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8-2 拒めない誘い
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23時―
私はベッドの中に入っていた。慣れない高い天井に、部屋の中に響く時計の音を聞きながら慌ただしかった今日の出来事を振り返っていた。
そして、それと同時に思い出すのは家族の事だった。
「お父さん、フレディ…それにダミアンは今頃どうしているのかしら…?」
夜になると、どうしても家族の事が思い出される。でも…もう駄目だ。私たち家族はもう以前の様には戻れない。だってダミアンの気持を知ってしまったから。父が私の事を心配して、あの家を出るように言ったから。
「私には…もう心が休める場所が無いって事なのよね…?」
唯一の救いであったあの家にはもう戻れない。そして学園では厳しい身分制度がある為、令息令嬢たちに気を遣わなければならない。それだけではない、平民学生達は全員裕福な家柄の学生達ばかりだから私が本当は貧しい家柄であることも、アルバイトをしていることも秘密にしなくてはならない。
そして、レナート様から向けられる冷たい視線…。
「そう考えると…今、1人でこのホテルに滞在している時間が一番ましなのかもしれないわね…」
そうだ。本来であれば長期休暇はユーグ様の元へ行く予定だったのだから。
「イアソン王子に感謝するべきなのかも…ね…」
そして私は眠りに落ちた―。
****
翌朝
ルームサービスの朝食を食べ終えた頃、ノックの音が聞こえた。
「はい」
すぐに扉を開けに行くと、目の前には女性従業員の方が立っていた。
「ロザリー・ダナン様にメッセージをお預かりしております」
「メッセージですか?」
「はい、この国の王太子様が本日10時にホテルにお迎えにいらっしゃるそうですので。フロントでお待ち下さい」
「え?は、はい。分かりました…」
返事をすると女性従業員は笑みを浮かべて去っていった。
「どうしよう…」
イアソン王子が私を迎えにホテルにやってくる…?
どうしてそんな事をするのだろう?イアソン王子はまだ決まった婚約者だっていないはず。私と一緒にいて噂になったらどうするつもりなのだろう?
王族なのに平民の貧しい娘と噂になったら一番困るのはイアソン王子のはずなのに…?
第一、フロントにも行きたくなかった。
何しろこのホテルに泊まるのに、とてもではないが相応しい服を着ているとは言えない私。こんな貧しい身なりでフロントにいれば、周囲の人達から好奇心の目で見られるのは目に見えていた。
断りたいけど、それを伝えるすべは私には何も無い。
「仕方ないわ…取り合えず、今日はイアソン王子に会って…もうこういう事はしないで下さいと直接言うしか無いわね…」
ため息をつくと私は出かける準備を始めた―。
私はベッドの中に入っていた。慣れない高い天井に、部屋の中に響く時計の音を聞きながら慌ただしかった今日の出来事を振り返っていた。
そして、それと同時に思い出すのは家族の事だった。
「お父さん、フレディ…それにダミアンは今頃どうしているのかしら…?」
夜になると、どうしても家族の事が思い出される。でも…もう駄目だ。私たち家族はもう以前の様には戻れない。だってダミアンの気持を知ってしまったから。父が私の事を心配して、あの家を出るように言ったから。
「私には…もう心が休める場所が無いって事なのよね…?」
唯一の救いであったあの家にはもう戻れない。そして学園では厳しい身分制度がある為、令息令嬢たちに気を遣わなければならない。それだけではない、平民学生達は全員裕福な家柄の学生達ばかりだから私が本当は貧しい家柄であることも、アルバイトをしていることも秘密にしなくてはならない。
そして、レナート様から向けられる冷たい視線…。
「そう考えると…今、1人でこのホテルに滞在している時間が一番ましなのかもしれないわね…」
そうだ。本来であれば長期休暇はユーグ様の元へ行く予定だったのだから。
「イアソン王子に感謝するべきなのかも…ね…」
そして私は眠りに落ちた―。
****
翌朝
ルームサービスの朝食を食べ終えた頃、ノックの音が聞こえた。
「はい」
すぐに扉を開けに行くと、目の前には女性従業員の方が立っていた。
「ロザリー・ダナン様にメッセージをお預かりしております」
「メッセージですか?」
「はい、この国の王太子様が本日10時にホテルにお迎えにいらっしゃるそうですので。フロントでお待ち下さい」
「え?は、はい。分かりました…」
返事をすると女性従業員は笑みを浮かべて去っていった。
「どうしよう…」
イアソン王子が私を迎えにホテルにやってくる…?
どうしてそんな事をするのだろう?イアソン王子はまだ決まった婚約者だっていないはず。私と一緒にいて噂になったらどうするつもりなのだろう?
王族なのに平民の貧しい娘と噂になったら一番困るのはイアソン王子のはずなのに…?
第一、フロントにも行きたくなかった。
何しろこのホテルに泊まるのに、とてもではないが相応しい服を着ているとは言えない私。こんな貧しい身なりでフロントにいれば、周囲の人達から好奇心の目で見られるのは目に見えていた。
断りたいけど、それを伝えるすべは私には何も無い。
「仕方ないわ…取り合えず、今日はイアソン王子に会って…もうこういう事はしないで下さいと直接言うしか無いわね…」
ため息をつくと私は出かける準備を始めた―。
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