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第2章 1 エドガーからの手紙
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ヒルダとカミラが『カウベリー』の里帰りから戻った1週間後、ヒルダの元に父のハリスから手紙が届いた。それはエドガーの新しい結婚相手が正式に決まったと言う事だった。そして早い事に来月には式を挙げるという内容が記されていた。
「お兄様…」
ヒルダは読み終えた手紙をそっとリビングのテーブルに置き、窓の外を眺めた。明け放された窓からは5月の青い空が見え、港からは海風を運んでくる。今日は診療所の休診日なのでヒルダは食後のひと時をアパートメントで1人で過ごしていたのだ。
ヒルダはチラリとテーブルの上に置いたもう1通の手紙を見た。その手紙はエドガーから届いたものであり、ヒルダはまだ怖くて目を通す事が出来なかったのだ。
けれども、何か重大な事が書かれてあるかもしれない。ヒルダは意を決して手紙に手を伸ばすとペーパーナイフで開封した。そして震える手で手紙を取り出した。
ヒルダの予想に反して手紙の内容は至ってシンプルなものだった。身体を労わる内容と、父と母の様子が書かれていた。そして自身の結婚についても手紙で触れていた。結局エドガーの結婚相手は32歳の女性に決定した。フィールズ家の要望に一番応えてくれたからだった。相手の女性についても触れていた。見合いをして1カ月で結婚するのは女性の年齢を考慮したうえでのことだった。
「!」
しかし、ヒルダは手紙の一番最後に書かれていた文章を読んで手が止まった。
『ヒルダ、子供の頃に初めて会った時からずっと好きだった。愛していたよ。でもその気持ちも封印する。俺はこれから結婚相手となる女性を大切にしていこうと思っている。式には妹として参加してくれると嬉しいな。さよなら、ヒルダ』
「お兄様…?」
(そんな…私は子供の頃にお兄様と会った事があったの?知らなかった…私の事をそんな目で見ていたなんて…)
「ご、ごめんなさい…お兄様…」
ヒルダは手紙に顔をうずめ…涙した―。
****
ミャア
ミャア
港の青い空ではウミネコが鳴き声を上げながら飛んでいた。真っ白な帽子に紺色のワンピースを着たヒルダは今、港の海にやって来ていた。そしてベンチに座り、太陽の光にキラキラと照らされて光り輝く海をじっと見つめていた。港には小型の蒸気船が何隻か停泊しており、時折水平線からボーッという汽笛の音が聞こえてくる。
「素敵な景色…」
ヒルダはポツリと呟いた。先程のエドガーからの手紙を読み終えた時、エドガーと蒸気船に乗った日の事を思い出したのだ。あの時はまだヒルダはルドルフとは再会すらしていなかった。
(お兄様はいつだって私を支えようとしてくれたわ…なのに…私はお兄様の前でルドルフの話ばかり…)
ヒルダはエドガーの気持ちに気付くことが出来ず、無意識に傷つけていたのではないかと思うと、どうしようもなく申し訳ない気持ちで一杯だった。
「お兄様…」
ポツリと呟いたとき、突然背後から声を掛けられた。
「もしかして…ヒルダじゃないか?」
その声に驚いて振り向くと、そこにはアレンが立っていた―。
「お兄様…」
ヒルダは読み終えた手紙をそっとリビングのテーブルに置き、窓の外を眺めた。明け放された窓からは5月の青い空が見え、港からは海風を運んでくる。今日は診療所の休診日なのでヒルダは食後のひと時をアパートメントで1人で過ごしていたのだ。
ヒルダはチラリとテーブルの上に置いたもう1通の手紙を見た。その手紙はエドガーから届いたものであり、ヒルダはまだ怖くて目を通す事が出来なかったのだ。
けれども、何か重大な事が書かれてあるかもしれない。ヒルダは意を決して手紙に手を伸ばすとペーパーナイフで開封した。そして震える手で手紙を取り出した。
ヒルダの予想に反して手紙の内容は至ってシンプルなものだった。身体を労わる内容と、父と母の様子が書かれていた。そして自身の結婚についても手紙で触れていた。結局エドガーの結婚相手は32歳の女性に決定した。フィールズ家の要望に一番応えてくれたからだった。相手の女性についても触れていた。見合いをして1カ月で結婚するのは女性の年齢を考慮したうえでのことだった。
「!」
しかし、ヒルダは手紙の一番最後に書かれていた文章を読んで手が止まった。
『ヒルダ、子供の頃に初めて会った時からずっと好きだった。愛していたよ。でもその気持ちも封印する。俺はこれから結婚相手となる女性を大切にしていこうと思っている。式には妹として参加してくれると嬉しいな。さよなら、ヒルダ』
「お兄様…?」
(そんな…私は子供の頃にお兄様と会った事があったの?知らなかった…私の事をそんな目で見ていたなんて…)
「ご、ごめんなさい…お兄様…」
ヒルダは手紙に顔をうずめ…涙した―。
****
ミャア
ミャア
港の青い空ではウミネコが鳴き声を上げながら飛んでいた。真っ白な帽子に紺色のワンピースを着たヒルダは今、港の海にやって来ていた。そしてベンチに座り、太陽の光にキラキラと照らされて光り輝く海をじっと見つめていた。港には小型の蒸気船が何隻か停泊しており、時折水平線からボーッという汽笛の音が聞こえてくる。
「素敵な景色…」
ヒルダはポツリと呟いた。先程のエドガーからの手紙を読み終えた時、エドガーと蒸気船に乗った日の事を思い出したのだ。あの時はまだヒルダはルドルフとは再会すらしていなかった。
(お兄様はいつだって私を支えようとしてくれたわ…なのに…私はお兄様の前でルドルフの話ばかり…)
ヒルダはエドガーの気持ちに気付くことが出来ず、無意識に傷つけていたのではないかと思うと、どうしようもなく申し訳ない気持ちで一杯だった。
「お兄様…」
ポツリと呟いたとき、突然背後から声を掛けられた。
「もしかして…ヒルダじゃないか?」
その声に驚いて振り向くと、そこにはアレンが立っていた―。
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