308 / 566
第2章 17 面会
しおりを挟む
寮だと教えられた木材建築の建物はそれは酷く朽ち果てていた。建てられて相当年月が経っているのだろう。壁となっている板は所々が黒く、腐っているだけでなく、あちこちに隙間が出来ている。この分だと隙間風も入るだろうし、台風などが来た場合は雨風が建物の中に入り込んでくるかもしれない。
「こんな・・酷い建物が寮だなんて・・・。」
ヒルダが青白い顔で呟く。その手は小刻みに震えていた。
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフはヒルダの手をそっと握りしめると言った。
「管理人室を・・・尋ねてみましょう。」
「ええ・・そうね・・。」
ルドルフは扉を探す為に建物の傍を歩いている時に、窓が目についたので何気なくチラリとのぞき見し・・息を飲んだ。
「!」
それは寮生の部屋だった。狭い部屋に中には上下の二段ベッドが3台左右の壁に貼り付けるようにピタリと並べられていた。ベッドとベッドの間は人が1人通れるほどの隙間しかなかった。
(何て酷い環境なんだ・・・。こんな狭い部屋に6人も住んでいるなんて・・・。こんな部屋が・・・果たして人の住む環境と言えるのだろうか・・・?)
「どうしたの?ルドルフ?」
ヒルダが声をかけてきた。
「い、いいえ。何でもありません。ヒルダ様・・・足の具合は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。」
「それなら良かった・・・。では行きましょう。」
「ええ・・・。」
数分歩き回り、ようやく2人は扉を見つけた。ルドルフは深呼吸すると、扉をノックした。
ドンドン
「・・・。」
中からは何の応答も無い。
「・・・誰もいなのいかしら?」
「ええ・・妙ですね?もう一度ノックしてみましょう。」
ドンドン
ルドルフは再度ノックしてみた。すると・・・。
「うるさいなぁ・・・!聞こえてるよっ!」
ガラの悪い声が聞こえ、ガチャリと乱暴にドアが開かれた。姿を現したのは赤毛のぼさぼさ頭の若い男だった。ヒルダは男の剣幕に驚き、咄嗟にルドルフの背中に隠れて様子を伺った。
「あ~ん・・・?誰だい?お前たちは・・?」
「すみません。お尋ねしたい事があって参りました。」
ルドルフはヒルダを守るように立ちはだかると男に言った。
「何だ?随分かしこまった口を聞くじゃないか・・・それに・・・。」
男はルドルフの事をつま先から頭のてっぺんまで無遠慮にジロジロと見つめ、次にルドルフの背後に隠れているヒルダをルドルフの肩越しに見ると言った。
「ひょっとして・・あんた達、お貴族様かい?」
何処か、からかう様な口ぶりで言う。
「だったら・・・どうだって言うのですか?」
ルドルフが答えると、男は余程驚いたのか身体をのけぞらせた。
「へぇ~っ!これは驚いたな・・・!貴族と口を聞くなんて始めただっ!しかもこの『ボルト』に貴族が居るとはね・・・。ここは薄汚れた町だから貧乏人しか住んでいないって言うのに・・。で?お偉い貴族様がこんなところへわざわざ来るとは、一体どんなご用件で?」
「僕たちはコリンと言う人物を尋ねてここへやってきました。年齢は17歳です。・・いますよね?」
「コリン・・・コリン・・ああ、あいつか?あの泣き虫『コリン』。」
「え?」
ルドルフはその言葉に耳を疑った。コリンは『カウベリー』では勇敢な少年だった。泣き虫等と言うあだ名は一度だってついた事等無かったのに・・・。
ルドルフが戸惑っていると、男は言う。
「待ってな。今・・連れて来てやるよ。しっかし・・・あいつに面会なんて初めてじゃないのか~・・・。」
言いながら、男はルドルフ達の名前も聞かずに奥へと引っ込んでしまった。それを見ていたヒルダが言う。
「ね、ねえ・・ルドルフ。あの男の人・・・私達の名前を聞かずに行ってしまったけど・・大丈夫かしら・・?」
「ええ・・そうですね。ひょっとすると・・・。」
ルドルフはそこで言葉を切った。
(彼が僕たちの名前を聞かずにコリンを呼びに行ったのも・・ひょっとするとこれも彼への嫌がらせなのだろうか・・?)
やがて・・ギシギシと床を踏み鳴らす音がルドルフ達の元へと近付いて来たー。
「こんな・・酷い建物が寮だなんて・・・。」
ヒルダが青白い顔で呟く。その手は小刻みに震えていた。
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフはヒルダの手をそっと握りしめると言った。
「管理人室を・・・尋ねてみましょう。」
「ええ・・そうね・・。」
ルドルフは扉を探す為に建物の傍を歩いている時に、窓が目についたので何気なくチラリとのぞき見し・・息を飲んだ。
「!」
それは寮生の部屋だった。狭い部屋に中には上下の二段ベッドが3台左右の壁に貼り付けるようにピタリと並べられていた。ベッドとベッドの間は人が1人通れるほどの隙間しかなかった。
(何て酷い環境なんだ・・・。こんな狭い部屋に6人も住んでいるなんて・・・。こんな部屋が・・・果たして人の住む環境と言えるのだろうか・・・?)
「どうしたの?ルドルフ?」
ヒルダが声をかけてきた。
「い、いいえ。何でもありません。ヒルダ様・・・足の具合は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。」
「それなら良かった・・・。では行きましょう。」
「ええ・・・。」
数分歩き回り、ようやく2人は扉を見つけた。ルドルフは深呼吸すると、扉をノックした。
ドンドン
「・・・。」
中からは何の応答も無い。
「・・・誰もいなのいかしら?」
「ええ・・妙ですね?もう一度ノックしてみましょう。」
ドンドン
ルドルフは再度ノックしてみた。すると・・・。
「うるさいなぁ・・・!聞こえてるよっ!」
ガラの悪い声が聞こえ、ガチャリと乱暴にドアが開かれた。姿を現したのは赤毛のぼさぼさ頭の若い男だった。ヒルダは男の剣幕に驚き、咄嗟にルドルフの背中に隠れて様子を伺った。
「あ~ん・・・?誰だい?お前たちは・・?」
「すみません。お尋ねしたい事があって参りました。」
ルドルフはヒルダを守るように立ちはだかると男に言った。
「何だ?随分かしこまった口を聞くじゃないか・・・それに・・・。」
男はルドルフの事をつま先から頭のてっぺんまで無遠慮にジロジロと見つめ、次にルドルフの背後に隠れているヒルダをルドルフの肩越しに見ると言った。
「ひょっとして・・あんた達、お貴族様かい?」
何処か、からかう様な口ぶりで言う。
「だったら・・・どうだって言うのですか?」
ルドルフが答えると、男は余程驚いたのか身体をのけぞらせた。
「へぇ~っ!これは驚いたな・・・!貴族と口を聞くなんて始めただっ!しかもこの『ボルト』に貴族が居るとはね・・・。ここは薄汚れた町だから貧乏人しか住んでいないって言うのに・・。で?お偉い貴族様がこんなところへわざわざ来るとは、一体どんなご用件で?」
「僕たちはコリンと言う人物を尋ねてここへやってきました。年齢は17歳です。・・いますよね?」
「コリン・・・コリン・・ああ、あいつか?あの泣き虫『コリン』。」
「え?」
ルドルフはその言葉に耳を疑った。コリンは『カウベリー』では勇敢な少年だった。泣き虫等と言うあだ名は一度だってついた事等無かったのに・・・。
ルドルフが戸惑っていると、男は言う。
「待ってな。今・・連れて来てやるよ。しっかし・・・あいつに面会なんて初めてじゃないのか~・・・。」
言いながら、男はルドルフ達の名前も聞かずに奥へと引っ込んでしまった。それを見ていたヒルダが言う。
「ね、ねえ・・ルドルフ。あの男の人・・・私達の名前を聞かずに行ってしまったけど・・大丈夫かしら・・?」
「ええ・・そうですね。ひょっとすると・・・。」
ルドルフはそこで言葉を切った。
(彼が僕たちの名前を聞かずにコリンを呼びに行ったのも・・ひょっとするとこれも彼への嫌がらせなのだろうか・・?)
やがて・・ギシギシと床を踏み鳴らす音がルドルフ達の元へと近付いて来たー。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。ただ改稿を行い、結末がこちらに掲載している内容とは異なりますので物語全体の雰囲気が異なる場合がございます。あらかじめご了承下さい。(あちらはゲオルグと並び人気が高かったエイドENDです)
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる