上 下
440 / 566

第3章 11 ノワールの忠告

しおりを挟む
「何やってるかて聞いてるだろ?答えろよ」

ノワールは冷たい声で男子学生達に言う。

「な、何って…サークルの勧誘だよ」

ヒルダの肩を掴んでいた学生が言った。

「勧誘?どう見ても彼女は嫌がってるじゃないか」

ノワールは学生を鋭い目つきで睨み付けた。

「何だよ。お前には関係ないだろう?さっさと行けよ」

別の学生が言う。

「ああ、邪魔するなよ」

更にもう1人の学生もノワールに言った。どうやら彼らはヒルダを離す気は無いようだ。

(お願い…!助けて下さいっ!ノワール様!)

ヒルダは必死でノワールの目を見つめた。

「…」

そんなヒルダをノワールは無言で見つめている。

「ほら、やっぱり何も言う事が無いんだろう?さっさと行けよ」

学生が手でノワールを追い払おうとする真似をしようとした時…。

「関係ならある。ヒルダは俺の親戚だからな」

ノワールが学生達に言った。

(ノワール様っ!)

途端に学生たちの顔色が変わる。

「え…?そ、その話…本当なのかよ…?」
「名前を知っているって事は…?」
「嘘じゃないのか…?」

口々に言う男子学生にノワールは言った。

「大学側にお前たちの事を訴えてもいいんだぞ?いいのか?サークルの事を持ち出されても…」

「わ、分ったよ!」

ヒルダの肩を掴んでいた男子学生は手を離すと、おもいきりヒルダをノワールの方へ突き飛ばした。

「キャアッ!」

カラーン

持っていた杖を落としてしまった。

足が不自由なヒルダにはたまったものではない。地面が迫って来る…。

(転ぶ!)

ヒルダは思わず強く目をつぶった。が…。

ボスン

ヒルダはノワールの胸に倒れ込んでいた。咄嗟に駆け寄ってヒルダを受け止めてくれたのだ。

「あ、あの…!有難うございます!」

ヒルダは慌ててノワールから離れると頭を下げた。

「別に謝る事は無い。相手が誰であれ助けるつもりだったから。あいつらのサークルは大学側からは正式に認められていないんだ」

「え?」

「あの連中は質の悪い奴らばかりだ。数少ない女子学生を無理矢理サークルに勧誘するような最低な奴らだ。だがあいつらの実家では毎年高額な寄付金をこの大学に支払っているからな…大学側だってそう強い態度は取れないんだ。けれど来年であいつらも卒業だから、いざとなったら大学に訴えても…って俺は何でこんな話を君にしてるんだ?」

ノワールは髪をかき上げながらため息をつくと言った。

「ノワール様…」

「いいか?よく分っていないようだから教えてやろう。ここは圧倒的に女性が少ない場所なんだ。あまり1人で行動しているとさっきのような奴らに目を付けられるかもしれないぞ?せいぜい気をつける事だ。分ったか?」

「は、はい」

「…」

ノワールは落ちていたヒルダの杖を無言で拾い上げると、差し出して来た。

「ほら。君のだろう?」

「ありがとうございます」

ヒルダが杖を受け取ると、ノワールはそのまま背を向けて立ち去ってしまった。その後ろ姿を見ながらヒルダは思った。

(ノワール様…。口では強い事を言うけれども…本当は親切な方なのかもしれないわ)

そしてヒルダも自分の教室へと向かって歩き始めた―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。 はずだった。 目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う? あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる? でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの? 私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

【完結】要らない私は消えます

かずきりり
恋愛
虐げてくる義母、義妹 会わない父と兄 浮気ばかりの婚約者 どうして私なの? どうして どうして どうして 妃教育が進むにつれ、自分に詰め込まれる情報の重要性。 もう戻れないのだと知る。 ……ならば…… ◇ HOT&人気ランキング一位 ありがとうございます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...