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第2章 110 嘘が功を成す
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「すみません…タクシー代まで出して頂いて…」
彩花は俺がタクシー代を支払ったことに罪悪感を抱いているのだろうか?
「いいんだって。この間、メディカルセンターへ行くのに往復のタクシー代どころか、治療費だって支払っているだろう?かなり出費しているじゃないか」
「えっ?!何故その事を知ってるんですか?!」
「あ…それは…」
しまった…!これじゃ俺が監視していたことがバレてしまう。
一瞬ヒヤリとしたが、先程の俺の嘘が功を成したようだ。
「そう言えば拓也さんは興信所の人でしたよね?と言う事は…知っていても当然ですよね…?私達…と言うか、たっくんを見守っていたから知っていたんですね?」
「ああ…そうなんだ…。ごめん」
彩花……嘘をついてごめん。
「何を謝るのですか?」
「つまり…その…黙って後をつけるような真似をして…これじゃストーカーと思われても仕方ないか…」
何とかごまかさないと……。
「…仕方ないですよ。お仕事なんですよね?」
「仕事…そう、仕事なんだよ」
そうだ、どうか信じてくれ。
「さて、話はこれ位にして…そろそろたっくんの元へ行かないと。きっと寂しがっているだろうから」
彩花が話題を変えてくれた。信じてくれたってことだよな?
「それだけじゃない。腹だって相当空いているさ」
子供の頃の俺は…いつもお腹をすかせて飢えていたからな。
「拓也さん…」
思わずじっと見つめると、彼は笑った。
「いや、これは俺の勘で言ってみただけだから」
「いえ。確かにその通りです。たっくん…絶対お腹を空かしているに決まってます!」
彩花は急ぎ足でアパートへ向かって掛けていく。
そして俺はその後姿を追った――。
****
子供の頃の俺が住んでいたアパートの前に俺と彩花は立っていた。
また、再び…子供の頃の俺と対面するのか……。
ピンポーン
彩花がインターホンを押すと、ややあって扉が開かれた。
「あ…お姉ちゃん?」
そこには子供の頃の俺が現れた。
その姿に衝撃を受けてしまった。
何故ならこの世界の拓也は今まで以上に酷い怪我をしていたからだ。
親父の奴……っ!
再び奴に対して激しい憎しみが込み上げてくる。
そして、気づけば彩花が驚いた顔でこちらを見つめていた。
「あ、あの…拓也さん…」
「お兄ちゃん…誰…?」
2人の視線に我に返った。
「あ、ごめんごめん。俺はね、このお姉さんの友達なんだ。よろしくね。卓也君」
「お姉ちゃんの友達…?ふ~ん。そうなんだ。良かった~」
「ねぇ、たっくん。お姉ちゃんが今夜もご飯作ってあげるからおいで?」
「ごはん…本当にいいの?」
「うん、勿論。それじゃ行こう?」
そして子供の頃の俺は彩花が差し出した手をしっかり握りしめてきた――。
彩花は俺がタクシー代を支払ったことに罪悪感を抱いているのだろうか?
「いいんだって。この間、メディカルセンターへ行くのに往復のタクシー代どころか、治療費だって支払っているだろう?かなり出費しているじゃないか」
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「あ…それは…」
しまった…!これじゃ俺が監視していたことがバレてしまう。
一瞬ヒヤリとしたが、先程の俺の嘘が功を成したようだ。
「そう言えば拓也さんは興信所の人でしたよね?と言う事は…知っていても当然ですよね…?私達…と言うか、たっくんを見守っていたから知っていたんですね?」
「ああ…そうなんだ…。ごめん」
彩花……嘘をついてごめん。
「何を謝るのですか?」
「つまり…その…黙って後をつけるような真似をして…これじゃストーカーと思われても仕方ないか…」
何とかごまかさないと……。
「…仕方ないですよ。お仕事なんですよね?」
「仕事…そう、仕事なんだよ」
そうだ、どうか信じてくれ。
「さて、話はこれ位にして…そろそろたっくんの元へ行かないと。きっと寂しがっているだろうから」
彩花が話題を変えてくれた。信じてくれたってことだよな?
「それだけじゃない。腹だって相当空いているさ」
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「拓也さん…」
思わずじっと見つめると、彼は笑った。
「いや、これは俺の勘で言ってみただけだから」
「いえ。確かにその通りです。たっくん…絶対お腹を空かしているに決まってます!」
彩花は急ぎ足でアパートへ向かって掛けていく。
そして俺はその後姿を追った――。
****
子供の頃の俺が住んでいたアパートの前に俺と彩花は立っていた。
また、再び…子供の頃の俺と対面するのか……。
ピンポーン
彩花がインターホンを押すと、ややあって扉が開かれた。
「あ…お姉ちゃん?」
そこには子供の頃の俺が現れた。
その姿に衝撃を受けてしまった。
何故ならこの世界の拓也は今まで以上に酷い怪我をしていたからだ。
親父の奴……っ!
再び奴に対して激しい憎しみが込み上げてくる。
そして、気づけば彩花が驚いた顔でこちらを見つめていた。
「あ、あの…拓也さん…」
「お兄ちゃん…誰…?」
2人の視線に我に返った。
「あ、ごめんごめん。俺はね、このお姉さんの友達なんだ。よろしくね。卓也君」
「お姉ちゃんの友達…?ふ~ん。そうなんだ。良かった~」
「ねぇ、たっくん。お姉ちゃんが今夜もご飯作ってあげるからおいで?」
「ごはん…本当にいいの?」
「うん、勿論。それじゃ行こう?」
そして子供の頃の俺は彩花が差し出した手をしっかり握りしめてきた――。
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