上 下
59 / 221

4−4 呼び出しを受けた人物

しおりを挟む
 そこは学園の噴水広場だった。昼間しか来た事は無かったし、この場所は貴族たちの憩いの場として使われていた為、私達のような平民学生は滅多にこの場所へ来ることは無かった。

「ほら、見てご覧。夜はライトアップされていて綺麗だろう?ここは学園の学生達の夜のデートスポットになっているのさ。貴族たちしか集まらないから君達のような平民の学生達は夜の噴水広場は初めてだろう?」

該当に照らされ、長い影を落としたイアソン王子が私に言う。

「ええ、本当に…素敵な場所ですね」

「今、この場にいるのは俺とロザリーの2人だけだから気を使うことも無いだろう?」

「ですが…」

イアソン王子はこの学園で一番身分が高い。だからやはり一緒にいると緊張する。

「あれ?その反応…ひょっとして俺と一緒にいても緊張する?」

「それは…当然です。だってイアソン王子は…」

言いかけるとイアソン王子が口を開いた。そして私に近付いてくると言った。

「ロザリー。きみは自分の立場を随分卑下しているようだけど…本当なら平民の立場に置かれる必要はないじゃないか?」

「!」

その言葉にドキリとする。

「イ、イアソン王子…あ、貴方は一体…どこまで私の秘密を知っているのですか…?」

尋ねる声が震えている。するとイアソン王子は私の両頬を手で挟み込むと更に顔を近づけてくる。今にもまつげが触れそうな至近距離まで接近されて必死で逃れようとした。

「や、やめて下さい…」

しかし、イアソン王子は私の腰に腕を回し、抱き寄せてくると耳元で囁いてきた。

「そうだね…でも…君のその銀色の髪と紫の瞳にはとても興味があるよ。何しろ…その姿には…」

怖い…イアソン王子が…!

イアソン王子がそこまで言いかけた時―

「えっ?!ロザリーッ?!イアソン王子っ?!」

不意に背後で声が聞こえ、慌てて振り向くと驚いた顔で此方を見つめるレナート様の姿があった。

「レ、レナート様…」

何故?どうしてここへ…?

「ああ、やっと来たのか?」

イアソン王子は私を抱きしめたままイアソン王子を見る。え?もしかしてレナート様をここに呼び出したのは…?

「イアソン王子…一体ロザリーに何をされていたのですか?」

「決まっているだろう?ロザリーとデートをしているんだが?ここへ君を呼んだのは3人で夜の噴水広場で話をしようかと思ってね」

イアソン王子はとんでもない事を言ってきた。

「ち、違いますっ!レナート様!誤解ですっ!イアソン王子が寮までいらしたのです。そこでここまで連れてきて頂いただけですっ!」

私は必死で訴えた。レナート様には私とイアソン王子の事を誤解されたくはなかった。

「イアソン王子…どう見てもロザリーは嫌がっているように見えますけど?手を離してあげて下さい」

イアソン王子は少しの間私を見ると言った。

「レナートが煩いから離してあげるよ」

そして私から手を外すと言った。

「ロザリー。俺は君の味方だ。助けがほしければ力になってあげるよ。何しろ君は特別な人だからね」

「イアソン王子…」

そしてイアソン王子は私とレナート様をその場に残し、歩き去って行った―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます

神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。 【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。  だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。 「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」  マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。 (そう。そんなに彼女が良かったの)  長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。  何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。 (私は都合のいい道具なの?)  絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。  侍女達が話していたのはここだろうか?  店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。  コッペリアが正直に全て話すと、 「今のあんたにぴったりの物がある」  渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。 「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」  そこで老婆は言葉を切った。 「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」  コッペリアは深く頷いた。  薬を飲んだコッペリアは眠りについた。  そして――。  アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。 「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」 ※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)  (2023.2.3)  ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000 ※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

処理中です...