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1−9 好奇心と嫉妬の目
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2人で並んで廊下を歩いていると、たちまち生徒達から注目を浴びる。男子生徒たちは好奇心旺盛の目でこちらを見ているけれども、女子生徒達の視線は身分を問わず嫉妬と非難の目で私を睨みつけているのが痛いほど伝わってくる。そこでレナート様から数歩下がって後ろを歩いていると、不意に前を歩くレナート様が立ち止まって振り返った。
「どうしたの?ロザリー」
「い、いえ。レナート様と一緒に歩いていると…ご迷惑を掛けてしまうと思いましたので」
「何故そう思うんだい?」
「そ、それは…私のような平民と一緒にいるとレナート様の評判が下がってしまうと思いますので…」
「評判…?」
レナート様が眉をしかめて周囲を見渡すと、途端に周囲にいた生徒たちがサッと視線をそらせた。
「ああ…そういう事か…」
レナート様は小さくつぶやくと、私を見た。
「ロザリー。こっちへ行こう」
レナート様は不意に向きを変えると、中庭へ続く廊下に向かった。一体どうしたのだろう…?けれど私は黙ってレナート様の後をついていった。
中庭には綺麗に刈り取られた芝生と花壇があり、色とりどりの花が植えられていた。人の気配は無く、辺りは静かで時々風で木々がざわざわと揺れる。前を歩いていたレナート様は不意に足を止めると振り返った。
「ごめん、ロザリー」
突然レナート様が頭を下げてきた。
「え?どうされたのですか?」
するとレナート様が言った。
「僕の配慮が足りなかったよ。教室でイアソン王子に困らされているのを見て、何とかしてあげようと思って、教室から連れ出したけど…僕と一緒に歩いているだけで君が他の生徒達から非難の目で見られるとは思ってもいなかったんだ。しかもすぐに気づいてあげることが出来なかった」
「レナート様…」
確かにレナート様は、こうして今私と一緒にいてもどこか上の空だった。だけど何故レナート様が上の空なのか…理由は分かっていた。
「あの…差し出がましいかもしれませんが…レナート様には婚約者がいらっしゃるのですよね?」
「え…?何故それを…ああ、そうか。誰かに僕の話を聞いたんだね?」
「はい、そうです。その方ですよね…?フランシスカ様って」
「あ、ああ。そうなんだよ。イアソン王子とフランシスカは…その仲が良いんだよ」
どこかバツが悪そうなレナート様に言った。
「行って下さい」
「え?行くって何処へ?」
「勿論、フランシスカ様の所へですよ」
「え?だけど…僕はロザリーに学園の案内を…」
レナート様は言いかけて、言葉を切ってしまった。
「レナート様…」
「…そうだよな。婚約者がいるのに…一緒にいると評判に傷がついてしまうかもしれない…」
「ええ、そうです。レナート様の評判に傷がついてしまいますから」
するとレナート様はキョトンとした顔で言った。
「え?何を言っているんだい?評判に傷が付くのは君の方だよ」
「私…ですか?」
「そう、恐らく僕は…上級貴族だから、周囲の人達は何も言わないし、言えないだろう。言いたくても言えないと思うんだ。でも…その代わり、彼等は君を標的にするかも知れない。この学園は…表向きは学生は皆平等だと言っているけれども…稀に無いほどに階級性が強い学園だからね。…だからじゃないかな?毎年この学園を中退していく生徒が絶えないのは。今朝…クラスで責められていた彼は…大丈夫かな…?」
その話にイアソン王子が壇上で話した言葉を思い出した。
『皆!これから卒業までの3年間、1人も欠ける事無く全員揃って無事に卒業しよう!』
あれは…この事だったのだ。
「なら…尚更、私とレナート様は一緒にいないほうが良さそうですね?」
笑みを浮かべてレナート様を見た。
「ロザリー…」
「行ってあげて下さい」
「え?何処へ…?」
「勿論、フランシスカ様の所へです。…大切な婚約者なのですよね?」
「あ、ああ…そうなんだ」
少し頬を赤らめながらレナート様が言う。
「私なら大丈夫です。お庭も綺麗ですし、予鈴が鳴るまではここにいますから」
「…ごめん」
レナート様はそれだけ言うと、走り去って行った―。
「どうしたの?ロザリー」
「い、いえ。レナート様と一緒に歩いていると…ご迷惑を掛けてしまうと思いましたので」
「何故そう思うんだい?」
「そ、それは…私のような平民と一緒にいるとレナート様の評判が下がってしまうと思いますので…」
「評判…?」
レナート様が眉をしかめて周囲を見渡すと、途端に周囲にいた生徒たちがサッと視線をそらせた。
「ああ…そういう事か…」
レナート様は小さくつぶやくと、私を見た。
「ロザリー。こっちへ行こう」
レナート様は不意に向きを変えると、中庭へ続く廊下に向かった。一体どうしたのだろう…?けれど私は黙ってレナート様の後をついていった。
中庭には綺麗に刈り取られた芝生と花壇があり、色とりどりの花が植えられていた。人の気配は無く、辺りは静かで時々風で木々がざわざわと揺れる。前を歩いていたレナート様は不意に足を止めると振り返った。
「ごめん、ロザリー」
突然レナート様が頭を下げてきた。
「え?どうされたのですか?」
するとレナート様が言った。
「僕の配慮が足りなかったよ。教室でイアソン王子に困らされているのを見て、何とかしてあげようと思って、教室から連れ出したけど…僕と一緒に歩いているだけで君が他の生徒達から非難の目で見られるとは思ってもいなかったんだ。しかもすぐに気づいてあげることが出来なかった」
「レナート様…」
確かにレナート様は、こうして今私と一緒にいてもどこか上の空だった。だけど何故レナート様が上の空なのか…理由は分かっていた。
「あの…差し出がましいかもしれませんが…レナート様には婚約者がいらっしゃるのですよね?」
「え…?何故それを…ああ、そうか。誰かに僕の話を聞いたんだね?」
「はい、そうです。その方ですよね…?フランシスカ様って」
「あ、ああ。そうなんだよ。イアソン王子とフランシスカは…その仲が良いんだよ」
どこかバツが悪そうなレナート様に言った。
「行って下さい」
「え?行くって何処へ?」
「勿論、フランシスカ様の所へですよ」
「え?だけど…僕はロザリーに学園の案内を…」
レナート様は言いかけて、言葉を切ってしまった。
「レナート様…」
「…そうだよな。婚約者がいるのに…一緒にいると評判に傷がついてしまうかもしれない…」
「ええ、そうです。レナート様の評判に傷がついてしまいますから」
するとレナート様はキョトンとした顔で言った。
「え?何を言っているんだい?評判に傷が付くのは君の方だよ」
「私…ですか?」
「そう、恐らく僕は…上級貴族だから、周囲の人達は何も言わないし、言えないだろう。言いたくても言えないと思うんだ。でも…その代わり、彼等は君を標的にするかも知れない。この学園は…表向きは学生は皆平等だと言っているけれども…稀に無いほどに階級性が強い学園だからね。…だからじゃないかな?毎年この学園を中退していく生徒が絶えないのは。今朝…クラスで責められていた彼は…大丈夫かな…?」
その話にイアソン王子が壇上で話した言葉を思い出した。
『皆!これから卒業までの3年間、1人も欠ける事無く全員揃って無事に卒業しよう!』
あれは…この事だったのだ。
「なら…尚更、私とレナート様は一緒にいないほうが良さそうですね?」
笑みを浮かべてレナート様を見た。
「ロザリー…」
「行ってあげて下さい」
「え?何処へ…?」
「勿論、フランシスカ様の所へです。…大切な婚約者なのですよね?」
「あ、ああ…そうなんだ」
少し頬を赤らめながらレナート様が言う。
「私なら大丈夫です。お庭も綺麗ですし、予鈴が鳴るまではここにいますから」
「…ごめん」
レナート様はそれだけ言うと、走り去って行った―。
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