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第9章 14 グレースの母
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グレースの家はフィールズ家から馬で駆けて20分程の距離にある。
「ここか・・?グレースの家と言うのは・・・。」
防寒着に身を包み、帽子を目深にかぶったエドガーは、白い息を吐きながらレンガ造りの家を見上げるとルドルフに尋ねた。
「はい、エドガー様。グレースの家は・・・ここです。」
ルドルフはヒラリと馬から降りると言った。
「確かグレースは平民出身だったそうだな?その割には・・随分立派な屋敷に住んでいるんだな。」
エドガーも馬から降りた。
「ええ、そうです。それで・・父親が男爵家の爵位をお金で買って・・貴族となって僕とヒルダ様と同じ中学校に転校してきたんです。でも・・・転校初日で問題を起こして停学処分になってしまったので、その日のうちに退学したそうです。」
「な・・・何だって?!」
あまりにも突拍子もない話にエドガーは耳を疑い、そして思った。
(そうか・・・グレースは・・やはり俺が睨んだ通り・・相当な曲者の人間なのかもしれないな・・。)
「エドガー様?どうしましたか?」
ルドルフは雪の降り積もっていない常緑樹の下に馬の手綱をくくり付け終えると、エドガーを見た。
「いや・・グレースは・・相当わがままなお嬢さんなのかな・・と思ったのさ。」
エドガーもルドルフにならい、常緑樹の下に馬の手綱をくくり付けると、軽く首を撫でながら言った。
「悪いな、少しここで待っていてくれ。」
「・・・。」
その様子を黙って見ていたルドルフは思った。エドガーは、やはり心の優しい人物なのだとー。
コンコンコン
ドアノッカーを持つとルドルフは3回ドアをノックした。
「「・・・。」」
2人は少しの間、その場で待っていたが・・・なかなか人が現れる気配がない。
「ひょっとして・・留守なのだろうか・・?」
エドガーが首を傾げた時・・・。
ガチャリ・・
ドアが開けられた。現れたのは髪がぼさぼさに乱れ、古びたワインレッド色のロングワンピースを着た中年の女性・・グレースの母親だった。彼女はエドガーとルドルフを見ると、驚愕の表情を見せた。
「こ、これは・・・エドガー様に・・ま、まさか・・ルドルフ・・?あんた・・カウベリーに帰っていたのかい・・?!」
「はい、おばさん。昨日から帰ってきています。それで僕とエドガー様はグレースに会いに来たのですが・・いますか?」
すると、何故かグレースの母は笑みを浮かべると言った。
「ああ、そう・・そう言う事だったのかい?こんな家にもう人が尋ねてくるのは借金とりしかいないと思っていたけれども・・・そうかい。ついに・・私たちを・・・助けに来てくれたんだね?」
「え・・?」
ルドルフは何のことか分からずに戸惑っていたが、エドガーは難しい顔でグレースの母の様子をうかがっていた。
(あれがグレースの母親か・・・・それにしても・・・随分下卑た笑いをする人だな・・。おまけに何か盛大な勘違いをしているようだし・・・。)
「ささ、どうぞどうぞ・・何も無い屋敷ですが・・・中へ入って下さい。」
グレースの母は腰を低くしながら、ドアを大きく開け放し・・屋敷の中の様子が2人の目に飛び込んできた。
「え・・?」
「・・・!」
ルドルフとエドガーは目を見張った。何故2人が目を見張ったかと言うと・・・。
何も無い。がらんどうだったのだ。コート掛けはおろか、部屋を明るく照らすための照明も無ければ、カーテンもカーペットも何もかもが無い空間だった。
(そ、そんな・・!)
ルドルフはグレースの家に何度も行ったことがあるので、当時の家の様子を覚えている。それだけに、今目の前に広がるがらんどうな空間が信じられずにいたのだ。するとそんな考えに気がついたのか、グレースの母が言った。
「驚いたでしょう?実は・・・もう2年も前から・・我が家は家計が火の車だったんですよ。それで本当は・・・グレースは高校を卒業後に結婚することになっていたのだけど・・・あの教会の火事のせいで・・顔に大やけどを負って・・結婚の話が消えてしまったんだよ・・!全ては・・全てはあの娘のせいで・・・!!」
そして鬼のような形相を顔に浮かべた―。
「ここか・・?グレースの家と言うのは・・・。」
防寒着に身を包み、帽子を目深にかぶったエドガーは、白い息を吐きながらレンガ造りの家を見上げるとルドルフに尋ねた。
「はい、エドガー様。グレースの家は・・・ここです。」
ルドルフはヒラリと馬から降りると言った。
「確かグレースは平民出身だったそうだな?その割には・・随分立派な屋敷に住んでいるんだな。」
エドガーも馬から降りた。
「ええ、そうです。それで・・父親が男爵家の爵位をお金で買って・・貴族となって僕とヒルダ様と同じ中学校に転校してきたんです。でも・・・転校初日で問題を起こして停学処分になってしまったので、その日のうちに退学したそうです。」
「な・・・何だって?!」
あまりにも突拍子もない話にエドガーは耳を疑い、そして思った。
(そうか・・・グレースは・・やはり俺が睨んだ通り・・相当な曲者の人間なのかもしれないな・・。)
「エドガー様?どうしましたか?」
ルドルフは雪の降り積もっていない常緑樹の下に馬の手綱をくくり付け終えると、エドガーを見た。
「いや・・グレースは・・相当わがままなお嬢さんなのかな・・と思ったのさ。」
エドガーもルドルフにならい、常緑樹の下に馬の手綱をくくり付けると、軽く首を撫でながら言った。
「悪いな、少しここで待っていてくれ。」
「・・・。」
その様子を黙って見ていたルドルフは思った。エドガーは、やはり心の優しい人物なのだとー。
コンコンコン
ドアノッカーを持つとルドルフは3回ドアをノックした。
「「・・・。」」
2人は少しの間、その場で待っていたが・・・なかなか人が現れる気配がない。
「ひょっとして・・留守なのだろうか・・?」
エドガーが首を傾げた時・・・。
ガチャリ・・
ドアが開けられた。現れたのは髪がぼさぼさに乱れ、古びたワインレッド色のロングワンピースを着た中年の女性・・グレースの母親だった。彼女はエドガーとルドルフを見ると、驚愕の表情を見せた。
「こ、これは・・・エドガー様に・・ま、まさか・・ルドルフ・・?あんた・・カウベリーに帰っていたのかい・・?!」
「はい、おばさん。昨日から帰ってきています。それで僕とエドガー様はグレースに会いに来たのですが・・いますか?」
すると、何故かグレースの母は笑みを浮かべると言った。
「ああ、そう・・そう言う事だったのかい?こんな家にもう人が尋ねてくるのは借金とりしかいないと思っていたけれども・・・そうかい。ついに・・私たちを・・・助けに来てくれたんだね?」
「え・・?」
ルドルフは何のことか分からずに戸惑っていたが、エドガーは難しい顔でグレースの母の様子をうかがっていた。
(あれがグレースの母親か・・・・それにしても・・・随分下卑た笑いをする人だな・・。おまけに何か盛大な勘違いをしているようだし・・・。)
「ささ、どうぞどうぞ・・何も無い屋敷ですが・・・中へ入って下さい。」
グレースの母は腰を低くしながら、ドアを大きく開け放し・・屋敷の中の様子が2人の目に飛び込んできた。
「え・・?」
「・・・!」
ルドルフとエドガーは目を見張った。何故2人が目を見張ったかと言うと・・・。
何も無い。がらんどうだったのだ。コート掛けはおろか、部屋を明るく照らすための照明も無ければ、カーテンもカーペットも何もかもが無い空間だった。
(そ、そんな・・!)
ルドルフはグレースの家に何度も行ったことがあるので、当時の家の様子を覚えている。それだけに、今目の前に広がるがらんどうな空間が信じられずにいたのだ。するとそんな考えに気がついたのか、グレースの母が言った。
「驚いたでしょう?実は・・・もう2年も前から・・我が家は家計が火の車だったんですよ。それで本当は・・・グレースは高校を卒業後に結婚することになっていたのだけど・・・あの教会の火事のせいで・・顔に大やけどを負って・・結婚の話が消えてしまったんだよ・・!全ては・・全てはあの娘のせいで・・・!!」
そして鬼のような形相を顔に浮かべた―。
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