295 / 566
第2章 5 デートの終わりに
しおりを挟む
ルドルフはヒルダの手をギュッと握りしめると言った。
「ヒルダ様、すぐそこに喫茶店があるので・・少し休んでいきませんか?」
「え?ええ・・・?」
ヒルダは不思議だった。ついさっきハンバーガーショップを出たばかりなのにルドルフが喫茶店に入ることを提案してきたからだ。
「それじゃ、入りましょう。」
ルドルフはヒルダと手をつないだま、ゆっくりと喫茶店へ向かって歩き始めた―。
カランカラン
ドアベルを鳴らしながらルドルフとヒルダは喫茶店の中へと入った。
店内には客がほとんどおらず、静かな店内からは蓄音機でクラシック曲が流れている。
「ヒルダ様、一番奥のテーブルへ行きましょう。」
「え?ええ・・。」
ヒルダはルドルフに手を引かれたま店内の一番奥へと案内されると、ルドルフが椅子をひいた。
「さ、ヒルダ様。どうぞ。」
「あ、ありがとう・・。」
まるで貴族令嬢だった頃のような扱いを受け、ヒルダは頬を染めながら静かに腰を下ろした。ルドルフはヒルダの向かい側に座ると言った。
「ヒルダ様、時々僕はここの喫茶店へ来るのですが・・ホットココアが美味しいですよ。良かったらそれにしませんか?」
「そうね・・ルドルフのお勧めのホットココアにするわ。」
するとタイミングよくウェイトレスの女性がお水を持ってやって来た。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「ホットココアを2つ下さい。」
ルドルフはウェイトレスに言う。
「はい、お待ち下さい。」
ウェイトレスがその場から去るとルドルフが言った。
「ヒルダ様・・・足が痛むのですよね?」
「え?」
突然ルドルフに足の痛みを指摘されてヒルダは目を瞬かせた。
「ルドルフ・・気が付いていたの?」
「はい・・・申し訳ありませんでした。もっと・・僕がヒルダ様の足の具合を気遣ってあげていれば・・・。」
ルドルフは申し訳なさそうに言う。
「いいのよ、ルドルフ・・・。冬になればいつもの事だから・・気にしないで?それに・・・。」
ヒルダはそこで少し悲し気に目を伏せた。
「それに・・?何ですか?」
「あ、あの・・本当は杖を持ってくれば良かったのかもしれないけど・・杖をついた私と一緒だと・・ルドルフに恥ずかしい思いをさせてしまうのじゃないかと思って・・。持ってこなかったの。だから・・私がいけないのよ。」
最後の方の声は消え入りそうだった。
その言葉を耳にした時、ルドルフは胸が詰まりそうに苦しくなった。そんな辛い思いを抱えていたのかと思うとヒルダが気の毒でならなかった。
「ヒルダ様、僕は・・。」
そこまで話した時、ウェイトレスが大きなカップに湯気の立つココアを持ってやってきた。
「お待たせ致しました。」
そして2人の前にコトンコトンと置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイトレスは頭を下げると去って行く。それを見届けるとルドルフは言った。
「ヒルダ様、どうぞ温かいうちに飲んでみて下さい。」
「ええ、そうね。飲んでみるわ。」
ヒルダはカップを両手で持つとフウフウと冷ましながらコクリと一口飲んでみた。
途端に甘い味と香りが口の中で広がる。
「甘い・・とっても美味しいわ・・・。」
ヒルダは笑みを浮かべた。ルドルフもココアを飲むとヒルダに言った。
「ヒルダ様・・・僕は例え、ヒルダ様の足が不自由だろうと、杖を突いていようと・・少しも構いません。だから・・そんな悲しい事は言わないでください。」
「ルドルフ・・。ありがとう・・。」
ヒルダは目を潤ませながらルドルフを見つめた。
「ヒルダ様、今度出掛ける時は馬車かバスを使いましょう。それに杖も・・僕の事など気にせずに持ってきてくださいね。」
「ありがとう・・ルドルフ。本当に私が・・・普通の足だったら良かったのだけど・・・。」
ヒルダは寂しげに言った。
「僕はヒルダ様の傍にいられるだけで満足ですからそんな事気にしないで下さい。それで・・話は変わるのですが・・。」
ルドルフはテーブルの上に置かれたヒルダの右手をそっと握り締めながら言った。
「ヒルダ様・・・来週の土曜日・・僕と旅行に行きませんか?」
「え・・・?」
ヒルダはルドルフの申し出に目を見開いた―。
「ヒルダ様、すぐそこに喫茶店があるので・・少し休んでいきませんか?」
「え?ええ・・・?」
ヒルダは不思議だった。ついさっきハンバーガーショップを出たばかりなのにルドルフが喫茶店に入ることを提案してきたからだ。
「それじゃ、入りましょう。」
ルドルフはヒルダと手をつないだま、ゆっくりと喫茶店へ向かって歩き始めた―。
カランカラン
ドアベルを鳴らしながらルドルフとヒルダは喫茶店の中へと入った。
店内には客がほとんどおらず、静かな店内からは蓄音機でクラシック曲が流れている。
「ヒルダ様、一番奥のテーブルへ行きましょう。」
「え?ええ・・。」
ヒルダはルドルフに手を引かれたま店内の一番奥へと案内されると、ルドルフが椅子をひいた。
「さ、ヒルダ様。どうぞ。」
「あ、ありがとう・・。」
まるで貴族令嬢だった頃のような扱いを受け、ヒルダは頬を染めながら静かに腰を下ろした。ルドルフはヒルダの向かい側に座ると言った。
「ヒルダ様、時々僕はここの喫茶店へ来るのですが・・ホットココアが美味しいですよ。良かったらそれにしませんか?」
「そうね・・ルドルフのお勧めのホットココアにするわ。」
するとタイミングよくウェイトレスの女性がお水を持ってやって来た。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「ホットココアを2つ下さい。」
ルドルフはウェイトレスに言う。
「はい、お待ち下さい。」
ウェイトレスがその場から去るとルドルフが言った。
「ヒルダ様・・・足が痛むのですよね?」
「え?」
突然ルドルフに足の痛みを指摘されてヒルダは目を瞬かせた。
「ルドルフ・・気が付いていたの?」
「はい・・・申し訳ありませんでした。もっと・・僕がヒルダ様の足の具合を気遣ってあげていれば・・・。」
ルドルフは申し訳なさそうに言う。
「いいのよ、ルドルフ・・・。冬になればいつもの事だから・・気にしないで?それに・・・。」
ヒルダはそこで少し悲し気に目を伏せた。
「それに・・?何ですか?」
「あ、あの・・本当は杖を持ってくれば良かったのかもしれないけど・・杖をついた私と一緒だと・・ルドルフに恥ずかしい思いをさせてしまうのじゃないかと思って・・。持ってこなかったの。だから・・私がいけないのよ。」
最後の方の声は消え入りそうだった。
その言葉を耳にした時、ルドルフは胸が詰まりそうに苦しくなった。そんな辛い思いを抱えていたのかと思うとヒルダが気の毒でならなかった。
「ヒルダ様、僕は・・。」
そこまで話した時、ウェイトレスが大きなカップに湯気の立つココアを持ってやってきた。
「お待たせ致しました。」
そして2人の前にコトンコトンと置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイトレスは頭を下げると去って行く。それを見届けるとルドルフは言った。
「ヒルダ様、どうぞ温かいうちに飲んでみて下さい。」
「ええ、そうね。飲んでみるわ。」
ヒルダはカップを両手で持つとフウフウと冷ましながらコクリと一口飲んでみた。
途端に甘い味と香りが口の中で広がる。
「甘い・・とっても美味しいわ・・・。」
ヒルダは笑みを浮かべた。ルドルフもココアを飲むとヒルダに言った。
「ヒルダ様・・・僕は例え、ヒルダ様の足が不自由だろうと、杖を突いていようと・・少しも構いません。だから・・そんな悲しい事は言わないでください。」
「ルドルフ・・。ありがとう・・。」
ヒルダは目を潤ませながらルドルフを見つめた。
「ヒルダ様、今度出掛ける時は馬車かバスを使いましょう。それに杖も・・僕の事など気にせずに持ってきてくださいね。」
「ありがとう・・ルドルフ。本当に私が・・・普通の足だったら良かったのだけど・・・。」
ヒルダは寂しげに言った。
「僕はヒルダ様の傍にいられるだけで満足ですからそんな事気にしないで下さい。それで・・話は変わるのですが・・。」
ルドルフはテーブルの上に置かれたヒルダの右手をそっと握り締めながら言った。
「ヒルダ様・・・来週の土曜日・・僕と旅行に行きませんか?」
「え・・・?」
ヒルダはルドルフの申し出に目を見開いた―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!
行枝ローザ
恋愛
身に覚えのない罪で婚約破棄のはずが、何故かヒロインを立派な令嬢にするために引き取ることになってしまった!
結果によってはやっぱり婚約破棄?
血の繋がりがない婚約者と子爵令嬢が兄妹?いったいどういう意味?
虐められていたのは本当?黒幕は別?混乱する公爵令嬢を転生兄妹が守り抜いたら、別の公爵令嬢に悪役フラグが立った!
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
あなたに愛や恋は求めません
灰銀猫
恋愛
婚約者と姉が自分に隠れて逢瀬を繰り返していると気付いたイルーゼ。
婚約者を諫めるも聞く耳を持たず、父に訴えても聞き流されるばかり。
このままでは不実な婚約者と結婚させられ、最悪姉に操を捧げると言い出しかねない。
婚約者を見限った彼女は、二人の逢瀬を両親に突きつける。
貴族なら愛や恋よりも義務を優先すべきと考える主人公が、自分の場所を求めて奮闘する話です。
R15は保険、タグは追加する可能性があります。
ふんわり設定のご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。
24.3.1 女性向けHOTランキングで1位になりました。ありがとうございます。
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる