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第6章 2 エドガーとルドルフ ①

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 今から約5カ月前の事―


「え?エドガー様。今・・何と言われたのですか?」

エドガーの部屋に呼ばれたマルコは眼を瞬たせた。

「だからマルコ、君の息子のルドルフに会わせて欲しいんだよ。」

「な・・何故息子に・・?」

「ルドルフと俺は年も1歳しか変わらないし、海外に留学していたんだろう?色々話を聞いてみたいんだよ。」

「ああ・・なるほど。そういう事ですね。かしこまりました。本日帰宅後、早速息子に話してみますね。幸い明日は土曜日。学校もありませんので。」

「ああ、よろしく頼むよ。」

エドガーは笑みを浮かべると、マルコは頭を下げてエドガーの部屋を後にした。
そしてマルコが去ると、エドガーは再び書類に目を落とした―。


 翌日、朝食後エドガーが自室で学校の勉強をしているとノックの音が聞こえた。

コンコン

「誰だ?」

エドガーは顔を上げてドアに声を掛けると外で声が聞こえた。

「マルコです。息子のルドルフを連れてきました。」

「そうか。中へ入ってくれ。」

エドガーが言うとガチャリとドアが開けられ、ルドルフとマルコが現れた。

「おはようございます。ルドルフです。僕に何か御用でしょうか?」

感情の伴わない無表情な顔でルドルフはエドガーに言う。

「ああ、少し2人だけで話がしたくてね・・・。悪いがマルコ、しばらくの間この部屋は人払いしておいてくれないか?」

「はい、かしこまりました。」

マルコは深々と頭を下げると、次にルドルフを見た。

「ルドルフ、くれぐれも失礼の無いようにな。この方は次期領主になられる方なのだから。」

「はい、分かりました。」

マルコは表情を変えず、返事をする。

「それでは失礼致します。」

マルコが去り、部屋のドアが閉められると室内はエドガーとルドルフの2人きりになった。

「ルドルフ、とりあえずそこのテーブルの椅子に掛けてくれ。」

エドガーは自室の中央に置かれた楕円形のテーブルセットに座るように声を掛けた。

「はい。」

ルドルフは素直に返事をすると、椅子に腰かける。その向かい側にエドガーは座ると早速質問をした。

「ルドルフ、君はずっと海外留学をしていたんだって?何所に行っていたんだ?」

「はい、『ペレニアル』と言う国へ行っておりました。」

「『ペレニアル』か・・・。ここから遙か西にある大陸だな。船で1週間位かかる場所にある。確かあそこは大陸の大半が砂漠で覆われている国で公用語は『ウルス語』だったかな?」

「はい、その通りです。よくご存じですね。流石、次期領主になられるお方ですね。」

「何故ルドルフはそんなに遠くの地へ行ったんだ?」

エドガーは顎に手を置くとルドルフを見た。

「ハイスクールに入学して、すぐに交換留学の話が出たんです。僕はそれに立候補したまでです。」

何所までも無表情で語るルドルフ。そんな彼の姿を見ると、エドガーの目にはヒルダの姿と重なって見えてしまう。

「そうか・・・。でも・・何もわざわざ海外海外留学に名乗りを上げる必要は無かったんじゃないか?」

エドガーはじっとルドルフの目を見ると言った。

「・・・海外へ行って自分の見分を広めたいと思った・・・それだけの事です。」

「本当に・・・それだけが理由なのか?」

「・・・。」

ルドルフは口を閉ざしてしまった。

「実はこの間、君とマルコの会話が聞こえてしまったんだ。君は以前・・ここに来るのを拒否していたらしいじゃないか?何故だ?」

「そ、それは・・・。」

ルドルフの瞳に暗い影が宿る。

「ルドルフ。ここには俺と君しかいない。人払いはしてあるんだ。誰もこの部屋に近付くことは無い。だから・・教えてくれ。」

エドガーは静かにルドルフに声をかける。

「それは・・・あの方を・・思い出してしまうからです・・・。」

「あの方?」

「はい・・。今は・・もうここにはいない・・ヒルダ・フィールズ様です・・・。」

ルドルフは苦しそうに顔を歪めながら、その名を口にした―。
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