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第15話 悪役令嬢、喧嘩をふっかける
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私がテーブルに近付いていくのを逸早く見つけたのはアルフォンソ王子だった。
王子は時折手でアクビをごまかしながら、つまらなさそうな様子でコーヒーを飲んでいた。けれども私と目があった瞬間、驚いた様子で目を見開いたのだ。
そしてすぐに視線をそらせると、一緒にいる令嬢達に笑みを浮かべて今度は話しかけて初めた。
フフフ…そうよ、そうでなくちゃ。
私を明らかに無視しようとするその態度…。それならこちらも遠慮なく喧嘩をふっかけることが出来るわ。
どうせ私は友達が1人もいない、ボッチ人間。
失って困る人間関係など無いのだから、何も恐れることはない。
そこで私はアルフォンソ王子と、4人の女性が集まるテーブルの前に立ちはだかった。
「あら?貴女…あまり見慣れない顔だけど、私達に一体何の用かしら?」
金髪ロン毛美女が真っ先に私に声を掛けてきた。
残りの3名の女子学生たちも怪訝そうな目を私に向けてくる。
なるほど…彼女がここのリーダーなのかもしれない。
けれど、普通こういう場合は男性であるアルフォンソ王子が私に声を掛けるべきではないだろうか?
きっと、王子はとことん私の存在を無視したいのだろう。
そっちがその気なら…私も徹底的にやらせてもらおう。
「ええ、今日は皆さんに大切な話があってここへ伺いましたの」
私はチラリとアルフォンソ王子を見た。
しかし、王子は私と視線を合わせるどころかこちらを見ようともしない。
「話って一体何かしら?」
黒髪美女学生が尋ねてきた。
「ええ、他でもありません。そこにいるアルフォンソ王子に馴れ馴れしく近づかないで下さる?王子が迷惑しているのが分からないのですか?先程、王子はアクビをしていましたよ?どうせ下らないお互いの自慢話をしていただけでしょう?!」
すると4人の令嬢達は口々に文句を言い始めた。
「な、何が迷惑よ!このイモ女っ!」
「下らないって…失礼ねっ!メガネザルッ」
「なによ、三編みなんて…一体どこの田舎者かしら?」
「ダサい女はさっさと私達の前から消えなさいよっ!」
おおっ!この令嬢達…こんなに口が悪かったとは!
「え?」
アルフォンソ王子がギョッとした顔で令嬢たちを見る。
うん、きっと彼女たちは王子の前では猫をかぶっていただけだろう。
けれどこの世界の貴族令嬢なんて、みんなこんなもの。裏表が激しいのだ。
「ほら!あんたのような見苦しい女はさっさと消えなさいよ!」
シッシッと手で私を追い払う金髪ロン毛美女に私は言った。
「あなた達のほうが余程見苦しいわよ?私は見てたんだから。アルフォンソ王子は少なくとも3回はアクビをしてごまかしていたわよ!」
私はアルフォンソ王子を一切見ることもなく、令嬢達に止めを刺した。
「えっ?!」
アルフォンソ王子の狼狽した声が聞こえたが、そこは無視だ。
何しろ、王子との約束で学園に通っている間は絶対に話しかけないと誓ったから、顔を見るわけにはいかない。
「な、何ですってっ?!」
「本当ですの?アルフォンソ様!」
「嘘ですよね?」
「アルフォンソ様、答えて下さい!」
すると…。
「ほ、本当ですっ!わ、私見ましたからっ!アルフォンソ様は確かにアクビを3回、目を2回こすっていました!」
背後からノエルが加勢?してきた。
「な、なんですって…?!王子っ!」
黒髪美女がアルフォンソ王子を振り返る。
すると…。
「ごめん…君たち。僕はこの2人と話をつけるから…悪いけど席を外してくれるかな?」
アルフォンソ王子がついに口を開いた!
「わ、分かりましたわ…皆様、参りましょう?」
金髪美女が3人の女子学生たちに声をかける。
「ええ、分かりました」
「では失礼致します」
「ごきげんよう」
3人の女子学生達は次々と王子に声を掛けて去っていく。
しかし…今更上品ぶって取り繕っても、もう遅いのに。
やがて…4人の女子学生たちは去り、アルフォンソ王子の前に立つのは私とノエルの2人だけになった。
「さて…」
アルフォンソ王子は初めて視線をこちらに向けた―。
王子は時折手でアクビをごまかしながら、つまらなさそうな様子でコーヒーを飲んでいた。けれども私と目があった瞬間、驚いた様子で目を見開いたのだ。
そしてすぐに視線をそらせると、一緒にいる令嬢達に笑みを浮かべて今度は話しかけて初めた。
フフフ…そうよ、そうでなくちゃ。
私を明らかに無視しようとするその態度…。それならこちらも遠慮なく喧嘩をふっかけることが出来るわ。
どうせ私は友達が1人もいない、ボッチ人間。
失って困る人間関係など無いのだから、何も恐れることはない。
そこで私はアルフォンソ王子と、4人の女性が集まるテーブルの前に立ちはだかった。
「あら?貴女…あまり見慣れない顔だけど、私達に一体何の用かしら?」
金髪ロン毛美女が真っ先に私に声を掛けてきた。
残りの3名の女子学生たちも怪訝そうな目を私に向けてくる。
なるほど…彼女がここのリーダーなのかもしれない。
けれど、普通こういう場合は男性であるアルフォンソ王子が私に声を掛けるべきではないだろうか?
きっと、王子はとことん私の存在を無視したいのだろう。
そっちがその気なら…私も徹底的にやらせてもらおう。
「ええ、今日は皆さんに大切な話があってここへ伺いましたの」
私はチラリとアルフォンソ王子を見た。
しかし、王子は私と視線を合わせるどころかこちらを見ようともしない。
「話って一体何かしら?」
黒髪美女学生が尋ねてきた。
「ええ、他でもありません。そこにいるアルフォンソ王子に馴れ馴れしく近づかないで下さる?王子が迷惑しているのが分からないのですか?先程、王子はアクビをしていましたよ?どうせ下らないお互いの自慢話をしていただけでしょう?!」
すると4人の令嬢達は口々に文句を言い始めた。
「な、何が迷惑よ!このイモ女っ!」
「下らないって…失礼ねっ!メガネザルッ」
「なによ、三編みなんて…一体どこの田舎者かしら?」
「ダサい女はさっさと私達の前から消えなさいよっ!」
おおっ!この令嬢達…こんなに口が悪かったとは!
「え?」
アルフォンソ王子がギョッとした顔で令嬢たちを見る。
うん、きっと彼女たちは王子の前では猫をかぶっていただけだろう。
けれどこの世界の貴族令嬢なんて、みんなこんなもの。裏表が激しいのだ。
「ほら!あんたのような見苦しい女はさっさと消えなさいよ!」
シッシッと手で私を追い払う金髪ロン毛美女に私は言った。
「あなた達のほうが余程見苦しいわよ?私は見てたんだから。アルフォンソ王子は少なくとも3回はアクビをしてごまかしていたわよ!」
私はアルフォンソ王子を一切見ることもなく、令嬢達に止めを刺した。
「えっ?!」
アルフォンソ王子の狼狽した声が聞こえたが、そこは無視だ。
何しろ、王子との約束で学園に通っている間は絶対に話しかけないと誓ったから、顔を見るわけにはいかない。
「な、何ですってっ?!」
「本当ですの?アルフォンソ様!」
「嘘ですよね?」
「アルフォンソ様、答えて下さい!」
すると…。
「ほ、本当ですっ!わ、私見ましたからっ!アルフォンソ様は確かにアクビを3回、目を2回こすっていました!」
背後からノエルが加勢?してきた。
「な、なんですって…?!王子っ!」
黒髪美女がアルフォンソ王子を振り返る。
すると…。
「ごめん…君たち。僕はこの2人と話をつけるから…悪いけど席を外してくれるかな?」
アルフォンソ王子がついに口を開いた!
「わ、分かりましたわ…皆様、参りましょう?」
金髪美女が3人の女子学生たちに声をかける。
「ええ、分かりました」
「では失礼致します」
「ごきげんよう」
3人の女子学生達は次々と王子に声を掛けて去っていく。
しかし…今更上品ぶって取り繕っても、もう遅いのに。
やがて…4人の女子学生たちは去り、アルフォンソ王子の前に立つのは私とノエルの2人だけになった。
「さて…」
アルフォンソ王子は初めて視線をこちらに向けた―。
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