70 / 221
4−15 これから私は
しおりを挟む
フランシスカ様達が保健室から出て行き、再び部屋の中が静かになった。
「…」
ベッドからゆっくり起き上がるとため息をついた。私は本当にもうレナート様に嫌われてしまった。これからどうしたらいいのだろう?レナート様とは同じクラスなので避けることは出来ない。いっそのこと学校を辞めてしまえば良いのかもしれないけれど、あの方に必ず高校を卒業するように言われているので辞めるわけにもいかない。いっそ…無理を承知で転校させて貰えないかお願いしてみるべきか…。
でもそれは嫌だった。あの方の命令ならば仕方なく言うことを聞くけれども、こちらからお願いだけは絶対にしたくなかった。借りを…作りたくは無かった。
「私は…我慢して学校へ通わなくてはいけないのね…」
いっそ逃げられたらどんなにかいいか。けれど私が逃げたら郷里に残された父と弟達は?私は家族を人質として囚われている状態に近いのに…?
八方塞がりだった。
まだ入学して間もないのに、後3年間はレナート様の冷たい視線に耐えなければならないなんて地獄だった。
今の私に出来ることは二つ。
レナート様とフランシスカ様、そしてイアソン王子に決して近づかないこと。教室では空気の様な存在に徹する―。
そして3年間我慢をして学校へ通い、卒業して…私の真の地獄が始まるのだ。
ここへ入学する時に描いていた一筋の希望はもろくも絶たれた。
私はもうこの先ずっと心を殺して生きていくしかないのだろうか…?
「…ふ…うっうぅう…」
再び、堪えていた涙が溢れ…私はベッドに潜り込んで泣き続けた。
だから…気づかなかった。
保健室に人が入ってきたことに。
「ロザリー」
不意に名前を呼ばれて、ビクリとした。
あの声は…。
「開けるよ、ロザリー」
返事をする間もなくカーテンが開けられ、姿を現したのはイアソン王子だった。
「あ…イアソン王子…」
私は涙で濡れた顔をイアソン王子の前にさらけ出す事になってしまった。
「!」
必死で涙をハンカチで押さえると頭を下げた。
「ど、どうも…。お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ございません…」
「ロザリー…やっぱり俺たちの話を聞いていたんだな?」
「…」
私は黙っていたが小さく頷いた。何か口を開けば涙が溢れてしまいそうだったからだ。
「…あいつは…レナートはおかしくなってしまったんだよ…」
え…?
その言葉に自分の肩がピクリと動く。
「レナートは…フランシスカにあまりにも相手にされなくて…フランシスカに対して一種の狂気じみた感情を持つようになってしまったんだ。俺とレナートは…初等部からの知り合いなんだよ。…フランシスカは中等部になってからこの学園に入学してきたんだ」
イアソン王子はポツリポツリと語りだす。
「フランシスカはある一件がきっかけでレナートの事を避けるようになって…それが原因で…レナートは少しずつおかしくなっていったんだよ。普段は人当たりの良い男なのに、フランシスカが絡むと…狂気じみてしまうんだ…。本当にあいつはフランシスカ一筋だったから…」
「そう…だったのですね…」
「だから、あいつの事は何を言われても気にするな。今に始まったことじゃないから…。何かあれば俺がレナートから守ってやるから…」
「いいえ…折角のお言葉ですが…遠慮させて…下さい…」
私は涙を堪えながら口を開いた―。
「…」
ベッドからゆっくり起き上がるとため息をついた。私は本当にもうレナート様に嫌われてしまった。これからどうしたらいいのだろう?レナート様とは同じクラスなので避けることは出来ない。いっそのこと学校を辞めてしまえば良いのかもしれないけれど、あの方に必ず高校を卒業するように言われているので辞めるわけにもいかない。いっそ…無理を承知で転校させて貰えないかお願いしてみるべきか…。
でもそれは嫌だった。あの方の命令ならば仕方なく言うことを聞くけれども、こちらからお願いだけは絶対にしたくなかった。借りを…作りたくは無かった。
「私は…我慢して学校へ通わなくてはいけないのね…」
いっそ逃げられたらどんなにかいいか。けれど私が逃げたら郷里に残された父と弟達は?私は家族を人質として囚われている状態に近いのに…?
八方塞がりだった。
まだ入学して間もないのに、後3年間はレナート様の冷たい視線に耐えなければならないなんて地獄だった。
今の私に出来ることは二つ。
レナート様とフランシスカ様、そしてイアソン王子に決して近づかないこと。教室では空気の様な存在に徹する―。
そして3年間我慢をして学校へ通い、卒業して…私の真の地獄が始まるのだ。
ここへ入学する時に描いていた一筋の希望はもろくも絶たれた。
私はもうこの先ずっと心を殺して生きていくしかないのだろうか…?
「…ふ…うっうぅう…」
再び、堪えていた涙が溢れ…私はベッドに潜り込んで泣き続けた。
だから…気づかなかった。
保健室に人が入ってきたことに。
「ロザリー」
不意に名前を呼ばれて、ビクリとした。
あの声は…。
「開けるよ、ロザリー」
返事をする間もなくカーテンが開けられ、姿を現したのはイアソン王子だった。
「あ…イアソン王子…」
私は涙で濡れた顔をイアソン王子の前にさらけ出す事になってしまった。
「!」
必死で涙をハンカチで押さえると頭を下げた。
「ど、どうも…。お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ございません…」
「ロザリー…やっぱり俺たちの話を聞いていたんだな?」
「…」
私は黙っていたが小さく頷いた。何か口を開けば涙が溢れてしまいそうだったからだ。
「…あいつは…レナートはおかしくなってしまったんだよ…」
え…?
その言葉に自分の肩がピクリと動く。
「レナートは…フランシスカにあまりにも相手にされなくて…フランシスカに対して一種の狂気じみた感情を持つようになってしまったんだ。俺とレナートは…初等部からの知り合いなんだよ。…フランシスカは中等部になってからこの学園に入学してきたんだ」
イアソン王子はポツリポツリと語りだす。
「フランシスカはある一件がきっかけでレナートの事を避けるようになって…それが原因で…レナートは少しずつおかしくなっていったんだよ。普段は人当たりの良い男なのに、フランシスカが絡むと…狂気じみてしまうんだ…。本当にあいつはフランシスカ一筋だったから…」
「そう…だったのですね…」
「だから、あいつの事は何を言われても気にするな。今に始まったことじゃないから…。何かあれば俺がレナートから守ってやるから…」
「いいえ…折角のお言葉ですが…遠慮させて…下さい…」
私は涙を堪えながら口を開いた―。
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる