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レベッカを探せ 3 〜キング一家の旅 5
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森の中を1時間程走らせた先に、その娼館はあった。
闇の中…高いフェンスで囲われた奥には3階建の古びた館が立っており、門柱に取り付けられたカンテラでぼんやりと照らし出された姿は何とも言えず不気味な佇まいを見せている。
「「「…」」」
俺たち3人は何ともおどろおどろしい建物を無言で見上げていた。
「のう、アレックスや…。私は娼館という場所には一度も足を運んだことが無いのだが…このように不気味な佇まいをしているのだろうか…?」
親父の声が心なしか震えている。
「そうだね、僕も娼館という場所は予備知識でしかないけれども…こんな恐ろし気な場所なのかい?もっと艶っぽい場所だとばかり思っていたよ‥」
「うるさいっ!2人とも!何故俺に娼館のイメージを尋ねてくるんだっ?!俺だってこんな場所に来るのは生まれて初めてだっ!」
「何だと?お前は娼館を利用したことが無いのか?」
「てっきり常連だとばかり思っていたよ」
クソ親父とクズ兄貴が目を丸くして俺を見る。こいつら…一体今まで俺をどんな目でみていやがったんだ?自慢じゃないが、俺はこんな場所を利用した事も娼婦を相手にしたことも一度も無い。そんな事をしなくても相手に不自由はしなかったからだ。
「とにかく、早くリーゼロッテを馬車から降ろせっ!目が覚める前にとっとと売り飛ばしてずらかるぞっ!」
「何だよ、偉そうにして。自分でリーゼロッテを運べばいいだろう?」
ぐうたら兄貴が口をとがらせてきた。
「ああ、そうだ。もともとリーゼロッテはお前の女だろう?だったら1人で彼女を運ぶのだ。我らを巻き込むな」
変態親父が尤もな口を利く。
「なんだとっ?!ふざけるなお前らっ!俺はなぁ、ずっと手綱を握りしめて馬を走らせてきたんだ。腕だって疲れてるんだよっ!2人して協力してこの女を運べ!」
冗談抜きで、俺の腕は疲労で限界だった。このうえ、リーゼロッテを娼館に運ぶなど不可能だ。
「いやだよ。僕は知らないよ」
「ああ、私もお断りだ。大体娼館に売るアイデアはもともとお前のアイデアだからな」
「そうそう、言い出しっぺが最後まで責任持つべきだよ。ね、父さん?」
「うむ、ランスの言う通りだ」
こ、こいつら…っ!やはり俺の知らない所でいつの間にか結託していやがったな?!きっと俺がいまだにレベッカの夫の座で収まっているのが気に食わないのだろう。男の嫉妬程醜いものは無いと言う事をこいつらは知らないのだろうか?
「うるさいっ!四の五の言わずに2人でこの女を運べっ!目を覚ましたらどうするんだっ?!」
「う~ん…」
その時、麻袋の中にいれられたリーゼロッテの呻く声が聞こえた。
ま、まずいっ!
「頼むっ!この通りだっ!リーゼロッテが目覚める前に早く娼館へ連れて行ってくれっ!」
情けないと思いつつ、俺は土下座して2人に頼みこんだ。
「全く…仕方ないなぁ…」
「うむ、そこまでされれば手を貸してやるか」
何とも尊大な言い方をする2人に激しい怒りを抱くも、俺は必至で耐えた。こんなところでリーゼロッテが目覚め、俺の計画が水の泡と化すのだけは絶対に避けなければならない。
「よし、それじゃ父さんはそっちを持ってくれるかい?」
「よし来た。では持ち上げるぞ」
「「せーのっ!」」
掛け声と同時に2人は麻袋を同時に担ぎあげた。
「よし!それじゃ2人とも!中へ入るぞっ!」
「「おーっ…」」
俺の掛け声とともに、ロリコン親父と軟弱兄貴が声を揃えて返事をした―。
闇の中…高いフェンスで囲われた奥には3階建の古びた館が立っており、門柱に取り付けられたカンテラでぼんやりと照らし出された姿は何とも言えず不気味な佇まいを見せている。
「「「…」」」
俺たち3人は何ともおどろおどろしい建物を無言で見上げていた。
「のう、アレックスや…。私は娼館という場所には一度も足を運んだことが無いのだが…このように不気味な佇まいをしているのだろうか…?」
親父の声が心なしか震えている。
「そうだね、僕も娼館という場所は予備知識でしかないけれども…こんな恐ろし気な場所なのかい?もっと艶っぽい場所だとばかり思っていたよ‥」
「うるさいっ!2人とも!何故俺に娼館のイメージを尋ねてくるんだっ?!俺だってこんな場所に来るのは生まれて初めてだっ!」
「何だと?お前は娼館を利用したことが無いのか?」
「てっきり常連だとばかり思っていたよ」
クソ親父とクズ兄貴が目を丸くして俺を見る。こいつら…一体今まで俺をどんな目でみていやがったんだ?自慢じゃないが、俺はこんな場所を利用した事も娼婦を相手にしたことも一度も無い。そんな事をしなくても相手に不自由はしなかったからだ。
「とにかく、早くリーゼロッテを馬車から降ろせっ!目が覚める前にとっとと売り飛ばしてずらかるぞっ!」
「何だよ、偉そうにして。自分でリーゼロッテを運べばいいだろう?」
ぐうたら兄貴が口をとがらせてきた。
「ああ、そうだ。もともとリーゼロッテはお前の女だろう?だったら1人で彼女を運ぶのだ。我らを巻き込むな」
変態親父が尤もな口を利く。
「なんだとっ?!ふざけるなお前らっ!俺はなぁ、ずっと手綱を握りしめて馬を走らせてきたんだ。腕だって疲れてるんだよっ!2人して協力してこの女を運べ!」
冗談抜きで、俺の腕は疲労で限界だった。このうえ、リーゼロッテを娼館に運ぶなど不可能だ。
「いやだよ。僕は知らないよ」
「ああ、私もお断りだ。大体娼館に売るアイデアはもともとお前のアイデアだからな」
「そうそう、言い出しっぺが最後まで責任持つべきだよ。ね、父さん?」
「うむ、ランスの言う通りだ」
こ、こいつら…っ!やはり俺の知らない所でいつの間にか結託していやがったな?!きっと俺がいまだにレベッカの夫の座で収まっているのが気に食わないのだろう。男の嫉妬程醜いものは無いと言う事をこいつらは知らないのだろうか?
「うるさいっ!四の五の言わずに2人でこの女を運べっ!目を覚ましたらどうするんだっ?!」
「う~ん…」
その時、麻袋の中にいれられたリーゼロッテの呻く声が聞こえた。
ま、まずいっ!
「頼むっ!この通りだっ!リーゼロッテが目覚める前に早く娼館へ連れて行ってくれっ!」
情けないと思いつつ、俺は土下座して2人に頼みこんだ。
「全く…仕方ないなぁ…」
「うむ、そこまでされれば手を貸してやるか」
何とも尊大な言い方をする2人に激しい怒りを抱くも、俺は必至で耐えた。こんなところでリーゼロッテが目覚め、俺の計画が水の泡と化すのだけは絶対に避けなければならない。
「よし、それじゃ父さんはそっちを持ってくれるかい?」
「よし来た。では持ち上げるぞ」
「「せーのっ!」」
掛け声と同時に2人は麻袋を同時に担ぎあげた。
「よし!それじゃ2人とも!中へ入るぞっ!」
「「おーっ…」」
俺の掛け声とともに、ロリコン親父と軟弱兄貴が声を揃えて返事をした―。
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