嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈　

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第８章　4　ノワールの胸騒ぎ

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　深夜２時―

ノワールはどうにもヒルダの事が気がかりで執筆活動も手に着かず、全くねる事も出来なかった。ベッドに潜りこんだものの頭は冴えわたり、言い知れぬ不安だけが込み上げて来る。

（何故だ…？何故こんなにも胸騒ぎがするんだ？カミラだってついていてくれているのに、それでも不安でたまらない…くそっ！こんなことなら無理を言ってリビングでも構わないから泊まらせて貰えば良かった…！）

そしてノワールは決めた。明日、カミラが出勤する前に絶対にヒルダの元へ行こうと…。

＊＊＊＊

　翌朝―

「ヒルダ様…どうなさったのかしら？いつもならとっくに起きて来る時間なのに…」

カミラはリビングの壁掛け時計を見ながらソワソワしていた。時刻は７時半を少し過ぎている。いつもならどんなに遅くても７時前には起きて来るヒルダなのに、今朝はそんな素振りすら無い。

「具合でも悪いのかしら…」

心配になったカミラはヒルダの部屋へ行くことにした。

コンコン

「ヒルダ様、もう７時半になりますが…具合でも悪いのでしょうか？」

しかし、無反応である。カミラは思い切って部屋の扉を開けてみた。

「ヒルダ様…失礼致します…」

カチャリ…

そっと扉を開け、カミラは部屋の中へ入った。ベッドからはヒルダの金色の髪の毛が見えている。

「ヒルダ様？具合でも悪いのですか？」

しかし、ヒルダは深い眠りにでもついているのか身動きすらしない。

（何…？何だか様子がおかしいわ…）

カミラは異様な雰囲気を感じ取り、足を震わせながらヒルダのベッドへと近付いていく。

「ヒルダ様…？」

そしてベッドの中をのぞき込むとそこにはヒルダが目を閉じて眠っている。しかし、何だか様子がおかしい。

「ヒルダ様、朝ですが…」

「…」

しかし、ヒルダは全く無反応でまるで人形の様になっている。

「ヒルダ様ッ？！」

カミラは慌てて激しく揺すぶってもそれでもヒルダは動かない。そして気付いた。
ヒルダの息は今にも消えてしまうのではないかと思う程弱くなっている。

「ヒルダ様ッ！！」

カミラは余りの恐怖に叫ぶようにヒルダの名を呼び…気付いた。ベッドの傍らに置かれたダストボックスに手のひらサイズの真四角の紙が沢山捨てられている。そしてサイドテーブルの水差しが空になっている。

「な、何…？この状況は…」

カミラがガタガタ震えながら呟いた時―。

コンコンコンコンコンッ！

ドアノッカーが激しく叩かれる音が部屋に響いた。

「！」

カミラは一瞬ビクリとしたが慌てて扉へ向かい、ドアアイを覗き込んで驚いた。訪ねて来たのはノワールだったからだ。カミラは急いで扉を開けると、ノワールが挨拶も無しに言った。

「カミラッ！ヒルダは…ヒルダはどうしてるっ？！」

ノワールは余程急いで駆けつけて来たのだろう。ハアハアと肩で荒い息を吐いている。

「あ…そ、それが…ヒルダ様は…」

カミラが真っ青な顔で震えているのを見て、ノワールはすぐに行動した。

「邪魔するぞっ！」

そしてアパートメントの中に上がり込むと急いでヒルダの部屋を目指した。

「ヒルダッ！」

ノワールはベッドで深い眠りに就いているヒルダに駆け寄った。

「ヒルダッ！しっかりしろっ！目を覚ませっ！」

ノワールはヒルダを激しく揺すぶるが、やはり反応は無い。すると部屋の中に入って来たカミラが震えながら言った。

「今朝…起床時間になってもヒルダ様が起きて来なくて…それでお部屋に様子を見にきてみれば…既にこの状況だったのです…」

「ヒルダ…ッ！」

その時、ノワールは床の上に１枚の紙片が落ちていることに気付いた。

「これは…？」

するとカミラが言った。

「その紙ですが…ダストボックスに大量に入っていたんです」

「え…？」

そしてノワールは見た。ダストボックスの中に相当数の四角い紙が捨てられているのを。

「ま、まさか…ヒルダ…？」

ノワールは呆然とベッドの上のヒルダを見つめた―。

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