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第8章 19 古書店
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「ここは…?」
ヒルダがノワールに連れて来られたのは古書店だった。
「ここは古書店だ。ここの本屋は少し変わっているんだ。中へ入ろう」
ノワールは看板を見上げた。
「は、はい」
ヒルダが返事をすると、ノワールはドアノブを掴んで開けて中へと入っていく。ヒルダもその後に続いた。
本屋の中は古くなった紙の匂いと共に…。
「え…?コーヒーの香り…?」
ヒルダは怪訝そうに呟くとノワールが言った。
「この店はただの古書店じゃないんだ。ここで買った本を読める喫茶スペースが付いている。営業時間も長くて0時まで開いているんだ」
「すごいですね…」
ノワールの説明を聞きながらヒルダは店の中を見渡した。店内は2階建てになっており、吹き抜けになっている。壁一面の棚には本が処狭しと並べられ、店内の中央には重厚そうな木のらせん階段で上に登れるようになっていた。天井には空調ファンが取り付けられており、ゆっくり回っていた。そして店内の奥に喫茶スペースがあった。
店内には10名程の客の姿もある。
「ヒルダは本が好きだろう?ここは新書の取り扱いが無い店だ。今では絶版になっている珍しい本が手に入る時もあるんだ」
「素敵です…こんな店、初めて来ました」
ヒルダは頬を染めながら感心したかのように本棚に近付いて行く。
(やはりヒルダをここへ連れて来て正解だったな…あんなに嬉しそうにしている…)
ノワールはこれからヒルダが喜ぶ事なら何でもしてあげようと思っていたのだ。それがエドガーの犯した罪の自分が出来る贖罪だと考えていたからであった。
「ヒルダ、欲しい本が見つかったら声を掛けてくれ。俺も本を探しているから」
「はい、ありがとうございます」
笑みを浮かべて頭を下げるヒルダを見ると、ノワールも本棚から興味のある本を探し始めた―。
30分後―
ノワールが本をペラペラとめくっていると背後から声を掛けられた。
「ノワール様」
振り向くと背後にヒルダが立っている。両手には大事そうに抱えた1冊の本がある。
「決まったのか?」
「はい、決まりました」
ヒルダは嬉しそうに微笑む。
「そうか。俺も丁度決まったところなんだ。ヒルダ、本を貸してくれ」
ノワールは右手をヒルダに差し出した。
「え…?はい…」
本を差し出すとノワールは受け取った。
「2人分、まとめて会計しよう」
その言葉にヒルダは慌てた。
「な、何を仰っているのですか?本位自分で買えますから…」
するとノワールは言った。
「本位、俺に買わせてくれ」
「は、はい…ありがとうございます」
「会計はあそこにある喫茶コーナーでするんだ。ついでに何か飲み物を買おう」
「はい」
そしてヒルダとノワールは喫茶コーナーへと向かった。
****
「2冊で銅貨8枚になります」
白いひげを蓄えた初老の店主がノワールに告げた。
「他に飲物をくれませんか?」
ノワールの言葉に店主はカウンターからメニュー表を取り出した。
「ヒルダ、どれにする」
ノワールに声を掛けられ、ヒルダは傍に来るとメニュー表を見つめた。
「それでは私はアップルティーにします」
「俺はコーヒーにしよう」
「はい、では飲物2つ追加で銀貨1枚になりますね」
その言葉にノワールは銀貨1枚を店主に渡した。
「空いている席に掛けてお待ち下さい」
店主に言われ、ノワールは会計済みの本を手に取ると窓際のテーブルを指さし、ヒルダに声を掛けた。
「あの席に行こう」
「はい」
そして2人は向かい合わせに着席した―。
ヒルダがノワールに連れて来られたのは古書店だった。
「ここは古書店だ。ここの本屋は少し変わっているんだ。中へ入ろう」
ノワールは看板を見上げた。
「は、はい」
ヒルダが返事をすると、ノワールはドアノブを掴んで開けて中へと入っていく。ヒルダもその後に続いた。
本屋の中は古くなった紙の匂いと共に…。
「え…?コーヒーの香り…?」
ヒルダは怪訝そうに呟くとノワールが言った。
「この店はただの古書店じゃないんだ。ここで買った本を読める喫茶スペースが付いている。営業時間も長くて0時まで開いているんだ」
「すごいですね…」
ノワールの説明を聞きながらヒルダは店の中を見渡した。店内は2階建てになっており、吹き抜けになっている。壁一面の棚には本が処狭しと並べられ、店内の中央には重厚そうな木のらせん階段で上に登れるようになっていた。天井には空調ファンが取り付けられており、ゆっくり回っていた。そして店内の奥に喫茶スペースがあった。
店内には10名程の客の姿もある。
「ヒルダは本が好きだろう?ここは新書の取り扱いが無い店だ。今では絶版になっている珍しい本が手に入る時もあるんだ」
「素敵です…こんな店、初めて来ました」
ヒルダは頬を染めながら感心したかのように本棚に近付いて行く。
(やはりヒルダをここへ連れて来て正解だったな…あんなに嬉しそうにしている…)
ノワールはこれからヒルダが喜ぶ事なら何でもしてあげようと思っていたのだ。それがエドガーの犯した罪の自分が出来る贖罪だと考えていたからであった。
「ヒルダ、欲しい本が見つかったら声を掛けてくれ。俺も本を探しているから」
「はい、ありがとうございます」
笑みを浮かべて頭を下げるヒルダを見ると、ノワールも本棚から興味のある本を探し始めた―。
30分後―
ノワールが本をペラペラとめくっていると背後から声を掛けられた。
「ノワール様」
振り向くと背後にヒルダが立っている。両手には大事そうに抱えた1冊の本がある。
「決まったのか?」
「はい、決まりました」
ヒルダは嬉しそうに微笑む。
「そうか。俺も丁度決まったところなんだ。ヒルダ、本を貸してくれ」
ノワールは右手をヒルダに差し出した。
「え…?はい…」
本を差し出すとノワールは受け取った。
「2人分、まとめて会計しよう」
その言葉にヒルダは慌てた。
「な、何を仰っているのですか?本位自分で買えますから…」
するとノワールは言った。
「本位、俺に買わせてくれ」
「は、はい…ありがとうございます」
「会計はあそこにある喫茶コーナーでするんだ。ついでに何か飲み物を買おう」
「はい」
そしてヒルダとノワールは喫茶コーナーへと向かった。
****
「2冊で銅貨8枚になります」
白いひげを蓄えた初老の店主がノワールに告げた。
「他に飲物をくれませんか?」
ノワールの言葉に店主はカウンターからメニュー表を取り出した。
「ヒルダ、どれにする」
ノワールに声を掛けられ、ヒルダは傍に来るとメニュー表を見つめた。
「それでは私はアップルティーにします」
「俺はコーヒーにしよう」
「はい、では飲物2つ追加で銀貨1枚になりますね」
その言葉にノワールは銀貨1枚を店主に渡した。
「空いている席に掛けてお待ち下さい」
店主に言われ、ノワールは会計済みの本を手に取ると窓際のテーブルを指さし、ヒルダに声を掛けた。
「あの席に行こう」
「はい」
そして2人は向かい合わせに着席した―。
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