上 下
178 / 221

10-5 修羅場目前?

しおりを挟む
「あ…イアソン王子…フランシスカ様…お、お久しぶりです…」

「久しぶりね、ロザリー」

「…久しぶり」

フランシスカ様とイアソン王子が交互に挨拶を返してくれた。
イアソン王子には私がずっと『ヘンデル』で冬季休暇を過ごしたことは内密にして貰うように頼んである。
約束を守ってくれているようで、心の中で安堵した。

「レナート、ロザリーが痛がっているわ。離してあげなさいよ」

フランシスカ様が眉をしかめながらイアソン王子を睨みつけた。

「あ…ご、ごめん。悪かったね…つい」

レナート様はバツが悪そうに謝ってきた。

「何だ?レナート。ひょっとして君はロザリーを口説いていたのか?」

イアソン王子は口元に意地悪そうな笑みを浮かべ、とんでもない事を言ってきた。

「まさか!そんなことあるわけ無いじゃありませんかっ!」

レナート様は激しく拒絶し…、フランシスカ様から冷たい視線で見られていることに気付いたのか私の方を振り向いた。

「ご、ごめん…ロザリー。僕は…別にそんなつもりで…」

申し訳無さ気な顔で謝罪してきた。

「いいえ、全く気にしておりませんので大丈夫です」

以前の私ならその言葉に傷ついていたかもしれない。けれど、今はレナート様に興味を持たれていないとう事実のほうが私にとっては安堵出来た。

「そ、そうなのかい?でも、失礼な事を言って…ごめん」

レナート様は戸惑った様子で私を見た。

「良かったじゃないか、レナート。ロザリーは君になら何を言われても気にならないなんてさ」


イアソン王子は再び余計な事を口にする。…と言うか、意図的にレナート様に意地悪な事を言っているような気がする。

「え、ええ…そうですね…」

レナート様は引きつった笑いを浮かべた。

「それで?レナート。貴方はまた何かロザリーに意地悪なことをしていたのではないの?」

レナート様を睨みつけるフランシスカ様。

「い、いや。違うよ。そんなんじゃないんだ。大した話はしていないよ。冬期休暇は何をしていたのか話していただけだよ」

「嘘をつかないで頂戴、それなら何故ロザリーの腕を強く掴む必要があるのかしら?」

「そ、それは…」

段々3人の間に流れる空気が悪くなってきた。このままでは良くない気がする。そこで私は話を変えることにした。

「あの、皆さんはこちらで何をしていたのですか?」

「ええ、イアソン王子とデートをしていたの」

フランシスカ様はレナート様の前で堂々と言い切ってしまった。

「!」

その言葉にレナート様の肩がビクリと跳ねる。

…どうやら私はとんでもない修羅場に居合わせてしまったのかもしれない。

私は公園に来てしまったことを激しく後悔した―。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

ヒロインは辞退したいと思います。

三谷朱花
恋愛
リヴィアはソニエール男爵の庶子だった。15歳からファルギエール学園に入学し、第二王子のマクシム様との交流が始まり、そして、マクシム様の婚約者であるアンリエット様からいじめを受けるようになった……。 「あれ?アンリエット様の言ってることってまともじゃない?あれ?……どうして私、『ファルギエール学園の恋と魔法の花』のヒロインに転生してるんだっけ?」 前世の記憶を取り戻したリヴィアが、脱ヒロインを目指して四苦八苦する物語。 ※アルファポリスのみの公開です。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる

風見ゆうみ
恋愛
元伯爵令嬢だった私、ビアラ・ミゼライトにはホーリル・フェルナンディという子爵令息の婚約者がいる。とある事情で両親を亡くした私は、フェルナンディ子爵家から支援を受けて、貴族が多く通う学園ではあるけれど、成績次第では平民でも通える学園に通っていた。 ある日、ホーリルから呼び出された私は、彼から婚約を破棄し学費や寮費援助を打ち切ると告げられてしまう。 しかも、彼の新しいお相手は私の腐れ縁の相手、ディラン・ミーグス公爵令息の婚約者だった。 その場に居たミーグスと私は婚約破棄を了承する。でも、馬鹿な元婚約者たちが相手では、それだけで終わるはずもなかった―― ※完結保証です。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。 ※誤字脱字など見直して気をつけているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

処理中です...