ」
アリアドネが返事をするや否や、ロイは軽々とアリアドネを抱え上げた。
「キャッ」
思わず小さく悲鳴を上げるアリアドネ。
「…どうした?」
「抱き上げて運んでくれるのは助かるけど…もう少し静かに抱き上げてもらえないかしら…?何だか落ちそうで…」
「…そうか。分かった。気をつけよう」
そしてロイは少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「!」
その様子を見て驚いたのはシュミットであった。
ロイがここへ来て5年になるが、誰もが彼の笑った顔を見たことが無い。
それにも関わらず、アリアドネには警戒心を抱くことなく笑みまで浮かべたのだ。
「それでは失礼致します、シュミット様」
ロイに抱え上げられたアリアドネが声を掛けてきた。
「あ…はい。ではエルウィン様に伝えておきますね」
「失礼します」
ロイも頭を下げると、部屋を出て行った。
「…」
2人が部屋を出ていき、執務室に1人になったシュミットはロイについて考えていた。
(何故、ロイはアリアドネ様にだけ警戒心を解くのだろう…?少し、彼のことを調べてみようか…?)
シュミットは密かに考えた―。
「ええ…そうなのです。それで…少々困っておりまして…」
アリアドネはため息を付いた。
(やれやれ…2人の仲が噂になっているのは知っていたが…ここまでロイがアリアドネ様に入れ込んでいたとは思わなかった)
「分かりました。松葉杖の件は私から医務室に頼んでおきます。後は…メイドの件ですよね?」
「はい。そうです…。ですが、ここ南塔にはあまりメイドがおりませんよね?東塔には大勢おりますが…」
アリアドネは困った様子でシュミットを見た。
「ええ…。以前はこちらにも大勢のメイドがおりましたが…エルウィン様が城主になってからは…殆どのメイドを東塔に移してしまったのです。その…過去に色々ありまして…」
その色々…と言うのは言うまでもない。
それはエルウィンに対する誘惑だった。
メイド達の誰もが、エルウィンに憧れ…何とか彼に取り入ろうと必要以上に接近し…時にはゾーイの様に大胆にも誘惑を試みたメイドは数しれない。
女性に奔放な祖父のせいで、極端な程潔癖になってしまったエルウィンに取っては耐え難いことだった。
それ故、殆どのメイドを東塔に追いやり、フットマンを中心に使用人を置くようになってしまったのであった。
「ミカエル様とウリエル様は東塔のメイドは嫌だと仰られています。なので、お2人のお世話をしてくれそうなメイドを手配して頂けないでしょうか?」
アリアドネは頭を下げ、その様子にシュミットは焦った。
「そんな、私などに頭を下げる必要はありません。元々アリアドネ様は…」
そこで慌ててシュミットは口を閉じた。
(そうだ、ここはエルウィン様の執務室だった。いつ戻られるか分からない状況でするような話では無かった)
「シュミット様?」
「い、いえ。何でもありません。ではエルウィン様がお戻りになられたら、すぐに相談してみましょう」
「本当ですか?ありがとうございます」
笑みを浮かべてシュミットにお礼を言うアリアドネ。
その美しい姿に思わずシュミットは見惚れかけ…慌てて軽く咳払いした。
「で、ではアリアドネ様はもうお戻りになって下さい。怪我をされたのですから本日はゆっくりお休み下さい」
「ありがとうございます」
「では、ロイを呼びましょう」
シュミットは席を立つと、扉へ向った。
カチャ…
扉を開けると、そこにはロイが姿勢を崩さずに立っていた。
「話は終わりました。リアを連れて行ってあげて下さい」
「…分かりました」
相変わらず美しい人形のように無表情のロイ。
そのまま無言で部屋に入ってくると、アリアドネの前で足を止めた。
「リア。部屋に戻ろう」
「ええ。分かったわ」
アリアドネが返事をするや否や、ロイは軽々とアリアドネを抱え上げた。
「キャッ」
思わず小さく悲鳴を上げるアリアドネ。
「…どうした?」
「抱き上げて運んでくれるのは助かるけど…もう少し静かに抱き上げてもらえないかしら…?何だか落ちそうで…」
「…そうか。分かった。気をつけよう」
そしてロイは少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「!」
その様子を見て驚いたのはシュミットであった。
ロイがここへ来て5年になるが、誰もが彼の笑った顔を見たことが無い。
それにも関わらず、アリアドネには警戒心を抱くことなく笑みまで浮かべたのだ。
「それでは失礼致します、シュミット様」
ロイに抱え上げられたアリアドネが声を掛けてきた。
「あ…はい。ではエルウィン様に伝えておきますね」
「失礼します」
ロイも頭を下げると、部屋を出て行った。
「…」
2人が部屋を出ていき、執務室に1人になったシュミットはロイについて考えていた。
(何故、ロイはアリアドネ様にだけ警戒心を解くのだろう…?少し、彼のことを調べてみようか…?)
シュミットは密かに考えた―。
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