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第5話 仮婚約決定
しおりを挟む「どうしていやなんだよっ!」
すると今迄黙って座っていた王太子が突然顔を真っ赤にして立ち上がった。
「え?」
てっきり国王が理由を尋ねてくると思ったのに、まさか王太子本人が聞いてくるなんて…。
驚いて呆気にとられていると、それまでおとなしかった態度とは打って変わって私に文句を言い始めた。
「いいか?僕は将来この国の王様になるんだぞ?一番偉くなるんだからな?それなのに、僕がいやなんて変だ!何だよっ!ちょっと頭がいいから何だって言うんだよ!今迄会った女の子達はみんな僕と婚約したいって言ってきたぞ!」
彼は自分が拒絶されたこと等、今まで一度も無かったのだろう。それでプライドを傷つけられたと思って私に文句を言ってるのかもしれない。
よし、それなら私と婚約なんかする気が起きないようにこの際もっと王太子に嫌われる事を言ってしまおう。
大丈夫、私はまだ5歳の子供。失礼な事を言っても不敬罪に問われて罰せられることは無い…はずだ。
「はい。仰る通り私は頭が良いです、天才です。私は自分よりも賢い人でなければ婚約したくありません」
「「「「えっ?!」」」」
私以外の全員がまるで申し合わせたかのように一斉にこちらを見た。
「ア、アリーナッ!何て事を言うのっ?!」
「今ならまだ間に合う。王太子様に謝りなさい」
母と父はオロオロしている。
「な、何だって!僕を馬鹿にしてるのかっ?!僕だって…賢いんだからなっ!本当に気に食わない奴だなっ!」
アルフォンソ王子は怒りの為か、益々顔を真っ赤にさせて震えている。
そして一方国王は…。
「アッハッハッ!こいつはいい、傑作だ!よし、良いだろう。とりあえずこの婚約は仮婚約と言う形にさせてもらう。この先2人は22歳の学生生活を終えるまでの間、成績を競い合うのだ。アルフォンソがアリーナの成績を一度でも上回れば正式に婚約させてもらう。しかし、卒業迄にアリーナの成績を超えられなければこの婚約は無かったことにしよう!これから16年かけて、どちらが頭が良いか勝負するのだ!」
え?何それ?
大体私は初めから婚約したくないと言っているのに、何故そのような話になってしまったのだろう?
こんなの…はっきり言って私には何のメリットも無いのに!
それに王太子の方だって、こんな生意気な少女を将来の伴侶にしたいはずは無いだろう。
そうだ、きっとさっきみたいにいやだと言って反対してくるに決まっている。
誰も気に食わない相手と婚約なんてしたい物好きなど、どこにもいない。
しかし…やはり王太子は愚かだった。
「分かった!僕と勝負だっ!いいか?お前より頭が良くなればいいんだなっ?!みてろよっ!僕の方が絶対頭がいいんだからなっ!お前みたいな生意気な女勉強で負けるもんかっ!」
あろうことか国王の口車に乗せられて、王太子は私に宣戦布告?してしまったのだ!
「よし、これで話は決まったな?それではアリーナよ。これから我が息子の王妃候補として、よろしく頼むよ」
国王は御満悦な笑みを浮かべた。
「そ、そんなっ!!」
酷いっ!はめられたっ!
こうして、私はたった5歳で王太子と無理やり仮婚約を結ばされてしまった。
…勿論、両親が一言も口を挟めなかったのは、言うまでも無い―。
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