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1−4 旧友のように
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「私は左側のベッドと机を使っているから、ロザリーは右側を使って」
「ええ、分かったわ」
アニータに言われたとおり、私は右側のスペースにキャリーバッグを持って移動すると、さっそく荷物整理を始めた。
「あの…フランシスカ様ってどんな方なのかしら?」
ベッドの上に持ってきた着替えを乗せながらアニータに尋ねた。
「フランシスカ様ね?とってもお美しい方よ。ストレートの長いブロンドの髪に海のように青い瞳…成績もとても優秀なの。だけど、あの方も侯爵家の方でとても身分が高いから私達平民が迂闊に近づいたり、声を掛けるなんてことも恐れ多くて出来ないけどね」
「そうなのね…」
フランシスカ様…彼女も他の貴族同様に気位が高いのだろうか?
「それにしても不公平だと思わない?」
どこか不服そうにアニータが言う。
「え?何が?」
キャリーバッグから取り出した衣類を部屋に備え付けのワードローブにハンガーで吊るしながら返事をした。
「だって、私達お金持ちの平民が多額の寄付金を支払っているお陰もあって、学園の経営が成り立っているのよ?下級貴族の中には私達よりも貧しい生活をしているって言うのに、爵位があるだけであんなにえばっているのだから。あ~あ…お父様、爵位を買ってくれないかしら…そうすればこんな惨めな思いをしなくて済むのに」
「アニータのお父様は何のお仕事をしているの?」
バタンとワードローブの扉を閉めながら尋ねた。
「私のお父様は印刷工場を経営しているのよ。ロザリーの家の家業は何?」
「えっと、我が家はぶどう農園を経営しているの」
ドキドキしながら答える。
「へ~ひょっとしてワイナリーでも経営しているのかしら?」
アニータが目をキラキラさせながら尋ねてくる。
「ええ、まぁそんなところね」
大丈夫…嘘はついていない…。だけど、そんな事情すら私は全て初耳だった。平民も通える学園とは聞いていたけれども、まさか彼等の家は皆お金持ちだったなんて…。
私は…卒業までの3年間…素性がバレること無く学園生活を過ごせるのだろうか…?
****
荷物整理も全て終了し、私は同室のアニータと話に花を咲かせていた。彼女はとても気さくなタイプで、私達はほんの僅かな時間でまるで古くからの親友のような関係になっていた。
「あ、もうすぐ夕食の時間よ」
不意にアニータが部屋の壁時計を見ると言った。時計はもうすぐ18時半になろうとしている。
「そう言えば夕食は18時半だったわね」
入寮案内に記載されていた規約を思い出しながら言った。
「ええ、そうよ。じきに寮母さんがベルを鳴らしながら教えてくれるわ」
するとその直後―
ガランガラン…
ガランガラン…
廊下にベルの音が響き渡った。
「あの音が夕食の合図よ、行きましょう」
アニータが嬉しそうに言う。
「ええ、行きましょう」
2人で部屋を出ると、大勢の女子生徒達がぞろぞろと同じ方角目指して歩いている。彼女たちは全員私服姿で、勿論私もすでに自分の服に着替えていた。
「ここ、西塔には平民の生徒たちしかいないから何も気兼ねする事ないからね」
隣を歩くアニータが話しかけてきた。
「ええ、そうね。ところで…さっきから気になっている事があるのだけど…」
私は遠慮がちにアニータに尋ねた。
「いいわよ、何でも聞いてちょうだい。私は中等部からこの学園に通っているから詳しいわよ」
「ここの料理って…美味しい?」
****
「どう?この寮の食事は」
食堂で向かい合わせに座ったアニータが尋ねてきた。
「ええ、とっても美味しいわ。アニータの言ったとおりね」
目の前の料理を口に運びながら私は笑みを浮かべた。
焼き立てのフカフカテーブルパンにクリームスープ。ミートボールに野菜たっぷりのスープ…。とてもあの家で暮らしていた頃とは比べ物にならないくらい豪華な食事だ。お父様…フィリップはどうしているだろう。今も…食べ物に飢えているのだろうか?それとも…あの人は約束を守ってくれている…?
「どうしたの?ロザリー。今、ぼ~っとしていたけど」
向かい側に座るアニータが尋ねてきた。
「え?そうだった?」
「フフフ…とぼけなくてもいいわ。分かってるから」
アニータが含み笑いをする。
「え?何が?」
わけが分からず首を傾げる。
「レナート様の事を考えていたんでしょう?素敵な方だものね~」
「え、ええ。そうね…」
すると背後で声を掛けられた。
「ねぇ、貴女…昼間の騒ぎの中心になった人でしょう?」
振り向くとそこには赤毛の長い髪の少女と焦げ茶色の髪の少女が料理の乗ったトレーを手に、立っていた―。
「ええ、分かったわ」
アニータに言われたとおり、私は右側のスペースにキャリーバッグを持って移動すると、さっそく荷物整理を始めた。
「あの…フランシスカ様ってどんな方なのかしら?」
ベッドの上に持ってきた着替えを乗せながらアニータに尋ねた。
「フランシスカ様ね?とってもお美しい方よ。ストレートの長いブロンドの髪に海のように青い瞳…成績もとても優秀なの。だけど、あの方も侯爵家の方でとても身分が高いから私達平民が迂闊に近づいたり、声を掛けるなんてことも恐れ多くて出来ないけどね」
「そうなのね…」
フランシスカ様…彼女も他の貴族同様に気位が高いのだろうか?
「それにしても不公平だと思わない?」
どこか不服そうにアニータが言う。
「え?何が?」
キャリーバッグから取り出した衣類を部屋に備え付けのワードローブにハンガーで吊るしながら返事をした。
「だって、私達お金持ちの平民が多額の寄付金を支払っているお陰もあって、学園の経営が成り立っているのよ?下級貴族の中には私達よりも貧しい生活をしているって言うのに、爵位があるだけであんなにえばっているのだから。あ~あ…お父様、爵位を買ってくれないかしら…そうすればこんな惨めな思いをしなくて済むのに」
「アニータのお父様は何のお仕事をしているの?」
バタンとワードローブの扉を閉めながら尋ねた。
「私のお父様は印刷工場を経営しているのよ。ロザリーの家の家業は何?」
「えっと、我が家はぶどう農園を経営しているの」
ドキドキしながら答える。
「へ~ひょっとしてワイナリーでも経営しているのかしら?」
アニータが目をキラキラさせながら尋ねてくる。
「ええ、まぁそんなところね」
大丈夫…嘘はついていない…。だけど、そんな事情すら私は全て初耳だった。平民も通える学園とは聞いていたけれども、まさか彼等の家は皆お金持ちだったなんて…。
私は…卒業までの3年間…素性がバレること無く学園生活を過ごせるのだろうか…?
****
荷物整理も全て終了し、私は同室のアニータと話に花を咲かせていた。彼女はとても気さくなタイプで、私達はほんの僅かな時間でまるで古くからの親友のような関係になっていた。
「あ、もうすぐ夕食の時間よ」
不意にアニータが部屋の壁時計を見ると言った。時計はもうすぐ18時半になろうとしている。
「そう言えば夕食は18時半だったわね」
入寮案内に記載されていた規約を思い出しながら言った。
「ええ、そうよ。じきに寮母さんがベルを鳴らしながら教えてくれるわ」
するとその直後―
ガランガラン…
ガランガラン…
廊下にベルの音が響き渡った。
「あの音が夕食の合図よ、行きましょう」
アニータが嬉しそうに言う。
「ええ、行きましょう」
2人で部屋を出ると、大勢の女子生徒達がぞろぞろと同じ方角目指して歩いている。彼女たちは全員私服姿で、勿論私もすでに自分の服に着替えていた。
「ここ、西塔には平民の生徒たちしかいないから何も気兼ねする事ないからね」
隣を歩くアニータが話しかけてきた。
「ええ、そうね。ところで…さっきから気になっている事があるのだけど…」
私は遠慮がちにアニータに尋ねた。
「いいわよ、何でも聞いてちょうだい。私は中等部からこの学園に通っているから詳しいわよ」
「ここの料理って…美味しい?」
****
「どう?この寮の食事は」
食堂で向かい合わせに座ったアニータが尋ねてきた。
「ええ、とっても美味しいわ。アニータの言ったとおりね」
目の前の料理を口に運びながら私は笑みを浮かべた。
焼き立てのフカフカテーブルパンにクリームスープ。ミートボールに野菜たっぷりのスープ…。とてもあの家で暮らしていた頃とは比べ物にならないくらい豪華な食事だ。お父様…フィリップはどうしているだろう。今も…食べ物に飢えているのだろうか?それとも…あの人は約束を守ってくれている…?
「どうしたの?ロザリー。今、ぼ~っとしていたけど」
向かい側に座るアニータが尋ねてきた。
「え?そうだった?」
「フフフ…とぼけなくてもいいわ。分かってるから」
アニータが含み笑いをする。
「え?何が?」
わけが分からず首を傾げる。
「レナート様の事を考えていたんでしょう?素敵な方だものね~」
「え、ええ。そうね…」
すると背後で声を掛けられた。
「ねぇ、貴女…昼間の騒ぎの中心になった人でしょう?」
振り向くとそこには赤毛の長い髪の少女と焦げ茶色の髪の少女が料理の乗ったトレーを手に、立っていた―。
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