559 / 566
第9章 7 不機嫌な理由
しおりを挟む
「新作スイーツ?ひょっとしてフランシスが作ったの?」
ヒルダは目を丸くした。
「あ、ああ。そうなんだ。実は今料理学校へ通いながら家の手伝いをしているんだけど、学校の課題でオリジナルスイーツを作って発表しなくてはならなくて…もしよければヒルダに協力してもらえれば…と思ってね」
フランシスは何処か恥ずかしそうだった。
「でも…私なんかでいいの?もっと適任な人がいるじゃないの。マドレーヌはどう?」
「マドレーヌ?ああ、駄目駄目。俺のライバルみたいな相手に手の内を明かすわけにはいかないだろう?第一恋人がいる相手を誘えるはず無いじゃないか」
「そうなの…?分かったわ。明日は大学の講義は丁度お休みだし…12時にこのお店にくればいいのね?」
「来てくれるのか?ありがとう!そうだ、スイーツだけじゃない。昼も用意しておくよ。こうみえて俺、今はこのレストランの賄料理担当しているんだ」
「本当?凄いわね。それじゃ明日、楽しみにしているわ」
「た、楽しみ…?それは嬉しい言葉だな」
ヒルダはスイーツと料理を楽しみにしていると言う意味で言ったのだが、フランシスは違う意味で取っていた。てっきり自分に誘われたことを楽しみにしているのかと思い込んでいたのだ。
「また明日ね」
「あ、ああ。また明日」
ヒルダが手を振って店を出るのをフランシスは頬を赤らめて見守っていた―。
****
「すみません、お待たせ致しました」
扉を開けて外へ出ると海を眺めて立っているノワールが振り返った。
「ああ、用事は済んだのか?」
「はい、終わりました」
「そうか、なら帰ろうか?」
「はい」
バス停へ向かいながらノワールはヒルダに話しかけてきた。
「ヒルダ、明日は大学の講義が休みだろう?もし何も用事がなければまたあの古本屋へ行かないか?」
ノワールの言葉にヒルダは謝罪した。
「申し訳ございません…明日は用事が出来てしまったのです」
「用事?」
ノワールは眉を潜めた。
「はい、実は先程のウェイターの彼…フランシスに新作スイーツを作ってみたから私に食べてもらいたいと誘われたのです。ついでにお昼も誘われました」
「…そうなのか…」
その言葉を聞いたノワールは再び不機嫌そうに呟くと黙り込んでしまった。
(ノワール様…まただわ…。私、また何かノワール様の機嫌を損ねるような事を言ってしまったのかしら…)
ヒルダは全く気付いていなかった。ノワールが自分を愛していることを。
そしてフランシスに嫉妬してるということを。
そして、2人は気まずい雰囲気のまま停留所に到着すると無言でバスを待っていた。
「…」
バスを待ちながらヒルダはそっと隣に立っている背の高いノワールを見上げた。
街灯に照らされたノワールの髪が金色に輝いてる。
「ヒルダ」
ノワールはヒルダの方を見ずに声を掛けてきた。
「はい」
「あの男と付き合っていたことでもあるのか?」
「え?」
「い、いえ。まさか…単なる高校生の時の同級生です。それに卒業してから会うのも初めてですから」
「そうか…だが、彼の方は…」
そこでノワールは言葉を切った。
「あの、ノワール様…?」
「いや、何でも無い」
そこまで話をした時、丁度バスがやってくると停留所に停車した。
「よし…乗ろう」
「はい」
そして2人はバスに乗り込むとすぐに扉はしまり、エンジン音と共に走り出した。
「…」
隣同士の座席に座ったものの、やはりノワールは無言でバスに乗っている。仕方がないのでヒルダは窓から外の景色を眺めていた。
そんなヒルダを横目でチラリと見ながらノワールは思った。
やはり、自分は口下手な男だ―と。
ヒルダは目を丸くした。
「あ、ああ。そうなんだ。実は今料理学校へ通いながら家の手伝いをしているんだけど、学校の課題でオリジナルスイーツを作って発表しなくてはならなくて…もしよければヒルダに協力してもらえれば…と思ってね」
フランシスは何処か恥ずかしそうだった。
「でも…私なんかでいいの?もっと適任な人がいるじゃないの。マドレーヌはどう?」
「マドレーヌ?ああ、駄目駄目。俺のライバルみたいな相手に手の内を明かすわけにはいかないだろう?第一恋人がいる相手を誘えるはず無いじゃないか」
「そうなの…?分かったわ。明日は大学の講義は丁度お休みだし…12時にこのお店にくればいいのね?」
「来てくれるのか?ありがとう!そうだ、スイーツだけじゃない。昼も用意しておくよ。こうみえて俺、今はこのレストランの賄料理担当しているんだ」
「本当?凄いわね。それじゃ明日、楽しみにしているわ」
「た、楽しみ…?それは嬉しい言葉だな」
ヒルダはスイーツと料理を楽しみにしていると言う意味で言ったのだが、フランシスは違う意味で取っていた。てっきり自分に誘われたことを楽しみにしているのかと思い込んでいたのだ。
「また明日ね」
「あ、ああ。また明日」
ヒルダが手を振って店を出るのをフランシスは頬を赤らめて見守っていた―。
****
「すみません、お待たせ致しました」
扉を開けて外へ出ると海を眺めて立っているノワールが振り返った。
「ああ、用事は済んだのか?」
「はい、終わりました」
「そうか、なら帰ろうか?」
「はい」
バス停へ向かいながらノワールはヒルダに話しかけてきた。
「ヒルダ、明日は大学の講義が休みだろう?もし何も用事がなければまたあの古本屋へ行かないか?」
ノワールの言葉にヒルダは謝罪した。
「申し訳ございません…明日は用事が出来てしまったのです」
「用事?」
ノワールは眉を潜めた。
「はい、実は先程のウェイターの彼…フランシスに新作スイーツを作ってみたから私に食べてもらいたいと誘われたのです。ついでにお昼も誘われました」
「…そうなのか…」
その言葉を聞いたノワールは再び不機嫌そうに呟くと黙り込んでしまった。
(ノワール様…まただわ…。私、また何かノワール様の機嫌を損ねるような事を言ってしまったのかしら…)
ヒルダは全く気付いていなかった。ノワールが自分を愛していることを。
そしてフランシスに嫉妬してるということを。
そして、2人は気まずい雰囲気のまま停留所に到着すると無言でバスを待っていた。
「…」
バスを待ちながらヒルダはそっと隣に立っている背の高いノワールを見上げた。
街灯に照らされたノワールの髪が金色に輝いてる。
「ヒルダ」
ノワールはヒルダの方を見ずに声を掛けてきた。
「はい」
「あの男と付き合っていたことでもあるのか?」
「え?」
「い、いえ。まさか…単なる高校生の時の同級生です。それに卒業してから会うのも初めてですから」
「そうか…だが、彼の方は…」
そこでノワールは言葉を切った。
「あの、ノワール様…?」
「いや、何でも無い」
そこまで話をした時、丁度バスがやってくると停留所に停車した。
「よし…乗ろう」
「はい」
そして2人はバスに乗り込むとすぐに扉はしまり、エンジン音と共に走り出した。
「…」
隣同士の座席に座ったものの、やはりノワールは無言でバスに乗っている。仕方がないのでヒルダは窓から外の景色を眺めていた。
そんなヒルダを横目でチラリと見ながらノワールは思った。
やはり、自分は口下手な男だ―と。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる