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第4章 6 クロード警部補からの電話
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17時半―
アルバイトから帰ってきたばかりのルドルフは自室で日記を眺めていた。この日記はヒルダとの交換日記である。毎日会うことが難しい2人は日記をつけて、互いに交換して読み合う約束をしていたからである。
「さて、今日はどんな事を書こうかな…」
ルドルフは日記を開き、ヒルダがプレゼントしてくれた万年筆を手に取るとインク瓶に浸し、ペンを走らせはじめた。ヒルダに話したいことは山ほど合った。気付けば夢中になって書いており、あっという間にページを1枚使っていた。
「あ…また1枚ページを使ってしまったな…」
ルドルフはため息をついた。
「こんなにたくさん日記を書いてしまったけど、ヒルダ様は読むのが苦痛じゃないだろうか…」
そしてルドルフはヒルダの事を思った。2人で『ボルト』の旅行へ誘ったときは、まさかヒルダと身体の関係を持つまでに至るとは考えてもいなかった。それが思いもかけない展開になり、2人は身も心も完全に結ばれたのだ。その感動はまさに口では言い表せないほどだった。だからこそ『ロータス』に戻ったときにはヒルダから離れるのがとても辛かった。
「高校を卒業後…ヒルダ様と一緒になれないだろうか…」
ルドルフは本気で高校卒業後、ヒルダと結婚する事を考えていた。18歳で結婚とはいささか早いかもしれないが、貴族同士の結婚ではそれほど珍しくも無い。
(後は一刻も早くヒルダ様が教会の火事の事件の犯人では無いことが証明されれば、ハリス様にお願いしてヒルダ様と結婚させて下さいと頼むんだ…)
そこでルドルフは今日の日記の最後のページにこう書き綴った。
『僕の愛するヒルダ様。高校を卒業したらどうか僕と結婚して下さい』
(ヒルダ様はこの文章を見たらどう思うだろう…)
ルドルフは想像した。ヒルダと2人で築く家庭を。2人の間には可愛らしい男の子と女の子が生まれて、そして…。
その時、ノックの音と同時に寮父の声が聞こえた。
コンコン
「ルドルフ・テイラー君、電話が入っていますよ。」
「え?僕に電話?」
ルドルフは慌てて日記帳を閉じると寮の部屋の扉を開けた。すると目の前にはメガネをかけた寮父が立っていた。
「ルドルフ君。電話が入っているのですぐに管理人室へ来て下さい。」
「あ、はい。すぐに行きます」
寮父はそれだけ告げると、スタスタと管理人室へ戻っていく。ルドルフは自室の鍵をかけるとすぐに管理人室へ向かった。
****
管理人室へ行くと、電話の受話器が外されてテーブルの上に置かれていた。
「電話は、これですね?」
「ああ、相手はクロードと名乗っていたよ。」
「え…?クロード…?」
(刑事さんだっ!僕に連絡を入れてくれたんだ!)
ルドルフは急いで受話器を取ると耳に押し付けた。
「もしもし、ルドルフです」
『やあ、こんにちは。いや、こんばんはと言ったほうがいいかな?ルドルフ君』
「刑事さん、突然どうしたたんですか?」
『ああ。実はね、今日『ボルト』の町へ行ってコリン君とノラさんに会ってきたんだよ』
「え?本当ですか?!」
『ああ、それで2人も証言してくれたよ。あの時、火のついた薪を手にしていたのはグレースだったと。』
「本当ですかっ?!」
『うん。それでちょっと急なんだが、クリスマスの日に『カウベリー』の領主の屋敷に行って事実を説明してこようかと思っているんだ。それで、この日にグレースの母も訪ねようかと思っているんだよ』
「え?グレースのお母さんは入院中なのでは…?」
『いや、それが彼女は明後日退院するらしいのだよ』
「そうなんですか…?」
そしてルドルフは少し考え込むと言った。
「あの、刑事さん。僕もその日一緒に『カウベリー』へ行ってもいいですか…?」
ルドルフの胸にはある決意があった―。
アルバイトから帰ってきたばかりのルドルフは自室で日記を眺めていた。この日記はヒルダとの交換日記である。毎日会うことが難しい2人は日記をつけて、互いに交換して読み合う約束をしていたからである。
「さて、今日はどんな事を書こうかな…」
ルドルフは日記を開き、ヒルダがプレゼントしてくれた万年筆を手に取るとインク瓶に浸し、ペンを走らせはじめた。ヒルダに話したいことは山ほど合った。気付けば夢中になって書いており、あっという間にページを1枚使っていた。
「あ…また1枚ページを使ってしまったな…」
ルドルフはため息をついた。
「こんなにたくさん日記を書いてしまったけど、ヒルダ様は読むのが苦痛じゃないだろうか…」
そしてルドルフはヒルダの事を思った。2人で『ボルト』の旅行へ誘ったときは、まさかヒルダと身体の関係を持つまでに至るとは考えてもいなかった。それが思いもかけない展開になり、2人は身も心も完全に結ばれたのだ。その感動はまさに口では言い表せないほどだった。だからこそ『ロータス』に戻ったときにはヒルダから離れるのがとても辛かった。
「高校を卒業後…ヒルダ様と一緒になれないだろうか…」
ルドルフは本気で高校卒業後、ヒルダと結婚する事を考えていた。18歳で結婚とはいささか早いかもしれないが、貴族同士の結婚ではそれほど珍しくも無い。
(後は一刻も早くヒルダ様が教会の火事の事件の犯人では無いことが証明されれば、ハリス様にお願いしてヒルダ様と結婚させて下さいと頼むんだ…)
そこでルドルフは今日の日記の最後のページにこう書き綴った。
『僕の愛するヒルダ様。高校を卒業したらどうか僕と結婚して下さい』
(ヒルダ様はこの文章を見たらどう思うだろう…)
ルドルフは想像した。ヒルダと2人で築く家庭を。2人の間には可愛らしい男の子と女の子が生まれて、そして…。
その時、ノックの音と同時に寮父の声が聞こえた。
コンコン
「ルドルフ・テイラー君、電話が入っていますよ。」
「え?僕に電話?」
ルドルフは慌てて日記帳を閉じると寮の部屋の扉を開けた。すると目の前にはメガネをかけた寮父が立っていた。
「ルドルフ君。電話が入っているのですぐに管理人室へ来て下さい。」
「あ、はい。すぐに行きます」
寮父はそれだけ告げると、スタスタと管理人室へ戻っていく。ルドルフは自室の鍵をかけるとすぐに管理人室へ向かった。
****
管理人室へ行くと、電話の受話器が外されてテーブルの上に置かれていた。
「電話は、これですね?」
「ああ、相手はクロードと名乗っていたよ。」
「え…?クロード…?」
(刑事さんだっ!僕に連絡を入れてくれたんだ!)
ルドルフは急いで受話器を取ると耳に押し付けた。
「もしもし、ルドルフです」
『やあ、こんにちは。いや、こんばんはと言ったほうがいいかな?ルドルフ君』
「刑事さん、突然どうしたたんですか?」
『ああ。実はね、今日『ボルト』の町へ行ってコリン君とノラさんに会ってきたんだよ』
「え?本当ですか?!」
『ああ、それで2人も証言してくれたよ。あの時、火のついた薪を手にしていたのはグレースだったと。』
「本当ですかっ?!」
『うん。それでちょっと急なんだが、クリスマスの日に『カウベリー』の領主の屋敷に行って事実を説明してこようかと思っているんだ。それで、この日にグレースの母も訪ねようかと思っているんだよ』
「え?グレースのお母さんは入院中なのでは…?」
『いや、それが彼女は明後日退院するらしいのだよ』
「そうなんですか…?」
そしてルドルフは少し考え込むと言った。
「あの、刑事さん。僕もその日一緒に『カウベリー』へ行ってもいいですか…?」
ルドルフの胸にはある決意があった―。
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