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第5章 5 粉雪
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ノワールと外に出ると、粉雪が舞っていた。
(寒いわ…手袋もしてこなかったし…ラジオで天気予報を聞いておけば良かった…)
ヒルダは自分の手に息を吹きかけながら身体を縮こませた。
「ヒルダ、ひょっとすると手袋を忘れたのか?」
ノワールはヒルダが素手である事に気付き、声を掛けて来た。
「はい。アパートメントを出る時は左程寒くは無かったので…」
寒さに震えた手で杖を握りしめながらヒルダは答えた。
「…俺ので良ければこれを使え」
ノワールはコートの中から手袋を取り出し、ヒルダに押し付けて来た。
「え?でもこれはノワール様のですよね?それに紳士物…」
「大きくたって使えるだろう?むしろ杖を握れなくなる方が危険だ。俺は手袋は必要ないし」
「ありがとうございます。では使わせて頂きます」
ヒルダは手袋を素直に借りる事にした。あまり拒絶してノワールの機嫌を損ねる方が嫌だったのだ。ノワールはヒルダが手袋をはめるのを待っていた。
「…はめました」
ヒルダの指はノワールの手袋の半分ほどまでしか届かなかった。あまりにもブカブカだったのがおかしかったのだろうか。
「プッ」
ノワールが吹き出した。
「え?」
驚いてヒルダが顔を上げると、そこにはもういつも通りの真顔のノワールの姿があった。
「よし、行くぞ」
「はい」
ヒルダは大人しくノワールについて行く事になった―。
****
ヒルダがノワールに連れられてやってきた場所は女性向けの洋品店だった。
「あ、あの…ここは…?」
戸惑いを隠せずヒルダが尋ねるが、ノワールは返事をする事無くヒルダに言った。
「何してる。ドレスコーナーはこっちだ。早く来い」
「え?ド、ドレス?」
(一体何の事かしら…。でもノワール様の言う通りにしなくちゃ)
ヒルダはノワールの後をついて行った。
ヒルダの前には色とりどりの美しいパーティードレスが並べられていた。
「どうだ?ヒルダ。気に入ったドレスはあるか?」
ノワールが隣に立つヒルダに尋ねて来た。
「え?あ、あの…」
(一体どういう事なの…)
戸惑いを隠せないでいると店員の女性が2人に声を掛けて来た。
「いらっしゃいませ。ドレスをお選びにいらしたのですか?」
するとノワールが返事をした。
「ああ、そうなんだ。クリスマスパーティーに参加するので彼女にふさわしいドレスを探しに来たところなんだ」
(え?!ノワール様はまさかパーティードレスを買いにここまで私を連れて来たの?でも…)
「あ、あのノワール様。私今ドレスを買うお金を…」
するとノワールの目が険しくなった。
「俺がヒルダのドレスを買うに決まっているだろう?パーティーに誘ったのは俺なのだから」
「え?で、ですが…!それに黒いドレスならありますけど…?」
ヒルダは正直言うと、これ以上ノワールに貸を作りたくは無かった。
(ただでさえ私は憎まれているのにドレスを買ってもらうなんて…)
するとノワールがヒルダの、耳元で小声で言った。
「ヒルダ。いつまで黒や紺ばかりの服を着て喪に服すつもりだ?ルドルフはもう死んだんだ。いい加減に前を向け」
「!」
ヒルダはその言葉に驚き、ノワールを見あげた―。
(寒いわ…手袋もしてこなかったし…ラジオで天気予報を聞いておけば良かった…)
ヒルダは自分の手に息を吹きかけながら身体を縮こませた。
「ヒルダ、ひょっとすると手袋を忘れたのか?」
ノワールはヒルダが素手である事に気付き、声を掛けて来た。
「はい。アパートメントを出る時は左程寒くは無かったので…」
寒さに震えた手で杖を握りしめながらヒルダは答えた。
「…俺ので良ければこれを使え」
ノワールはコートの中から手袋を取り出し、ヒルダに押し付けて来た。
「え?でもこれはノワール様のですよね?それに紳士物…」
「大きくたって使えるだろう?むしろ杖を握れなくなる方が危険だ。俺は手袋は必要ないし」
「ありがとうございます。では使わせて頂きます」
ヒルダは手袋を素直に借りる事にした。あまり拒絶してノワールの機嫌を損ねる方が嫌だったのだ。ノワールはヒルダが手袋をはめるのを待っていた。
「…はめました」
ヒルダの指はノワールの手袋の半分ほどまでしか届かなかった。あまりにもブカブカだったのがおかしかったのだろうか。
「プッ」
ノワールが吹き出した。
「え?」
驚いてヒルダが顔を上げると、そこにはもういつも通りの真顔のノワールの姿があった。
「よし、行くぞ」
「はい」
ヒルダは大人しくノワールについて行く事になった―。
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ヒルダがノワールに連れられてやってきた場所は女性向けの洋品店だった。
「あ、あの…ここは…?」
戸惑いを隠せずヒルダが尋ねるが、ノワールは返事をする事無くヒルダに言った。
「何してる。ドレスコーナーはこっちだ。早く来い」
「え?ド、ドレス?」
(一体何の事かしら…。でもノワール様の言う通りにしなくちゃ)
ヒルダはノワールの後をついて行った。
ヒルダの前には色とりどりの美しいパーティードレスが並べられていた。
「どうだ?ヒルダ。気に入ったドレスはあるか?」
ノワールが隣に立つヒルダに尋ねて来た。
「え?あ、あの…」
(一体どういう事なの…)
戸惑いを隠せないでいると店員の女性が2人に声を掛けて来た。
「いらっしゃいませ。ドレスをお選びにいらしたのですか?」
するとノワールが返事をした。
「ああ、そうなんだ。クリスマスパーティーに参加するので彼女にふさわしいドレスを探しに来たところなんだ」
(え?!ノワール様はまさかパーティードレスを買いにここまで私を連れて来たの?でも…)
「あ、あのノワール様。私今ドレスを買うお金を…」
するとノワールの目が険しくなった。
「俺がヒルダのドレスを買うに決まっているだろう?パーティーに誘ったのは俺なのだから」
「え?で、ですが…!それに黒いドレスならありますけど…?」
ヒルダは正直言うと、これ以上ノワールに貸を作りたくは無かった。
(ただでさえ私は憎まれているのにドレスを買ってもらうなんて…)
するとノワールがヒルダの、耳元で小声で言った。
「ヒルダ。いつまで黒や紺ばかりの服を着て喪に服すつもりだ?ルドルフはもう死んだんだ。いい加減に前を向け」
「!」
ヒルダはその言葉に驚き、ノワールを見あげた―。
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