16 / 221
2-4 身分の差
しおりを挟む
「え…?町を案内…」
私は耳を疑った。
「うん、そうだよ。どうせ今日は暇だからね。それじゃ行こうか?」
レナート様が私の返事を待たずに歩き出す。まるで夢のようなお誘いだけども…。
「だ、駄目ですっ!」
私は大声で言った。
「え?どうしたの?」
予想外に大きな声を上げてしまったのかもしれない。レナート様は驚いた顔で私を見た。
「何が駄目だって言うんだい?あ…ひょっとして僕と一緒に出掛けるのは…嫌だったかな…?」
レナート様が申し訳なさ気に頭に手をやる。
「い、いえ。レナート様からのお誘いはとても嬉しいのですが…ただ、レナート様には婚約者がいらっしゃるではありませんか。もし私と一緒にお出かけされている姿をあの方が見られたら…何と思われるか…」
するとレナート様は悲しげな顔つきを見せた。
「ああ…。フレデリカの事を言っているんだね?それなら何も気にする事は無いよ。彼女は今日はレナート王子と一緒に町に出かけてしまったんだ」
「え…?」
「だから…暇になってしまったんだよ」
「す、すみません…!そんな事とは知らずに私は…!」
慌てて頭を下げるとレナート様は笑いながら言った。
「そんな事、ロザリーは気にすること無いよ。何も今日に限った事じゃないから」
「そ、そんな…」
今日に限った事ではないなんて…。私だったら…。でもその先を口にする事は出来ない。何故なら私とレナート様の間には…どうしようもない身分の差があるから。
「これで分かっただろう?さて、それじゃ一緒に町に行こう。女の子が好きそうな店を知ってるから連れて行ってあげるよ」
笑顔で言うレナート様に私は首を振った。
「いいえ…それでもやっぱり駄目です。一緒には出かけられません」
「そうか…ごめん。迷惑だったかな…。それじゃ…1人で行ってくるといいよ」
寂しげに言うレナート様。ひょっとすると私の言葉使いのせいで勘違いさせてしまったのかもしれない。
「いいえ。迷惑なんて…とんでもありません!お誘い…すごく嬉しかったです。で、でも…私と一緒にいるとレナート様の評判が…落ちてしまいます。むしろ迷惑を掛けてしまうのは私の方です」
「え…?それは一体どういう意味だい?」
首を傾げるレナート様に言った。
「私は…平民の学生です。ですが、レナート様は貴族…しかも公爵さまですよね?私なんかのような身分の低い者と一緒にいればレナート様に対する周囲の評価が下がってしまいます。ましてやフレデリカ様と言う、あんなにも素敵な婚約者がいらっしゃる方が…私と一緒にいたことが見られでもしたら…問題になってしまいます」
それに、私は…たとえ町に出かけても何も買い物をすることが出来ない。私が本当は貧しい平民であるということは…誰にも知られてはいけないのだから…。そして私が抱えているあの秘密も…。
「ロザリー…そこまで考えていたのかい?」
「…はい。こうして今、一緒にいるだけでも…きっと誰かに見られているでしょう」
「それじゃ、1人で町に行くつもり?」
「はい」
小さく頷く。
「困ったな…」
レナート様が呟く。
「え?」
「僕は今日1日暇で…誰かに町へ出掛けるのに付き合って貰いたかったんだけどな…」
そして私をチラリと見る。確かに…私だって、本当は…レナート様と一緒に出かけたい…。そうだ…あの方法なら一緒に出かけられるかも知れない…!
私は肩から下げたポシェットをギュッと握りしめた―。
私は耳を疑った。
「うん、そうだよ。どうせ今日は暇だからね。それじゃ行こうか?」
レナート様が私の返事を待たずに歩き出す。まるで夢のようなお誘いだけども…。
「だ、駄目ですっ!」
私は大声で言った。
「え?どうしたの?」
予想外に大きな声を上げてしまったのかもしれない。レナート様は驚いた顔で私を見た。
「何が駄目だって言うんだい?あ…ひょっとして僕と一緒に出掛けるのは…嫌だったかな…?」
レナート様が申し訳なさ気に頭に手をやる。
「い、いえ。レナート様からのお誘いはとても嬉しいのですが…ただ、レナート様には婚約者がいらっしゃるではありませんか。もし私と一緒にお出かけされている姿をあの方が見られたら…何と思われるか…」
するとレナート様は悲しげな顔つきを見せた。
「ああ…。フレデリカの事を言っているんだね?それなら何も気にする事は無いよ。彼女は今日はレナート王子と一緒に町に出かけてしまったんだ」
「え…?」
「だから…暇になってしまったんだよ」
「す、すみません…!そんな事とは知らずに私は…!」
慌てて頭を下げるとレナート様は笑いながら言った。
「そんな事、ロザリーは気にすること無いよ。何も今日に限った事じゃないから」
「そ、そんな…」
今日に限った事ではないなんて…。私だったら…。でもその先を口にする事は出来ない。何故なら私とレナート様の間には…どうしようもない身分の差があるから。
「これで分かっただろう?さて、それじゃ一緒に町に行こう。女の子が好きそうな店を知ってるから連れて行ってあげるよ」
笑顔で言うレナート様に私は首を振った。
「いいえ…それでもやっぱり駄目です。一緒には出かけられません」
「そうか…ごめん。迷惑だったかな…。それじゃ…1人で行ってくるといいよ」
寂しげに言うレナート様。ひょっとすると私の言葉使いのせいで勘違いさせてしまったのかもしれない。
「いいえ。迷惑なんて…とんでもありません!お誘い…すごく嬉しかったです。で、でも…私と一緒にいるとレナート様の評判が…落ちてしまいます。むしろ迷惑を掛けてしまうのは私の方です」
「え…?それは一体どういう意味だい?」
首を傾げるレナート様に言った。
「私は…平民の学生です。ですが、レナート様は貴族…しかも公爵さまですよね?私なんかのような身分の低い者と一緒にいればレナート様に対する周囲の評価が下がってしまいます。ましてやフレデリカ様と言う、あんなにも素敵な婚約者がいらっしゃる方が…私と一緒にいたことが見られでもしたら…問題になってしまいます」
それに、私は…たとえ町に出かけても何も買い物をすることが出来ない。私が本当は貧しい平民であるということは…誰にも知られてはいけないのだから…。そして私が抱えているあの秘密も…。
「ロザリー…そこまで考えていたのかい?」
「…はい。こうして今、一緒にいるだけでも…きっと誰かに見られているでしょう」
「それじゃ、1人で町に行くつもり?」
「はい」
小さく頷く。
「困ったな…」
レナート様が呟く。
「え?」
「僕は今日1日暇で…誰かに町へ出掛けるのに付き合って貰いたかったんだけどな…」
そして私をチラリと見る。確かに…私だって、本当は…レナート様と一緒に出かけたい…。そうだ…あの方法なら一緒に出かけられるかも知れない…!
私は肩から下げたポシェットをギュッと握りしめた―。
0
お気に入りに追加
415
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
山猿の皇妃
夏菜しの
恋愛
ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。
祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。
嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。
子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。
一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……
それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。
帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。
行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。
※恋愛成分は低め、内容はややダークです
ヒロインに騙されて婚約者を手放しました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか?
どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる