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第8章 7 遠い記憶
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それからのヒルダは睡眠薬の大量摂取の後遺症のせいか、ウトウトする時間が暫く続いた。時折、目を開ければ必ず誰かしらがヒルダの側にいた。それはハリスだった事もマーガレットの時もある。カミラが側に付いていたこともあった。つまり入院しているヒルダは部屋で決して1人になることは無かったのだ。
それはヒルダが昏睡状態から目覚めて3日目の事だった―。
(あ…私…また眠っていたのね…)
ヒルダはふと病室のベッドの上で目が覚めた。そして人の気配を感じ、視線を移すとそこには真剣な表情で本を読んでいるノワールの姿が目に入った。窓からは太陽が差し込み、ノワールの金の髪をキラキラと輝かせていた。
(ノ…ワール様…?)
その時、ヒルダはふと思った。
(随分昔に…似たような光景を見た気がするわ…)
それはヒルダがうんと幼かった頃…美しいバラの見える庭で真剣に本を読んでいる美しい少年をヒルダは目にした。彼の髪は太陽に照らされてキラキラと輝いていた。ヒルダにはその少年がまるで天から降りてきた天使のように思えた。
(天使様が…本を読んでいるわ…)
そしてヒルダは天使と話がしたくて声を掛けた。
「ねぇ、ここで何してるの?」
と―。
(そうだったわ…。あまり良く覚えてはいないけど…あの時の光景に似ている…)
何故そんな昔の記憶を思い出したのかヒルダには不思議でならなかった。今の今まで忘れていた記憶だったはずなのに…。
その時―。
「ヒルダ、目が覚めたのか?」
ヒルダの視線に気付いたノワールが声を掛けてきた。
「は、はい…何故ノワール様が…?」
するとノワールが言った。
「ヒルダの両親もカミラも一晩中ヒルダの様子を見るために病室で見守っているんだ。だから交代でヒルダを見守ることにして、俺も申し出たんだ。ヒルダの病室に付き添う事を。3人共快諾してくれたよ」
しかし、真実は違った。ハリスもマーガレットもカミラもノワールがヒルダの病室に付き添うことを反対していた。ベッドで伏しているヒルダの側に若い男性を置いておきたくは無かったという事と、事情ははどうであれ、傍から見ればヒルダはエドガーが原因で自殺未遂を図ったことになる。なのでエドガーの兄であるノワールを側には置かせたくは無かったのだ。けれどもノワールは必死になって頼み込み、やっとヒルダを見守る許可を得ることが出来たのだった。
「ノワール様を…見ていたら…随分子供の頃を…思い出しました…」
ヒルダは弱々しい声で言った。
「子供の頃…?どんな思い出なんだ?」
ノワールは穏やかな声でヒルダに尋ねてきた。それがヒルダにとっては不思議であった。今までのノワールは…どこか冷たい口調でヒルダに接してきた。なのに今はそんな素振りは全く見せていない。
(私が…きっと今は弱っているから…ね…)
「多分…あれは私の誕生パーティーか何かの日で…大勢お客様が来ていたんです…。でも退屈だった私は…自分の好きなバラの庭へ行って…そこで天使のような男の子を見たんです…その子は…今のノワール様のように…真剣に本を読んでいました…。私はどうしてもその美しい男の子に話しかけたくなって…『ここで何してるの?』って話しかけたんです…え…?ノワール様…?」
ヒルダはその時になって気がついた。何故ならノワールが驚いたように目を見開いて自分を見つめていたからだ。
「ヒルダ…お前…その事、覚えていたのか…?」
ノワールは声を震わせてヒルダに尋ねた―。
それはヒルダが昏睡状態から目覚めて3日目の事だった―。
(あ…私…また眠っていたのね…)
ヒルダはふと病室のベッドの上で目が覚めた。そして人の気配を感じ、視線を移すとそこには真剣な表情で本を読んでいるノワールの姿が目に入った。窓からは太陽が差し込み、ノワールの金の髪をキラキラと輝かせていた。
(ノ…ワール様…?)
その時、ヒルダはふと思った。
(随分昔に…似たような光景を見た気がするわ…)
それはヒルダがうんと幼かった頃…美しいバラの見える庭で真剣に本を読んでいる美しい少年をヒルダは目にした。彼の髪は太陽に照らされてキラキラと輝いていた。ヒルダにはその少年がまるで天から降りてきた天使のように思えた。
(天使様が…本を読んでいるわ…)
そしてヒルダは天使と話がしたくて声を掛けた。
「ねぇ、ここで何してるの?」
と―。
(そうだったわ…。あまり良く覚えてはいないけど…あの時の光景に似ている…)
何故そんな昔の記憶を思い出したのかヒルダには不思議でならなかった。今の今まで忘れていた記憶だったはずなのに…。
その時―。
「ヒルダ、目が覚めたのか?」
ヒルダの視線に気付いたノワールが声を掛けてきた。
「は、はい…何故ノワール様が…?」
するとノワールが言った。
「ヒルダの両親もカミラも一晩中ヒルダの様子を見るために病室で見守っているんだ。だから交代でヒルダを見守ることにして、俺も申し出たんだ。ヒルダの病室に付き添う事を。3人共快諾してくれたよ」
しかし、真実は違った。ハリスもマーガレットもカミラもノワールがヒルダの病室に付き添うことを反対していた。ベッドで伏しているヒルダの側に若い男性を置いておきたくは無かったという事と、事情ははどうであれ、傍から見ればヒルダはエドガーが原因で自殺未遂を図ったことになる。なのでエドガーの兄であるノワールを側には置かせたくは無かったのだ。けれどもノワールは必死になって頼み込み、やっとヒルダを見守る許可を得ることが出来たのだった。
「ノワール様を…見ていたら…随分子供の頃を…思い出しました…」
ヒルダは弱々しい声で言った。
「子供の頃…?どんな思い出なんだ?」
ノワールは穏やかな声でヒルダに尋ねてきた。それがヒルダにとっては不思議であった。今までのノワールは…どこか冷たい口調でヒルダに接してきた。なのに今はそんな素振りは全く見せていない。
(私が…きっと今は弱っているから…ね…)
「多分…あれは私の誕生パーティーか何かの日で…大勢お客様が来ていたんです…。でも退屈だった私は…自分の好きなバラの庭へ行って…そこで天使のような男の子を見たんです…その子は…今のノワール様のように…真剣に本を読んでいました…。私はどうしてもその美しい男の子に話しかけたくなって…『ここで何してるの?』って話しかけたんです…え…?ノワール様…?」
ヒルダはその時になって気がついた。何故ならノワールが驚いたように目を見開いて自分を見つめていたからだ。
「ヒルダ…お前…その事、覚えていたのか…?」
ノワールは声を震わせてヒルダに尋ねた―。
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