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3-12 応援します
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レナート様は本当にフランシスカ様の事が好きなんだ。イアソン王子と仲良くしている姿を目にしても…。いくら私がレナート様の事を思っても決して振り向いてくれる事は無いだろう。
「…応援してますから」
「え?」
レナート様が振り向いた。
「私、レナート様とフランシスカ様のお2人がうまくいくように、これからも協力しますね?」
レナート様…貴方の事が好きだから―。
「ありがとう、ロザリー」
少し頬を赤らめ、微笑むレナート様の姿はとても素敵だった。その笑顔に胸がドキドキして、締め付けられそうだった。
「それでは私、もう行きますね」
自分の恋心を押し隠し、ベンチから立ち上がった。
「一緒に行こうか」
立ち上がりかけたレナート様に私は言った。
「いいえ、別々に行きましょう。上位貴族のレナート様と平民の私が一緒にいる処を他の人達に見られるわけにはいきませので」
そう、ここは絶対的階級制度の学園。貴族学生と平民学生が一緒にいるのを見られるだけで、どんな目に遭うか分らないような場所なのだ。私達は目立たず、息を潜めるようにここで卒業するまで生活していく…そんな場所なのだから。
「ロザリー…。ごめん」
レナート様は申し訳なさげに謝って来る。
「え?何を謝られるのですか?レナート様は何も悪い事していないじゃないですか」
「だけど…ロザリーを不憫な目に遭わせてしまった。僕が巻き込んでしまったばかりに制服が傷ついて、怪我まで…」
「制服は繕いましたし、怪我ももう大丈夫です。少し擦りむいただけです。なのでどうか気になさらないでください。それではお先に失礼します」
立ち上がり、頭を下げると私はレナート様を残して先に中庭を立ち去った。…本当なら立場を考えれば私があの場に残って、先にレナート様に帰って頂くのが筋だったのかもしれないけれど、私はどうしても先に帰りたかった。そうでなければ捨てられた気持ちになってしまうから…。
私は後ろを振り返りもせずに、その場を後にした―。
****
「ただいま…」
部屋に戻り、扉を開けると既に私服に着換えたアニータが机に向かって宿題をしていた。
「まぁ、随分遅かったじゃない。そんなに今日の日直当番忙しかったの?」
アニータが顔を上げて尋ねて来た。
「え、ええ。少し先生と話があったから」
「話…?」
「ええ。学園生活は慣れましたか?って聞かれたの」
「そう言えばロザリーは高等部から入学してきたものね。それで先生も気になったのね?」
「ええ。そうね」
「それで?何て答えたの?」
「勿論、学園生活は慣れましたって答えたわ。毎日楽しいですって」
「そう。それは良かったわ」
「さて、それじゃ私も着替えて宿題を始めようかしら」
私の言葉にアニータは頷く。
「その方がいいわ。今日の宿題は多い上に、結構面倒な物が多いから」
「それは大変ね。すぐに取り掛からないと」
急いで私は私服に着換えると、アニータと背中合わせに座り、宿題を始めた。
そして、その夜…ちょっとした騒ぎが起こる―。
「…応援してますから」
「え?」
レナート様が振り向いた。
「私、レナート様とフランシスカ様のお2人がうまくいくように、これからも協力しますね?」
レナート様…貴方の事が好きだから―。
「ありがとう、ロザリー」
少し頬を赤らめ、微笑むレナート様の姿はとても素敵だった。その笑顔に胸がドキドキして、締め付けられそうだった。
「それでは私、もう行きますね」
自分の恋心を押し隠し、ベンチから立ち上がった。
「一緒に行こうか」
立ち上がりかけたレナート様に私は言った。
「いいえ、別々に行きましょう。上位貴族のレナート様と平民の私が一緒にいる処を他の人達に見られるわけにはいきませので」
そう、ここは絶対的階級制度の学園。貴族学生と平民学生が一緒にいるのを見られるだけで、どんな目に遭うか分らないような場所なのだ。私達は目立たず、息を潜めるようにここで卒業するまで生活していく…そんな場所なのだから。
「ロザリー…。ごめん」
レナート様は申し訳なさげに謝って来る。
「え?何を謝られるのですか?レナート様は何も悪い事していないじゃないですか」
「だけど…ロザリーを不憫な目に遭わせてしまった。僕が巻き込んでしまったばかりに制服が傷ついて、怪我まで…」
「制服は繕いましたし、怪我ももう大丈夫です。少し擦りむいただけです。なのでどうか気になさらないでください。それではお先に失礼します」
立ち上がり、頭を下げると私はレナート様を残して先に中庭を立ち去った。…本当なら立場を考えれば私があの場に残って、先にレナート様に帰って頂くのが筋だったのかもしれないけれど、私はどうしても先に帰りたかった。そうでなければ捨てられた気持ちになってしまうから…。
私は後ろを振り返りもせずに、その場を後にした―。
****
「ただいま…」
部屋に戻り、扉を開けると既に私服に着換えたアニータが机に向かって宿題をしていた。
「まぁ、随分遅かったじゃない。そんなに今日の日直当番忙しかったの?」
アニータが顔を上げて尋ねて来た。
「え、ええ。少し先生と話があったから」
「話…?」
「ええ。学園生活は慣れましたか?って聞かれたの」
「そう言えばロザリーは高等部から入学してきたものね。それで先生も気になったのね?」
「ええ。そうね」
「それで?何て答えたの?」
「勿論、学園生活は慣れましたって答えたわ。毎日楽しいですって」
「そう。それは良かったわ」
「さて、それじゃ私も着替えて宿題を始めようかしら」
私の言葉にアニータは頷く。
「その方がいいわ。今日の宿題は多い上に、結構面倒な物が多いから」
「それは大変ね。すぐに取り掛からないと」
急いで私は私服に着換えると、アニータと背中合わせに座り、宿題を始めた。
そして、その夜…ちょっとした騒ぎが起こる―。
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