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第4章 13 グレースの母
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食事が済むと2人はすぐにグレースの家を訪ねる事にした。
ルドルフがクロード警部補と厩舎で馬を出す準備をしている時に母親が現れた。
「何もそんなにすぐに出かけなくても…」
「ごめん、母さん。グレースの家に言って話を聞いた後はフィールズ家に行く予定なんだ。だからあまりゆっくりしていられなくて。でも今日からまた1週間は滞在する予定だからさ」
ルドルフは笑顔で言う。
「すみません、奥様。大切なご子息を連れまわすような真似をしてしまいまして」
クロード警部補が頭を下げると、ルドルフの母は慌てた様に言った。
「い、いいえ!私は決して刑事さんを責めるつもりで言ったわけではありませんから」
そしてルドルフの母は改めて息子を抱きしめると言った。
「分ったわ。今夜はお前の好きな料理を作って待っているからね」
「うん。有難う、母さん」
堅い親子の抱擁を交わすと、ルドルフはクロード警部補に言った。
「では、行きましょう。刑事さん」
「ああ。そうだな」
そして2人はルドルフの母に見送られながら、それぞれ馬にまたがってグレースの家を目指した―。
****
馬に乗り、雪の積もった針葉樹林を抜けるとグレースの家が見えてきた。
「刑事さん、着きました。あれがグレースの家です」
「ああ、確かにそうだったね。では早速訪ねるとするか」
クロード警部補が馬から降りると、ルドルフも素早く馬から降りた。2人は近くの木に馬の手綱を括り付けると、クロード警部補は言った。
「よし、では行ってみるとしよう」
「はい」
そして2人はグレースの家の玄関の前に立った。
コンコン
すっかりさび付いてしまったドアノッカーをクロード警部補は叩いた。
「「・・・」」
しかし、全く応答が無い。
「妙だな‥留守かな?」
再びクロード警部補はドアをノックした。
コンコン
すると…
キィ~…
きしんだ音と共に、ボサボサに乱れた髪にまるで骸骨の様にやせ細った身体、目だけが異常なほどにギョロリと光る老婆と見まごうばかりの女性が現れた。
「ま…まさか、おばさんっ?!」
ルドルフはほんの半月ばかりの間に見る影もない程に変わり果ててしまったグレースの母の姿に衝撃を受けた。
「あ…?あ、あんた…っ!!ひょっとしてルドルフかいっ?!」
「えっ?あっ!!」
そして何を思ったか両腕を振りかざすとルドルフに掴みかかりそうになり…。
「マダム、落ち着て頂けませんか?」
クロード警部補に両手首をいとも簡単に掴まれ、押さえ込まれてしまった。
「な、何するんだよっ!お、お離しっ!!」
「ええ、貴女がおとなしくて下さるのであれば、手荒な真似は致しませんよ」
「わ、分った…」
グレースの母は力なく、頷くと言った。
「私に話があるんだろう?立ち話もなんだから…部屋にはいっておくれ」
そして踵を返し、部屋の奥へと歩いて行く。クロード警部補にルドルフは彼女の言葉に頷くと、後へと続いた―。
通された部屋は暖炉はあるが、火が消えていた。とても冷え切った部屋で3人は丸テーブルに向かい合って座っている。
「悪いね…この通りがらんどうの部屋でね。お茶も出せないんだよ」
確かにテーブルと椅子以外は何も無い部屋だった。一体どんな暮らしをしているのか、2人は全く見当もつかなかった。
(こんな処…長居は無用だな)
そう判断したクロード警部補は早速口を開いた。
「今日、私達がここへやって来たのは他でもありません。グレースさんの事です」
「何だいっ!あの娘なら、もうとっくにいないっ!夫が殺したんだよっ!」
「貴女は…どうして夫がそんな真似をしたかご存知でしょう?今までずっと口を閉ざしていたが…もうそろそろ真実を語ってくれても良いのでは?」
クロード警部補の言葉にグレースの母は、ぞっとするような笑みを2人に向けた―。
ルドルフがクロード警部補と厩舎で馬を出す準備をしている時に母親が現れた。
「何もそんなにすぐに出かけなくても…」
「ごめん、母さん。グレースの家に言って話を聞いた後はフィールズ家に行く予定なんだ。だからあまりゆっくりしていられなくて。でも今日からまた1週間は滞在する予定だからさ」
ルドルフは笑顔で言う。
「すみません、奥様。大切なご子息を連れまわすような真似をしてしまいまして」
クロード警部補が頭を下げると、ルドルフの母は慌てた様に言った。
「い、いいえ!私は決して刑事さんを責めるつもりで言ったわけではありませんから」
そしてルドルフの母は改めて息子を抱きしめると言った。
「分ったわ。今夜はお前の好きな料理を作って待っているからね」
「うん。有難う、母さん」
堅い親子の抱擁を交わすと、ルドルフはクロード警部補に言った。
「では、行きましょう。刑事さん」
「ああ。そうだな」
そして2人はルドルフの母に見送られながら、それぞれ馬にまたがってグレースの家を目指した―。
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馬に乗り、雪の積もった針葉樹林を抜けるとグレースの家が見えてきた。
「刑事さん、着きました。あれがグレースの家です」
「ああ、確かにそうだったね。では早速訪ねるとするか」
クロード警部補が馬から降りると、ルドルフも素早く馬から降りた。2人は近くの木に馬の手綱を括り付けると、クロード警部補は言った。
「よし、では行ってみるとしよう」
「はい」
そして2人はグレースの家の玄関の前に立った。
コンコン
すっかりさび付いてしまったドアノッカーをクロード警部補は叩いた。
「「・・・」」
しかし、全く応答が無い。
「妙だな‥留守かな?」
再びクロード警部補はドアをノックした。
コンコン
すると…
キィ~…
きしんだ音と共に、ボサボサに乱れた髪にまるで骸骨の様にやせ細った身体、目だけが異常なほどにギョロリと光る老婆と見まごうばかりの女性が現れた。
「ま…まさか、おばさんっ?!」
ルドルフはほんの半月ばかりの間に見る影もない程に変わり果ててしまったグレースの母の姿に衝撃を受けた。
「あ…?あ、あんた…っ!!ひょっとしてルドルフかいっ?!」
「えっ?あっ!!」
そして何を思ったか両腕を振りかざすとルドルフに掴みかかりそうになり…。
「マダム、落ち着て頂けませんか?」
クロード警部補に両手首をいとも簡単に掴まれ、押さえ込まれてしまった。
「な、何するんだよっ!お、お離しっ!!」
「ええ、貴女がおとなしくて下さるのであれば、手荒な真似は致しませんよ」
「わ、分った…」
グレースの母は力なく、頷くと言った。
「私に話があるんだろう?立ち話もなんだから…部屋にはいっておくれ」
そして踵を返し、部屋の奥へと歩いて行く。クロード警部補にルドルフは彼女の言葉に頷くと、後へと続いた―。
通された部屋は暖炉はあるが、火が消えていた。とても冷え切った部屋で3人は丸テーブルに向かい合って座っている。
「悪いね…この通りがらんどうの部屋でね。お茶も出せないんだよ」
確かにテーブルと椅子以外は何も無い部屋だった。一体どんな暮らしをしているのか、2人は全く見当もつかなかった。
(こんな処…長居は無用だな)
そう判断したクロード警部補は早速口を開いた。
「今日、私達がここへやって来たのは他でもありません。グレースさんの事です」
「何だいっ!あの娘なら、もうとっくにいないっ!夫が殺したんだよっ!」
「貴女は…どうして夫がそんな真似をしたかご存知でしょう?今までずっと口を閉ざしていたが…もうそろそろ真実を語ってくれても良いのでは?」
クロード警部補の言葉にグレースの母は、ぞっとするような笑みを2人に向けた―。
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