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第1章 56 恋人宣言
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6月1日金曜日―
「あと8日でたっくんの誕生日か…」
仕事から帰り、夜ご飯の準備をしながら何気なく壁に掛けてあるカレンダーを見た。
拓也さんとの連絡は相変わらず途絶えたまま。今では自分から彼のスマホに連絡をいれるのはやめてしまった。
何故なら…連絡が取れないという、辛い現実から目をそむけたかったから…。
「よし、完成」
フライパンの火を止めると、皿に出来上がった料理を盛り付けた。
今夜のメニューはガパオライス。
この料理はお財布が厳しい時や時間が無い時にはうってつけの料理だった。
みじん切りにした玉ねぎやピーマン、人参…といった余った野菜をブレンダーでみじん切りにして、鶏挽肉と一緒にフライパンで炒めて、市販のルウを投入してさらに炒めて完成。
「う~ん…ちょっと作りすぎちゃったかな…?」
フライパンにこんもりと出来上がったガパオを見てため息が出てしまった。
たっくんや拓也さんがいれば…これくらいの量、なんてことは無いのに…。
「いいや、残りは冷凍にしてしまおう」
そこで台所に置いた小さな食器棚からコンテナボックスを取り出した時…。
ピンポーン
突然、アパートにインターホンが鳴り響いた。
「ま、まさか…た、拓也さん…?」
誰かも確認せずに私は急いで扉を開けた。
ガチャッ!
「あ…」
「こんばんは。彩花。…ごめん、待っただろう?」
Tシャツにジーンズ姿の背の高い拓也さんが申し訳無さげに立っていた。
「も、勿論…待っていたに決まってる…!」
最後まで話す事は出来なかった。何故なら拓也さんが私を抱きしめ、キスをしてきたからだ。
私達は暫くの間…玄関先で無言のままキスを交わし続けた―。
****
「美味そうな匂いだな~…今夜の料理は何だい?」
私の向かい側に座った拓也さんがテーブルの上に置かれた料理を見て尋ねてきた。
「これはね、ガパオライスって言うんだよ?タイ料理でね…最近はまってるんだ~」
グラスに注いだ麦茶を置きながら拓也さんに説明した。
「そうなのか?何だか食欲をそそられる匂いだ…」
「うん、すごく美味しいんだよ?それじゃ食べようか?」
「そうだな」
「「頂きます」」
私達は声を揃えて、食事を開始した。
「うん!旨い!最高だ」
拓也さんは余程お腹が空いていたのか、物凄い速さで食べている。
「まだまだご飯もガパオも沢山残っているからいっぱい食べて?」
「本当か?ありがとう!それじゃ…お代わり!」
拓也さんは子供のような無邪気な笑みを浮かべて、お皿を差し出してきた―。
****
食事が終わった後、私達は拓也さんが買ってきてくれたビールを一緒に飲みながら話をしていた。
「彩花、明日一緒に卓也の誕生プレゼントを買いに行かないか?」
「うん。でもそれって…今夜は一緒にいられるって…こと…?」
上目遣いに拓也さんを見る。
「ああ、勿論さ」
拓也さんは私の肩を抱き寄せ、額にキスしてきた。
今の私は…とても幸せだ…。
「お金なら俺が払うから、そこの所は気にするなよ?」
私の肩を抱き寄せたまま拓也さんが言葉を続ける。
「え…?でも私も払うよ」
「いいって、しょっちゅう彩花には料理をご馳走になっているんだし…そこは気にするなよ」
「う、うん…でも…」
すると拓也さんが私の頭を撫でながら言った。
「…だったら、来年は彩花が卓也に誕生プレゼントを買ってあげてくれよ。俺の分までさ」
その言葉は…何処か意味深で、寂しげに聞こえるのは、きっと…私の気の所為だよね…?
「うん…分かったよ…。それで?たっくんにはどんなプレゼントを買うつもりなの?」
「…本当はゲーム機を買ってやりたいけど…他の子供達に取られて遊べなくなる可能性もあるからな…だから卓也の好きな昆虫図鑑を買ってやろうかと思ってる」
「あ、それはいいかもしれない。それじゃ明日は本屋さんに行くんだね?」
「ああ、そうさ。映画を観た帰りにな?」
「え…?映画…?ま、まさか…ホラーじゃないよね…?」
「まさか!今話題の恋愛映画だよ。…一応デートのつもりなんだけどな」
「デート…?え…ええっ?!デ、デート?!」
その言葉に顔が真っ赤になる。
「何だよ?違うのか?俺達恋人同士だろう?」
「へ?こ、こ、恋人…?」
ますます顔が赤くなる。
「え…?ひょっとして…そう思っていたのは俺だけか…?」
拓也さんの顔に戸惑いの表情が浮かぶ。
「う、ううんっ!そ、そんな事無い!わ、私達は…恋人同士…だよ?」
すると拓也さんはフッと笑った。
「良かった…俺だけがそう思っていなくて…」
そして私を抱きしめると耳元で囁く。
「好きだ…彩花…」
「私も…拓也さんが好き…」
そして、どちらからともなくキスを交わし…今夜も2人で甘い夜を過ごした―。
「あと8日でたっくんの誕生日か…」
仕事から帰り、夜ご飯の準備をしながら何気なく壁に掛けてあるカレンダーを見た。
拓也さんとの連絡は相変わらず途絶えたまま。今では自分から彼のスマホに連絡をいれるのはやめてしまった。
何故なら…連絡が取れないという、辛い現実から目をそむけたかったから…。
「よし、完成」
フライパンの火を止めると、皿に出来上がった料理を盛り付けた。
今夜のメニューはガパオライス。
この料理はお財布が厳しい時や時間が無い時にはうってつけの料理だった。
みじん切りにした玉ねぎやピーマン、人参…といった余った野菜をブレンダーでみじん切りにして、鶏挽肉と一緒にフライパンで炒めて、市販のルウを投入してさらに炒めて完成。
「う~ん…ちょっと作りすぎちゃったかな…?」
フライパンにこんもりと出来上がったガパオを見てため息が出てしまった。
たっくんや拓也さんがいれば…これくらいの量、なんてことは無いのに…。
「いいや、残りは冷凍にしてしまおう」
そこで台所に置いた小さな食器棚からコンテナボックスを取り出した時…。
ピンポーン
突然、アパートにインターホンが鳴り響いた。
「ま、まさか…た、拓也さん…?」
誰かも確認せずに私は急いで扉を開けた。
ガチャッ!
「あ…」
「こんばんは。彩花。…ごめん、待っただろう?」
Tシャツにジーンズ姿の背の高い拓也さんが申し訳無さげに立っていた。
「も、勿論…待っていたに決まってる…!」
最後まで話す事は出来なかった。何故なら拓也さんが私を抱きしめ、キスをしてきたからだ。
私達は暫くの間…玄関先で無言のままキスを交わし続けた―。
****
「美味そうな匂いだな~…今夜の料理は何だい?」
私の向かい側に座った拓也さんがテーブルの上に置かれた料理を見て尋ねてきた。
「これはね、ガパオライスって言うんだよ?タイ料理でね…最近はまってるんだ~」
グラスに注いだ麦茶を置きながら拓也さんに説明した。
「そうなのか?何だか食欲をそそられる匂いだ…」
「うん、すごく美味しいんだよ?それじゃ食べようか?」
「そうだな」
「「頂きます」」
私達は声を揃えて、食事を開始した。
「うん!旨い!最高だ」
拓也さんは余程お腹が空いていたのか、物凄い速さで食べている。
「まだまだご飯もガパオも沢山残っているからいっぱい食べて?」
「本当か?ありがとう!それじゃ…お代わり!」
拓也さんは子供のような無邪気な笑みを浮かべて、お皿を差し出してきた―。
****
食事が終わった後、私達は拓也さんが買ってきてくれたビールを一緒に飲みながら話をしていた。
「彩花、明日一緒に卓也の誕生プレゼントを買いに行かないか?」
「うん。でもそれって…今夜は一緒にいられるって…こと…?」
上目遣いに拓也さんを見る。
「ああ、勿論さ」
拓也さんは私の肩を抱き寄せ、額にキスしてきた。
今の私は…とても幸せだ…。
「お金なら俺が払うから、そこの所は気にするなよ?」
私の肩を抱き寄せたまま拓也さんが言葉を続ける。
「え…?でも私も払うよ」
「いいって、しょっちゅう彩花には料理をご馳走になっているんだし…そこは気にするなよ」
「う、うん…でも…」
すると拓也さんが私の頭を撫でながら言った。
「…だったら、来年は彩花が卓也に誕生プレゼントを買ってあげてくれよ。俺の分までさ」
その言葉は…何処か意味深で、寂しげに聞こえるのは、きっと…私の気の所為だよね…?
「うん…分かったよ…。それで?たっくんにはどんなプレゼントを買うつもりなの?」
「…本当はゲーム機を買ってやりたいけど…他の子供達に取られて遊べなくなる可能性もあるからな…だから卓也の好きな昆虫図鑑を買ってやろうかと思ってる」
「あ、それはいいかもしれない。それじゃ明日は本屋さんに行くんだね?」
「ああ、そうさ。映画を観た帰りにな?」
「え…?映画…?ま、まさか…ホラーじゃないよね…?」
「まさか!今話題の恋愛映画だよ。…一応デートのつもりなんだけどな」
「デート…?え…ええっ?!デ、デート?!」
その言葉に顔が真っ赤になる。
「何だよ?違うのか?俺達恋人同士だろう?」
「へ?こ、こ、恋人…?」
ますます顔が赤くなる。
「え…?ひょっとして…そう思っていたのは俺だけか…?」
拓也さんの顔に戸惑いの表情が浮かぶ。
「う、ううんっ!そ、そんな事無い!わ、私達は…恋人同士…だよ?」
すると拓也さんはフッと笑った。
「良かった…俺だけがそう思っていなくて…」
そして私を抱きしめると耳元で囁く。
「好きだ…彩花…」
「私も…拓也さんが好き…」
そして、どちらからともなくキスを交わし…今夜も2人で甘い夜を過ごした―。
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