510 / 566
第7章 5 エドガーの迎え
しおりを挟む
「お帰りなさいませ、ヒルダ様」
カミラは早速玄関までヒルダを出迎えた。
「ただいま、遅くなってごめんなさい」
ヒルダはコートを脱ぎながらカミラに謝った。
「いえ、大丈夫です。エドガー様と会ってらしたのですよね?」
「ええ、そうなの。アルバイト先を出たところで私の仕事が終わるのを待ってらしたようなの。寒空の下で…悪いことをしてしまったわ」
「そう言えば雪になってきましたね。寒かったのではありませんか?お部屋で温かい紅茶でも飲まれますか?」
「ええ、そうね。ありがとう。部屋に荷物を置いたらすぐリビングに行くわ」
「では私は紅茶の準備をしておきますね」
「ええ。すぐに行くわ」
ヒルダは荷物を持って自室へ行き、カミラは紅茶を淹れにリビングへと向かった―。
****
薪ストーブがパチパチと燃える温かな部屋でヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。
「美味しいわ…それに何だか身体もすごく温まる感じがするわ」
ヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲みながら笑みを浮かべた。
「はい、実はその紅茶にはブランデーが入っているのです」
「まぁ。そうだったの?どうりでほのかにアルコールの香りがすると思ったわ。とても美味しい…」
カミラは美味しそうに紅茶を飲むヒルダを見ながら尋ねた。
「ヒルダ様…エドガー様に…何か言われましたか?」
「え?特に何か言われたわけではないけれど…あ、そうだわ。もうお兄様では無く、名前で呼んで貰いたいと頼まれたのよ」
「名前で…ですか?」
「ええ、そうよ。後、明日は2人で一緒に出掛ける事になったの」
「そうなのですね。エドガー様は余程…」
そこまで言いかけてカミラは言葉を切った。
「余程…どうかしたの?」
「い、いえ。エドガー様はヒルダ様の事を大切に思われているのだと感じたのです」
「そうね…。私は本来ならお兄様に恨まれても良い立場なのに…。だから私はお兄様の頼みは何でも聞いてあげたいと思っているの。私はまだ一度もお兄様の役に立てたことが無かったから…」
「ヒルダ様…」
カミラは複雑な気持ちでヒルダの話を聞いていた―。
****
翌朝―。
カミラは仕事に行き、ヒルダは家事をしていた。食器の後片付けを済ませ、洗濯物をバスルームに干し終えた頃、ドアノッカーの音が部屋の中に響き渡った。
「きっとお兄様ね」
ヒルダはエプロンをつけたまま玄関へ向かい、ドアアイで外を確認するとやはりそこに立っていたのはエドガーだった。
ガチャリ
扉を開けるとそこにはエドガーが笑みを浮かべて立っていた。
「おはよう、ヒルダ。迎えに来たよ」
「おはようございます。エドガー様。もうすぐ家事が終わりますので少し上がってお待ちいただけますか?」
エドガーはヒルダに名前を呼ばれた事が嬉しく、笑みを浮かべるとそっとヒルダの髪に触れながら言った。
「あ、ああ…それじゃ上がらせて貰おうかな」
「はい、どうぞ上がって下さい」
ヒルダに案内されてエドガーはリビングに通されると、すでにそこにはお茶の用意がされていた。
薪ストーブの上で沸かしたお湯をポットに注ぎ入れ、ヒルダは紅茶を淹れている。
そんな姿をじっとエドガーは見つめながら、昨夜ノワールと交わした会話を思い返していた―。
カミラは早速玄関までヒルダを出迎えた。
「ただいま、遅くなってごめんなさい」
ヒルダはコートを脱ぎながらカミラに謝った。
「いえ、大丈夫です。エドガー様と会ってらしたのですよね?」
「ええ、そうなの。アルバイト先を出たところで私の仕事が終わるのを待ってらしたようなの。寒空の下で…悪いことをしてしまったわ」
「そう言えば雪になってきましたね。寒かったのではありませんか?お部屋で温かい紅茶でも飲まれますか?」
「ええ、そうね。ありがとう。部屋に荷物を置いたらすぐリビングに行くわ」
「では私は紅茶の準備をしておきますね」
「ええ。すぐに行くわ」
ヒルダは荷物を持って自室へ行き、カミラは紅茶を淹れにリビングへと向かった―。
****
薪ストーブがパチパチと燃える温かな部屋でヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。
「美味しいわ…それに何だか身体もすごく温まる感じがするわ」
ヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲みながら笑みを浮かべた。
「はい、実はその紅茶にはブランデーが入っているのです」
「まぁ。そうだったの?どうりでほのかにアルコールの香りがすると思ったわ。とても美味しい…」
カミラは美味しそうに紅茶を飲むヒルダを見ながら尋ねた。
「ヒルダ様…エドガー様に…何か言われましたか?」
「え?特に何か言われたわけではないけれど…あ、そうだわ。もうお兄様では無く、名前で呼んで貰いたいと頼まれたのよ」
「名前で…ですか?」
「ええ、そうよ。後、明日は2人で一緒に出掛ける事になったの」
「そうなのですね。エドガー様は余程…」
そこまで言いかけてカミラは言葉を切った。
「余程…どうかしたの?」
「い、いえ。エドガー様はヒルダ様の事を大切に思われているのだと感じたのです」
「そうね…。私は本来ならお兄様に恨まれても良い立場なのに…。だから私はお兄様の頼みは何でも聞いてあげたいと思っているの。私はまだ一度もお兄様の役に立てたことが無かったから…」
「ヒルダ様…」
カミラは複雑な気持ちでヒルダの話を聞いていた―。
****
翌朝―。
カミラは仕事に行き、ヒルダは家事をしていた。食器の後片付けを済ませ、洗濯物をバスルームに干し終えた頃、ドアノッカーの音が部屋の中に響き渡った。
「きっとお兄様ね」
ヒルダはエプロンをつけたまま玄関へ向かい、ドアアイで外を確認するとやはりそこに立っていたのはエドガーだった。
ガチャリ
扉を開けるとそこにはエドガーが笑みを浮かべて立っていた。
「おはよう、ヒルダ。迎えに来たよ」
「おはようございます。エドガー様。もうすぐ家事が終わりますので少し上がってお待ちいただけますか?」
エドガーはヒルダに名前を呼ばれた事が嬉しく、笑みを浮かべるとそっとヒルダの髪に触れながら言った。
「あ、ああ…それじゃ上がらせて貰おうかな」
「はい、どうぞ上がって下さい」
ヒルダに案内されてエドガーはリビングに通されると、すでにそこにはお茶の用意がされていた。
薪ストーブの上で沸かしたお湯をポットに注ぎ入れ、ヒルダは紅茶を淹れている。
そんな姿をじっとエドガーは見つめながら、昨夜ノワールと交わした会話を思い返していた―。
0
お気に入りに追加
726
あなたにおすすめの小説
家出少年ルシウスNEXT
真義あさひ
ファンタジー
簡単なあらすじ
新婚旅行中の大好きなお兄ちゃんの代わりに海辺の僻地ギルドに派遣された少年魔法剣士が凶悪なお魚さんモンスターを倒しつつ美味しいごはんにしてもぐもぐするお話。
◇◇◇
※全編通して飯テロにご注意ください。ほんとご注意ください
◇◇◇
【家出少年ルシウスNEXT】
お兄ちゃん大好きっ子なルシウス君は14歳。
おうちは魔法の大家でルシウス君も魔法剣士だった。
可愛い弟くんが兄を慕う姿に周りはほっこりしていたが、お兄ちゃん中心に世界を回しているルシウス君はちょっとアレな感じで心配しかない。
お兄ちゃんが結婚してようやくブラコン卒業かと周囲がホッとする中、兄夫婦の新婚旅行にくっついて行こうとしたルシウス君にパパがついに切れた。
「いい加減、兄離れせんかーい!!!」
「なんでそんな酷いこというの!? 父様なんてハゲてしまえばいい!」
「残念、うちはハゲ家系ではない!」
こんな面倒くさい弟が家にいては、ようやく結婚できたお兄ちゃんが新婚早々、離婚の危機である。
非モテで奥手なのに、頑張ってお見合いを繰り返してやっと見つけたお嫁さんを逃してはならない。
これは、ちょっとはお兄ちゃん以外にも目を向けなさいと強制的に旅に出されたルシウス君が冒険者となり、お兄ちゃんに会いたい・おうちかえりたいと泣きながらもシーフードモンスターたちを狩りまくって人助けや飯テロしながら最強伝説を作っていく物語。
ビフォー魔法剣士、ネクスト……?
◇◇◇
【続編 子爵少年ルシウスLEGEND】
後に聖剣の聖者、無欠のルシウスと呼ばれる男にも学生時代があった。
ひたすら、お魚さんモンスターと戦い続けた冒険者ギルドのココ村支部の日々から約二年後。
ルシウス君は子爵となり独立したがまだ十六歳。今年から学園の高等部に進学することになる。
可愛い甥っ子たんも生まれて毎日楽しく過ごせるかとウキウキしていたルシウス君だが、残念ながらほのぼのエンジョイスクールライフにはなりそうもなかった。
※ 「家出少年ルシウスNEXT」の続編。
※大人になったルシウス君様が見れるのは「王弟カズンの冒険前夜(後半から)」「聖女投稿、第二章以降」にて。
ちょっとアダルトな未来のお話は「ユキレラ」へ。
※更に幼い8歳児ルシウス君の登場する「夢見の女王」もよろしくお願いします!
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?
なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」
かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。
『お飾りの王妃』
彼に振り向いてもらうため、
政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。
アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。
そして二十五の歳。
病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。
苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。
しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。
何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。
だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。
もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。
自由に、好き勝手に……私は生きていきます。
戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。
ガチャテイマーはもふもふを諦めない。〜フェンリルを求めてガチャを回すがハズレのようです。代わりに来たもふもふをモスモスしたら幸運が訪れた〜
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
第一部ざまぁ編 完結
第二部スローライフ編 突入
主人公は妹と二人で暮らしていた。両親は仕事に行ったきり帰ってこず、残されたのはわずかに風と雨が凌げる家だけだった。
そんな彼らを襲ったのは妹の難病。
――魔力喰い
体の中にある魔力を少しずつ食らいつくと言われている。やがて体の中の魔力がなくなると、生命まで食らいついてしまうという病気。
妹を助けるためには、魔力を与える必要があった。
だが、兄にはそんな力がなかった。兄のスキルは【ガチャテイム】。魔物を倒した時に稀に手に入るコインを使って、魔物をテイムするスキル。
力もなく、金もない主人公はどうすることもできず、パーティーの荷物持ちとしてお金を稼いでいた。
ある日、Aランクパーティーの荷物持ちとしてダンジョン攻略に向かうことになる。
だが、主人公はダンジョンボスの囮として雇われていた。
死を覚悟した主人公はあることがきっかけで、ダンジョンボスを倒してしまう。
目の前に現れたガチャコイン。
ゆっくりとガチャを回すと、もふもふと愛らしいフェンリル?が現れた。
兄妹の人生を変わり者のフェンリル?との出会いが、次々と幸運を巡り寄せていく。
いつかあのフェンリルにお礼を伝えたい!
主人公は今日もフェンリルに会うためにガチャを回す。
※表紙はAIイラストで作成。著作権は作者にあり。
感想コメント大歓迎です(*´꒳`*)
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる