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2章 11 夜の首都『ロータス』
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「お二人で合計、銀貨2枚になります。」
フランシスに言われてお金を支払ったカミラは申し訳なさそうに言った。
「お忙しい中・・来てしまってかえってご迷惑をおかけしてしまいましたね。」
「い、いやっ!何言ってるんですかっ!そもそも誘ったのもここに連れてきたのも俺なんです!それより・・・どうですか?このウェイター姿。似合ってますか?」
フランシスはヒルダを思い切り意識しながら尋ねた。
「ええ、よくお似合いですよ。」
カミラは笑顔で答える。
「そうね、私もそう思うわ。」
淡々と答えるヒルダだったが、それでもフランシスは天にも昇る程嬉しかった。
(ヒルダが・・・俺のウェイター姿を・・・似合うって言ってくれた・・・ッ!早速明日あいつらに言ってやろう!きっと羨ましがるに違いない・・・。)
フランシスは悪友?ルイス、カイン、マイクの顔を思い浮かべた。
(特にマイク・・・アイツには思い切り自慢してやらなくちゃな・・・。)
何故かフランシスは自分の中でマイクを勝手にライバル視していたのである。勿論当のマイクはフランシスにライバル視されているなど知る由も無かったのだが。
「それじゃ、ごちそうさまでした。」
カミラがフランシスに別れの挨拶をし、店を出ようとしたとき・・つい、フランシスはヒルダを引き留めてしまった。
「ヒ、ヒルダッ!」
「何?」
ヒルダは振り返ってフランシスを見た。
店の軒先に無数につるされたランタンのオレンジ色に揺れる炎に背後から照らされているヒルダの姿は、呼吸を忘れる程に美しかった。フランシスに本気で、この世界でヒルダにかなう美少女はいないだろうと思わせる程に―。
「どうしたの?ランドルフさん。」
ヒルダは外見だけでなく、その声もとても美しかった。
(一度でいいから笑った顔を見てみたいな・・・。)
フランシスはヒルダに見惚れるあまり、父親から呼ばれていることにすら気付いていなかった。
「ねえ、ランドルフさん。お父様に呼ばれてるわよ。」
ヒルダに諭され、初めてフランシスは我に返った。
「あ・・・ありがとう!ヒルダッ!くっそ・・それにしても父さんの奴め・・・。」
フランシスの言葉を耳にしたヒルダは言った。
「ランドルフさん、お父様の事を・・そんな風に言ってはいけないわ。」
その声は酷く寂しげだった。
「え・・?ヒルダ・・・?」
ヒルダはフランシスから目を伏せると言った。
「お父様を・・・どうか大切にしてあげて・・。」
「あ、あ・・・ご、ごめん・・そうだね・・・。」
ヒルダに言われたフランシスは何故か急に父親に対しての行いが良くないものだったと思い、途端に恥ずかしくなってしまった。
「今夜は来てくれてありがとうっ!それじゃ俺はまだ仕事があるから・・2人共、気を付けて帰ってくれよ!」
フランシスは元気よく手を振ってヒルダとカミラを見送った―。
辻馬車に揺られながらヒルダはカミラに言った。
「ねえ、カミラ。」
「はい、何でしょうか?」
「今日はありがとう。レストランに連れてきてくれて・・。お陰で気分転換が出来たわ。」
「ヒルダ様・・・。また、2人で一緒に食事に行きましょうね。」
「ええ、そうね。」
そしてヒルダは馬車の窓から外を眺めた。今夜は『ロータス』の町が誕生した記念日・・・。町中はまるでクリスマスの様にカラフルなイルミネーションで溢れかえり、幻想的なムードに満ち溢れていた。
「カミラ・・・この町の夜は・・・美しいわよね・・・。私ね、アパートメントから見える『ロータス』の夜の町の景色が好きなの。これを見られれば・・カウベリーの事を諦められるほどに・・・。だからカミラには本当に感謝してるのよ?ありがとう、カミラ。」
ヒルダはカミラの手を握ると言った。
「ヒルダ様・・・いえ、私の方こそ・・・・!」
そしてカミラはヒルダの手を握り返すのだった―。
フランシスに言われてお金を支払ったカミラは申し訳なさそうに言った。
「お忙しい中・・来てしまってかえってご迷惑をおかけしてしまいましたね。」
「い、いやっ!何言ってるんですかっ!そもそも誘ったのもここに連れてきたのも俺なんです!それより・・・どうですか?このウェイター姿。似合ってますか?」
フランシスはヒルダを思い切り意識しながら尋ねた。
「ええ、よくお似合いですよ。」
カミラは笑顔で答える。
「そうね、私もそう思うわ。」
淡々と答えるヒルダだったが、それでもフランシスは天にも昇る程嬉しかった。
(ヒルダが・・・俺のウェイター姿を・・・似合うって言ってくれた・・・ッ!早速明日あいつらに言ってやろう!きっと羨ましがるに違いない・・・。)
フランシスは悪友?ルイス、カイン、マイクの顔を思い浮かべた。
(特にマイク・・・アイツには思い切り自慢してやらなくちゃな・・・。)
何故かフランシスは自分の中でマイクを勝手にライバル視していたのである。勿論当のマイクはフランシスにライバル視されているなど知る由も無かったのだが。
「それじゃ、ごちそうさまでした。」
カミラがフランシスに別れの挨拶をし、店を出ようとしたとき・・つい、フランシスはヒルダを引き留めてしまった。
「ヒ、ヒルダッ!」
「何?」
ヒルダは振り返ってフランシスを見た。
店の軒先に無数につるされたランタンのオレンジ色に揺れる炎に背後から照らされているヒルダの姿は、呼吸を忘れる程に美しかった。フランシスに本気で、この世界でヒルダにかなう美少女はいないだろうと思わせる程に―。
「どうしたの?ランドルフさん。」
ヒルダは外見だけでなく、その声もとても美しかった。
(一度でいいから笑った顔を見てみたいな・・・。)
フランシスはヒルダに見惚れるあまり、父親から呼ばれていることにすら気付いていなかった。
「ねえ、ランドルフさん。お父様に呼ばれてるわよ。」
ヒルダに諭され、初めてフランシスは我に返った。
「あ・・・ありがとう!ヒルダッ!くっそ・・それにしても父さんの奴め・・・。」
フランシスの言葉を耳にしたヒルダは言った。
「ランドルフさん、お父様の事を・・そんな風に言ってはいけないわ。」
その声は酷く寂しげだった。
「え・・?ヒルダ・・・?」
ヒルダはフランシスから目を伏せると言った。
「お父様を・・・どうか大切にしてあげて・・。」
「あ、あ・・・ご、ごめん・・そうだね・・・。」
ヒルダに言われたフランシスは何故か急に父親に対しての行いが良くないものだったと思い、途端に恥ずかしくなってしまった。
「今夜は来てくれてありがとうっ!それじゃ俺はまだ仕事があるから・・2人共、気を付けて帰ってくれよ!」
フランシスは元気よく手を振ってヒルダとカミラを見送った―。
辻馬車に揺られながらヒルダはカミラに言った。
「ねえ、カミラ。」
「はい、何でしょうか?」
「今日はありがとう。レストランに連れてきてくれて・・。お陰で気分転換が出来たわ。」
「ヒルダ様・・・。また、2人で一緒に食事に行きましょうね。」
「ええ、そうね。」
そしてヒルダは馬車の窓から外を眺めた。今夜は『ロータス』の町が誕生した記念日・・・。町中はまるでクリスマスの様にカラフルなイルミネーションで溢れかえり、幻想的なムードに満ち溢れていた。
「カミラ・・・この町の夜は・・・美しいわよね・・・。私ね、アパートメントから見える『ロータス』の夜の町の景色が好きなの。これを見られれば・・カウベリーの事を諦められるほどに・・・。だからカミラには本当に感謝してるのよ?ありがとう、カミラ。」
ヒルダはカミラの手を握ると言った。
「ヒルダ様・・・いえ、私の方こそ・・・・!」
そしてカミラはヒルダの手を握り返すのだった―。
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