88 / 194
アマゾナの物語 1
しおりを挟む
私はアマゾナ。最近村ではちょっとしたトラブルが起こっていた―。
朝6時―
「アマゾナさんっ!来て下さいっ!」
自分の店、『アマゾナのお宿』の食堂の開店準備をしていると、隣村に住む住人が店の中に駆け込んできた。彼女は隣村『マザーキッズ』の若き村長代理人を務めるジルだ。
「どうしたのさ、ジル」
テーブルを台拭きで拭きながら尋ねるとジルはハアハア息を切らせながら言う。
「ジル、あんたまさか走ってここまでやって来たのかい?」
「いいえ、途中まで村の住人に乗せてもらいました。彼女は畑に行く途中だったので」
この『アルト』の村から『マザーキッズ』の村までの距離は約3Km。村の中間地点に彼女たちの畑があるのだ。
「まさか、そこから走ってきたのかい?」
「いえ、走ってきたのは村に入ってからです。それまでは歩いてきましたよ」
「そうかい。とりあえず水でも飲みなよ」
コップに水をくんでジルの前に置いてやった。
「ありがとうございます」
ジルは余程喉が乾いていたのか、コップを握りしめると一気飲みした。そしてダンッと勢いづけて空になったコップをテーブルの上に置く。
「何だい?いつも温厚なジルにしては随分苛ついているじゃないか?」
「ええ。そうなんですよっ!聞いて下さい!新しく住人としてやってきた人の話ですよ!」
「あぁ…あの女か…」
腕組して私はその女の事を思い浮かべた。今から約半月ほど前にボロボロで泥まみれの男か女かも分からない人物が靴も履かずにふらりとこの村に現れたのだ。
当然この村の住人たちは気味悪がり、私の元に報告にやってきたのだ…。
****
その人物は広場の真ん中で倒れていた。
「見て下さい、アマゾナ。この小汚い身なりの人間を」
「フラフラと村の入り口から入ってきたところで突然バタリと倒れたんですよ」
「見るからに不審人物でしょう?」
「気持ち悪いし、臭いしでたまったもんじゃない」
私をここへ連れてきた男衆達が次々に鼻をつまみながら文句を言ってくる。確かにここに立っているだけで強烈な匂いを放っている。私は鼻をつまみながらその人物に近づき、手頃な棒きれを拾い上げるとボサボサに伸びた長い髪の毛を棒ですくい上げて顔を確認してみた。
「何だい?これは女じゃないか?」
「ええ?!女ですか?!この小汚いのがっ?!」
「ああ、そうだよ。まずはこの臭い匂いを何とかしないといけないね。お前達、台車と女達を呼んできてくれ。ついでに新しい着替えもいるね」
「アマゾナ、どうするつもりですか?」
「まずはこの女を露天風呂に連れて行くよ」
すると男衆は談笑を始めた。
「ああ、あの『ドラゴンの湯』ですね?」
「本当にあの旅人たちには感謝しかないな」
「ああ、彼らのお陰で『露天風呂』なるものを知って観光名所になったしな」
「お陰で村が潤ったよ」
うん、まさにレベッカとミラージュ、そしてついでサミュエル皇子には感謝しか無い。この村がここまで発展出来たのは彼女たちのお陰だ。
「それじゃすぐに準備しますよ!」
男衆はバラバラと散っていった―。
「これが例の女ですか?」
「それにしても臭すぎるわ…」
「早いとこさっぱりさせないと」
「目を覚まさないかしら…」
集まってきた女達が遠巻きに倒れている女を見ている。そこで私は先程拾っておいた棒で女の身体をつついてみた。
すると…
「う~ん…」
うめき声がして、女がムクリと起き上がった。
「あ…ここは…?」
女はキョロキョロ辺りを見渡した。
「気付いたかい?ここは『アルト』って村さ。あんた、名前は何て言うんだい?」
すると女は臭い匂いを撒き散らしながら立ち上がった。
「私?私の名前はリーゼロッテよ」
その態度は随分高飛車だった―。
朝6時―
「アマゾナさんっ!来て下さいっ!」
自分の店、『アマゾナのお宿』の食堂の開店準備をしていると、隣村に住む住人が店の中に駆け込んできた。彼女は隣村『マザーキッズ』の若き村長代理人を務めるジルだ。
「どうしたのさ、ジル」
テーブルを台拭きで拭きながら尋ねるとジルはハアハア息を切らせながら言う。
「ジル、あんたまさか走ってここまでやって来たのかい?」
「いいえ、途中まで村の住人に乗せてもらいました。彼女は畑に行く途中だったので」
この『アルト』の村から『マザーキッズ』の村までの距離は約3Km。村の中間地点に彼女たちの畑があるのだ。
「まさか、そこから走ってきたのかい?」
「いえ、走ってきたのは村に入ってからです。それまでは歩いてきましたよ」
「そうかい。とりあえず水でも飲みなよ」
コップに水をくんでジルの前に置いてやった。
「ありがとうございます」
ジルは余程喉が乾いていたのか、コップを握りしめると一気飲みした。そしてダンッと勢いづけて空になったコップをテーブルの上に置く。
「何だい?いつも温厚なジルにしては随分苛ついているじゃないか?」
「ええ。そうなんですよっ!聞いて下さい!新しく住人としてやってきた人の話ですよ!」
「あぁ…あの女か…」
腕組して私はその女の事を思い浮かべた。今から約半月ほど前にボロボロで泥まみれの男か女かも分からない人物が靴も履かずにふらりとこの村に現れたのだ。
当然この村の住人たちは気味悪がり、私の元に報告にやってきたのだ…。
****
その人物は広場の真ん中で倒れていた。
「見て下さい、アマゾナ。この小汚い身なりの人間を」
「フラフラと村の入り口から入ってきたところで突然バタリと倒れたんですよ」
「見るからに不審人物でしょう?」
「気持ち悪いし、臭いしでたまったもんじゃない」
私をここへ連れてきた男衆達が次々に鼻をつまみながら文句を言ってくる。確かにここに立っているだけで強烈な匂いを放っている。私は鼻をつまみながらその人物に近づき、手頃な棒きれを拾い上げるとボサボサに伸びた長い髪の毛を棒ですくい上げて顔を確認してみた。
「何だい?これは女じゃないか?」
「ええ?!女ですか?!この小汚いのがっ?!」
「ああ、そうだよ。まずはこの臭い匂いを何とかしないといけないね。お前達、台車と女達を呼んできてくれ。ついでに新しい着替えもいるね」
「アマゾナ、どうするつもりですか?」
「まずはこの女を露天風呂に連れて行くよ」
すると男衆は談笑を始めた。
「ああ、あの『ドラゴンの湯』ですね?」
「本当にあの旅人たちには感謝しかないな」
「ああ、彼らのお陰で『露天風呂』なるものを知って観光名所になったしな」
「お陰で村が潤ったよ」
うん、まさにレベッカとミラージュ、そしてついでサミュエル皇子には感謝しか無い。この村がここまで発展出来たのは彼女たちのお陰だ。
「それじゃすぐに準備しますよ!」
男衆はバラバラと散っていった―。
「これが例の女ですか?」
「それにしても臭すぎるわ…」
「早いとこさっぱりさせないと」
「目を覚まさないかしら…」
集まってきた女達が遠巻きに倒れている女を見ている。そこで私は先程拾っておいた棒で女の身体をつついてみた。
すると…
「う~ん…」
うめき声がして、女がムクリと起き上がった。
「あ…ここは…?」
女はキョロキョロ辺りを見渡した。
「気付いたかい?ここは『アルト』って村さ。あんた、名前は何て言うんだい?」
すると女は臭い匂いを撒き散らしながら立ち上がった。
「私?私の名前はリーゼロッテよ」
その態度は随分高飛車だった―。
0
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる