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25 大げさな治療
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「う~ん・・・どうやら強い力で握り締められたから神経が圧迫されてしまったようだね・・。骨にひびが入ったり、折れたりはしていないようだけど・・。」
医務室の先生が私の赤紫色に腫れあがった手首を見ながら言う。
「もう一度湿布を貼って包帯を巻いておこう。」
先生は手際よく処置をしながら尋ねてきた。
「一体・・何故こんな怪我をしたのか・・教えてくれるかい?」
先生は私の目を覗き込むように尋ねてきた。だけど、もしここで私がヘンリーの名前を出してしまうと彼が悪者にされてしまう。それだけではない。ますます私に対する風当たりが強くなってしまいそうな気がする。その事を思うととてもではないけれども話す気にはなれなかった。
すると・・。
「この手首の怪我は許嫁の男性のせいで出来てしまったんですよ。」
何とニコルが話してしまった。
「ニ、ニコルッ?!」
「え?許嫁の男性に・・?」
先生は眉をひそめた。
「ええ、その許嫁は酷い男なんですよ。平気で彼女の眼前で別の女性と仲良さげにして・・・ないがしろにするのですから。」
平然というニコルに必死で懇願した。
「ニコルッ!・・もうそれ以上は言わないで。お願いだから・・。」
「テア・・・。だけど・・。」
すると先生は言った。
「よし、それなら彼の罪悪感を煽ってやろう。もっと大げさな処置をしようじゃないか。」
「「え?」」
私と同様にニコルが不思議そうな声を上げた。先生は私の右ひじ部分から手首にかけて、何本か添え木をし、上から湿布を貼ると包帯で丁寧に固定し、さらには三角巾を首から吊った。
「あ、あの・・・いくら何でもこれは少々大げさなのでは・・・?」
医務室の壁に貼り付けてある鏡に映る自分の姿を見ながら私は先生に尋ねた。しかし先生とニコルは納得したようにウンウンと頷いている。
「よし、我ながら良い出来だな?」
「流石は専門が整形外科の先生です。良いお仕事をなさっておりますね。」
「で、ですけどこれでは・・ヘンリーにもキャロルにも・・クラスメイトにも驚かれてしまいます。」
慌てて言うと、ニコルは言った。
「それが狙いじゃないか?」
「え?」
「テア・・・君がヘンリーに強く腕を掴まれて痛がっていた姿や、トレーを落としてヘンリーに何か言われて真っ青になる2人の姿をクラスメイトの何人かが見ていたのか噂話をしていたのを耳にしたんだよ。」
「そうだったの?」
「ああ・・彼はじきに気づくはずだよ。クラスメイトの視線に・・・。ましてやそんな姿で教室に戻れば、ヘンリーがどんな反応をすると思う?」
ニコルは尋ねてきた。ヘンリーの事だ。きっと心配してくれることは無いだろう。
「多分・・・大げさなことをするなと怒られてしまいそうな気がするのだけど・・?」
少し首を捻りながら答えた。
「君の許嫁はそこまで酷い男なのかい?」
すると先生が尋ねてきた。
「い、いえ・・・もしかしたら心配してくれるかもしれませんね。」
私までヘンリーの事を悪く言ってはいけない。慌てて否定した。だって・・私は子供の頃から彼の事を・・。でも、キャロルに会ったことで、ここ数日の間にヘンリーの態度が大きく変わってしまった。私の事を徹底的に冷遇するヘンリー。そんな彼を今の私は自信をもって『好き』と言えるのだろうか・・・?
その時、ニコルが声をかけてきた。
「テア。治療も終わったし・・・教室へ戻ろうか?」
「え?ええ。」
返事をすると、私は先生に向き直った。
「一度ならず、二度までも治療していただきありがとうございました。」
頭を下げると先生が言った。
「テア。不便かも知れないけれど・・・今日1日学校にいる間は・・いや、少なくとも寝るまではその姿をしていた方がいいよ。どのみち君の怪我は軽いものじゃない。固定して動かせないようにしておけば、その分腫れも引きやすいからね。」
「そうですね。先生のお話通りにします。」
「それじゃ、テア。教室へ帰ろう。」
「ええ。」
ニコルに促され、私たちは医務室を後にした—。
医務室の先生が私の赤紫色に腫れあがった手首を見ながら言う。
「もう一度湿布を貼って包帯を巻いておこう。」
先生は手際よく処置をしながら尋ねてきた。
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先生は私の目を覗き込むように尋ねてきた。だけど、もしここで私がヘンリーの名前を出してしまうと彼が悪者にされてしまう。それだけではない。ますます私に対する風当たりが強くなってしまいそうな気がする。その事を思うととてもではないけれども話す気にはなれなかった。
すると・・。
「この手首の怪我は許嫁の男性のせいで出来てしまったんですよ。」
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「ニ、ニコルッ?!」
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すると先生は言った。
「よし、それなら彼の罪悪感を煽ってやろう。もっと大げさな処置をしようじゃないか。」
「「え?」」
私と同様にニコルが不思議そうな声を上げた。先生は私の右ひじ部分から手首にかけて、何本か添え木をし、上から湿布を貼ると包帯で丁寧に固定し、さらには三角巾を首から吊った。
「あ、あの・・・いくら何でもこれは少々大げさなのでは・・・?」
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「よし、我ながら良い出来だな?」
「流石は専門が整形外科の先生です。良いお仕事をなさっておりますね。」
「で、ですけどこれでは・・ヘンリーにもキャロルにも・・クラスメイトにも驚かれてしまいます。」
慌てて言うと、ニコルは言った。
「それが狙いじゃないか?」
「え?」
「テア・・・君がヘンリーに強く腕を掴まれて痛がっていた姿や、トレーを落としてヘンリーに何か言われて真っ青になる2人の姿をクラスメイトの何人かが見ていたのか噂話をしていたのを耳にしたんだよ。」
「そうだったの?」
「ああ・・彼はじきに気づくはずだよ。クラスメイトの視線に・・・。ましてやそんな姿で教室に戻れば、ヘンリーがどんな反応をすると思う?」
ニコルは尋ねてきた。ヘンリーの事だ。きっと心配してくれることは無いだろう。
「多分・・・大げさなことをするなと怒られてしまいそうな気がするのだけど・・?」
少し首を捻りながら答えた。
「君の許嫁はそこまで酷い男なのかい?」
すると先生が尋ねてきた。
「い、いえ・・・もしかしたら心配してくれるかもしれませんね。」
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「それじゃ、テア。教室へ帰ろう。」
「ええ。」
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