142 / 194
ある娼婦の物語 3
しおりを挟む
今夜も私には指名が沢山入った。
「ウフフフ…また来てね?」
一番最後のお客に服を着せながらニッコリ微笑む。
「ああ、勿論だよ。ロッテ、また来るからな?ほら、これをやろう」
何処かの貴族らしき年配の男性客は懐から銀貨5枚を差し出してきた。
「まぁ、こんなに沢山。ありがとうございます!」
笑顔で受け取りながら心のなかで舌打ちをした。
何よ、シケた客ね…。あれだけサービスしたんだからもっとお金を払ってくれたっていいのに。
「それじゃあな、ロッテ」
「ええ。それじゃ」
服を着込んだ男性客が私に軽くキスをして部屋を出て行った。
バタン…
扉が閉じられると、自分の口元をゴシゴシと袖で拭った。
「全く…。最後までしつこいお客ね」
そしていつものように床板を外し、ツボの中に内緒でもらったコインを入れた。
「フフフ…大分お金がたまったわね」
ここで働く女性たちの大半は借金を返す為に働いている。だから皆お金を必死で貯めて、早くこの娼館を出ることばかり考えているけれども私は違う。
別に私はアレックス王子にこの店に売られたわけでもないし、借金があるわけでもない。ただ行く宛も無いし、正直に言えば私はこの仕事が気に入ってる。
好きなことをして、その上お金まで貰えるのだからこんなにありがたいことはない。
まぁ、中には相手をするのも嫌な男性客もいるけれども、それでも運が良ければ自分好みの男性のお相手をすることが出来るのだからこんなに楽しいことは無い。
だからなのだろう。
私の指名率はこの店で一番高く、今ではアレックス王子の予想通りにナンバーワンに上り詰めることが出来たのは。
とにかく、今の私に取ってこの仕事はまさに転職だったのだ―。
****
この召喚で働き始めてから、一ヶ月程経過した時の事だった。
私達娼婦は夜に働き、明け方から眠る…それが当たりまえの生活だった。
そして私も昨夜は深夜3時までお客をとり、眠りについたのは午前4時を過ぎたあたりだった。
それは突然起こったのだ―。
『やめておくれっ!ここは私の大切な店なのよっ!』
『何が大切な店だっ!いかがわしい、しかも違法な商売をしておきながら!とにかくこの店は摘発させてもらう!』
『キャアッ!だ、誰なのっ?!』
『いやあっ!出てってよっ!』
あちこちで騒ぎが起こっている。
「え…?い、一体何なの…?」
まだ半分寝ぼけ眼でベッドからムクリと起き上がった時―。
ガチャッ!!
突然乱暴に扉が開かれた、町の治安警察の制服を着た数名の男の人達が部屋の中になだれ込んできた。
「キャッアッ!と、突然何ですかっ?!」
驚きのあまり悲鳴をあげた。
「ここにもやはり娼婦がいたのか。全く…こんな森の中にいかがわしい店を作りおって…」
「どう見てもお前たちはウェイトレスには見えないしな」
「ああ、男の前でそんなだらしない姿を平気で見せることが出来るんだからな。そこの女!とにかくベッドから降りてこい!」
3人の警察官たちは失礼極まりない台詞を口々に言う。
「ちょっと待って!いくら警察官だとしても、あまりにも失礼じゃないっ!」
思わず食って掛かると口ひげを生やした人物が私を睨みつけてきた。
「うるさい!黙れっ!男を食い物にする娼婦めっ!この娼館は未成年を働かせている罪で摘発することが決定したのだ!早くここから出ていけ!」
何ですって?!
このベッドの床下には私が貯めたお金が隠されているのにっ?!
「いやよっ!出ていかないわっ!」
「四の五の言わずに出ていくんだっ!」
激しく私は首を振って抵抗すると、別の警察官に右腕を掴まれた。
「何するのよ~っ!!」
ガブッ!!
「ぎゃ~っ!!痛ってーっ!!」
警察官の悲鳴が狭い私の部屋に響き渡った―。
「ウフフフ…また来てね?」
一番最後のお客に服を着せながらニッコリ微笑む。
「ああ、勿論だよ。ロッテ、また来るからな?ほら、これをやろう」
何処かの貴族らしき年配の男性客は懐から銀貨5枚を差し出してきた。
「まぁ、こんなに沢山。ありがとうございます!」
笑顔で受け取りながら心のなかで舌打ちをした。
何よ、シケた客ね…。あれだけサービスしたんだからもっとお金を払ってくれたっていいのに。
「それじゃあな、ロッテ」
「ええ。それじゃ」
服を着込んだ男性客が私に軽くキスをして部屋を出て行った。
バタン…
扉が閉じられると、自分の口元をゴシゴシと袖で拭った。
「全く…。最後までしつこいお客ね」
そしていつものように床板を外し、ツボの中に内緒でもらったコインを入れた。
「フフフ…大分お金がたまったわね」
ここで働く女性たちの大半は借金を返す為に働いている。だから皆お金を必死で貯めて、早くこの娼館を出ることばかり考えているけれども私は違う。
別に私はアレックス王子にこの店に売られたわけでもないし、借金があるわけでもない。ただ行く宛も無いし、正直に言えば私はこの仕事が気に入ってる。
好きなことをして、その上お金まで貰えるのだからこんなにありがたいことはない。
まぁ、中には相手をするのも嫌な男性客もいるけれども、それでも運が良ければ自分好みの男性のお相手をすることが出来るのだからこんなに楽しいことは無い。
だからなのだろう。
私の指名率はこの店で一番高く、今ではアレックス王子の予想通りにナンバーワンに上り詰めることが出来たのは。
とにかく、今の私に取ってこの仕事はまさに転職だったのだ―。
****
この召喚で働き始めてから、一ヶ月程経過した時の事だった。
私達娼婦は夜に働き、明け方から眠る…それが当たりまえの生活だった。
そして私も昨夜は深夜3時までお客をとり、眠りについたのは午前4時を過ぎたあたりだった。
それは突然起こったのだ―。
『やめておくれっ!ここは私の大切な店なのよっ!』
『何が大切な店だっ!いかがわしい、しかも違法な商売をしておきながら!とにかくこの店は摘発させてもらう!』
『キャアッ!だ、誰なのっ?!』
『いやあっ!出てってよっ!』
あちこちで騒ぎが起こっている。
「え…?い、一体何なの…?」
まだ半分寝ぼけ眼でベッドからムクリと起き上がった時―。
ガチャッ!!
突然乱暴に扉が開かれた、町の治安警察の制服を着た数名の男の人達が部屋の中になだれ込んできた。
「キャッアッ!と、突然何ですかっ?!」
驚きのあまり悲鳴をあげた。
「ここにもやはり娼婦がいたのか。全く…こんな森の中にいかがわしい店を作りおって…」
「どう見てもお前たちはウェイトレスには見えないしな」
「ああ、男の前でそんなだらしない姿を平気で見せることが出来るんだからな。そこの女!とにかくベッドから降りてこい!」
3人の警察官たちは失礼極まりない台詞を口々に言う。
「ちょっと待って!いくら警察官だとしても、あまりにも失礼じゃないっ!」
思わず食って掛かると口ひげを生やした人物が私を睨みつけてきた。
「うるさい!黙れっ!男を食い物にする娼婦めっ!この娼館は未成年を働かせている罪で摘発することが決定したのだ!早くここから出ていけ!」
何ですって?!
このベッドの床下には私が貯めたお金が隠されているのにっ?!
「いやよっ!出ていかないわっ!」
「四の五の言わずに出ていくんだっ!」
激しく私は首を振って抵抗すると、別の警察官に右腕を掴まれた。
「何するのよ~っ!!」
ガブッ!!
「ぎゃ~っ!!痛ってーっ!!」
警察官の悲鳴が狭い私の部屋に響き渡った―。
0
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる