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第6章 4 集まった3人

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「答えられないのか?」

ノワールがヒルダに尋ねてくる。

「私は…お兄様の事は好きですが…男の人として見たことは…」

ヒルダは何とか声を振り絞った。

「ひょっとして他に好きな男でもいるのか?」

「そ、そんな人はいません」

即答するヒルダにノワールは言った。

「なら、やはり死んだ恋人が忘れられないからなのか?お前は一生死んだ恋人だけを思って…生きていくつもりなのか?すぐそばでお前を愛する人間がいるというのに?」

(私を愛する人間…お兄様の事を言っているのね…)

「ノワール様は…実の弟であるお兄様の事を大切に思っているので…お兄様と私が恋仲になるのを望んでいるのですか?」

「…」

しかし、ノワールはその言葉に答えない。ただじっと黙ってヒルダを見つめている。

(分からない…本当にノワール様は何を考えているのか…分からないわ…)

すると、その時―。

「兄さんっ!ヒルダッ!」

エドガーが背後から声を掛けてきた。会場の人混みの中、2人の事を探し回っていたのか、エドガーの髪は少し乱れていた。

「ああ、エドガー。さっきはすまなかったな」

ノワールは笑みを浮かべてエドガーを見た。

「!そ、そんな事よりも…てっきり兄さんはパーティーに来ないものだとばかり思っていました…。それに…」

エドガーはチラリとヒルダを見た。その顔は青ざめている。

「それより、ハリス氏の所へ案内してくれないか。お前の兄として挨拶をしなければならないからな」

ノワールはエドガーに言った。

「は、はい…。けれどヒルダは…」

エドガーはヒルダの事が心配だったのだ。ここはカウベリー。ヒルダをよく思わない領民達が大勢いる。それだけではない。ここで3人で集まっている今も、周囲の男たちがヒルダの事を好奇心一杯の目で見つめているのだ。

(ここに1人でヒルダを残しておけば…ヒルダは危険な目に遭うかも知れない…)

そこでエドガーはヒルダに言った。

「ほんの僅かでもパーティー会場に姿を見せたんだ…。ヒルダは部屋にもう戻ったほうがいい」

「お兄様…」

「ああ、そうだな。俺はここで待っているからお前がヒルダを部屋まで送ってやれよ。ヒルダ、いいよな?」

ノワールはヒルダを見た。それは有無を言わさない強い言い方だった。

「…はい…」

ヒルダは戸惑いながらも返事をした。どうしてもノワールに逆らう事がヒルダには出来なかったのだ。

(それに…お兄様は私とノワール様の事を誤解しているわ。その誤解を解いておかなければ…)

そこでヒルダはエドガーを見た。

「では、お兄様…私のお部屋まで付き添って頂けますか?」

「…ああ」

エドガーが嬉しそうに笑みを浮かべて返事をした。

「それじゃ、行ってこいよ。エドガー。また…後でな、ヒルダ」

ノワールの言葉にエドガーは頷くとヒルダに声を掛けた。

「行こうか?ヒルダ」

「はい…」

そしてエドガーとヒルダはパーティー会場を後にした―。
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