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第1章 22 何故知ってるの?

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 午前9時半―

「お待たせ」

ベランダで洗濯物を干し終えた私は部屋に入るとネットで調べ物をしていた拓也さんに声を掛けた。

「あ、洗濯干し終わったんだ」

「うん。だから今から出掛けようか?」

「そうだな。それじゃ買い物が終ったら俺はそのまま帰ることにするよ」

拓也さんは床に置いておいたジャケットを羽織ると立ち上がった。

「…うん、それでいいよ」

何だ…。たっくんの事で相談したい事があるから一緒にその後カフェにでも行こうかと思っていたのに。

「どうしたんだ?彩花」

上着を羽織った拓也さんが私を見た。

「何が?」

「いや…今返事する時、何だか間が空いていたような気がするから」

「そう?気のせいじゃない?それじゃ行こうか?」

私もフックに掛けておいた春物のコートを羽織った。

「よし、行くか」

そして2人で玄関を出ると、鍵を掛けながら隣の部屋の様子をそっと伺ってみた。

「たっくんの家…静かだね?」

鍵をショルダーバッグにしまうと拓也さんに声を掛けた。

「ああ、まだ父親は帰っていないからな。それに10時にならないし。それじゃ行こう」

そして拓也さんはアパートの外階段に向かって歩き始めた。

「う、うん」

返事をすると、拓也さんの後を追った―。



「彩花、卓也の誕生日はまだ先なのに何でプレゼントを買ってあげようと思ったんだ?」

拓也さんはアパートの敷地を出るとすぐに尋ねて来た。

「何でって…さっき理由話したでしょう?たっくんは明日から5年生になるんだよ?だから進級祝いに何か買ってあげたいと思ったの。一応文房具を買ってあげようかとは思っているんだけど…拓也さんならたっくんの欲しい物分るでしょう?」

すると拓也さんの表情が一瞬曇った。

「何でだよ…?」

「え?何が?」

「何で、卓也にそこまでしてやるんだい?彩花と卓也は…所詮赤の他人だろう?」

突然拓也さんが信じられない言葉を口にした。

「どうして?どうして…拓也さんがそんな事言うの?たっくんの事、すごく可愛がっているじゃない?」

「確かに、卓也の事は…大切に思っているけど…彩花だって本当はあのアパート出るつもりだったんじゃないか?お金を貯めて…あそこのアパートはあまり日当たりも良くないし、梅雨時はカビが出るから引っ越したいって言ってたじゃないか。そんな…卓也にばかりお金を使っていたら…」

「え…?ど、どうして…」

拓也さんの言葉に耳を疑った。

「どうかしたか?何か変な事俺…言ったか?」

拓也さんが首を傾げる。

「そうじゃなくて!私…そんな事拓也さんに言った覚え無いけど?!」

確かにカビに悩まされて、いい加減あのアパートを引っ越したいとは思っていたけれども…私は一度だって拓也さんの前では話した事が無い。

「…」

拓也さんは黙って私の話を聞いている。

「ねぇ、どうしてそんな事知ってるの?」

私の追及に拓也さんは悲し気に笑みを浮かべると言った。

「それは…」

「それは…?」

「俺が腕のいい調査員だからさ。これ位の情報調べるのどうってことないんだよ」

「ええ~そんなの嘘でしょう?」

「本当だって。ほら、早く行こうぜ。彩花」

そう言うと拓也さんはいきなり私の右手を繋いで来た。

「え?な、何?!」

「ほら、速足で行くぞ」

拓也さんは速足で歩き始めた。

「え?ちょ、ちょっと…っ!」

しかし拓也さんは答えてくれず、代わりに私の右手を繋ぐ手に力をこめて来た―。





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