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第2部 1章 1 セロニア学園高等学校
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早いものでヒルダがロータスに移り住んでから1年が経過していた。
ここは海に面した大都市でカウベリーとは比較にならない位の大きな町であり、誰もヒルダのカウベリーでの事件を知る者はいなかった。その為、この地はヒルダに取ってはある意味住みやすい町であったのだが・・・あの田舎町で起こった事件のせいで壮絶な体験をしてきたヒルダは人格がすっかり変わってしまっていた。
ヒルダは現在「セロニア学園高等学校」の1年生である。この学園は貴族だけではなく、お金さえあれば平民も通う事が出来る学園だ。その為に貴族派と金持ち財閥の派閥と2分極されていた。
そしてこの学園に入学と同時に、生徒たちはそれぞれの派閥に所属する事になるのだが、ヒルダだけは何処の派閥に入る事も無かった。
何故ならヒルダは爵位を剥奪された貴族であり、ハリスからは年に金貨50枚を貰っている為、金持ちの部類にも属する立ち位置だったからである。
それに、ヒルダは派閥事態を馬鹿らしい事だと思っていたので、敢えてどこの派閥にも属さなかったのである。
その為・・・学園内でのヒルダに対する風当たりは強い物であった。
朝―
ヒルダは左脚を引きずりながら登校してきた。ヒルダは毎日の足のマッサージやリハビリ運動を頑張って続けていた為、今では足を引きずるものの、杖をつかなくても大分歩けるようになっていた。
慎重に階段の手すりにつかまりながら、2階にある自分のクラスへ向かっていると、踊り場で貴族派閥の令嬢達がたむろしていた。そしてヒルダを見ると言った。
「あら~誰かと思ったら、何処の派閥にも属さない変わり者のヒルダじゃないの?」
リーダー格のダフネ・モーガンが言った。
「ええ、そうよ。教室へ入りたいの。そこをどいてくれる?」
ヒルダは眉1つ動かさずに言う。
「チッ!相変わらず不愛想な女ね・・・喜怒哀楽も無い、まるでお人形のような・・。」
ダフネは貴族令嬢らしからぬ舌打ちをするとヒルダを睨み付けた。しかし、ヒルダは大して気にも留めない様子で言った。
「分かったなら、そこを通してくれる?」
すると別の少女が言った。
「そんなにここを通して欲しいならさあ・・お金を置いて行ってくれない?噂に聞いたけど・・あんた、親から相当お金を貰っているそうじゃないの?」
腕組みをしながら少女は言う。
「・・・何処でそんな話を聞いたのかは知らないけれど・・。私が援助して貰える期間は高校に通う3年間だけなの。高校を卒業すれば、私は何処か就職先を見つけて働かなくてはならないの。だから決して余裕がある訳では無いわ。分かったなら・・・ここを通して貰える?」
ヒルダは表情を崩さずに淡々と語る。
「あら、そう。なら通ればいいでしょう?」
ダフネは肩をすくめると、踊り場の隅に移動した。
「・・・」
ヒルダは手すりにつかまりながら再び階段を上り続け、踊り場にようやく到着した。大分リハビリで歩けるようにはなったが、やはり階段の上り下りは息が切れる。
そしてヒルダが次の階段に向って歩始めた時・・ダフネの足が伸びて来るとヒルダの前に足を差し出した。
「!」
咄嗟の事でヒルダは危うく転びそうになったが、何とか手すりにしがみ付き、転倒する事だけは免れた。
「何をするの?」
ヒルダは努めて冷静にダフネに尋ねた。
「あら?何の事かしら?」
「とぼけないで、貴女は今私に足を引っかけて転ばそうとしたでしょう?」
「さあね~証拠は何処にあるのかしら?ねえ、皆?」
ダフネを含めた取り巻きの3名の貴族令嬢達はクスクスと冷たい笑いを浮かべてこちらを見ている。
「そうね。確かに証拠はないかもね・・・。」
そこでヒルダは冷めた目で彼女達を一瞥すると、ダフネ達の前を素通りして再び階段をゆっくり登り始めた。
「な・何なのよっ!あのヒルダの態度は・・・!」
背後ではダフネの悔しそうな声が踊り場に響き渡るのだった—。
ここは海に面した大都市でカウベリーとは比較にならない位の大きな町であり、誰もヒルダのカウベリーでの事件を知る者はいなかった。その為、この地はヒルダに取ってはある意味住みやすい町であったのだが・・・あの田舎町で起こった事件のせいで壮絶な体験をしてきたヒルダは人格がすっかり変わってしまっていた。
ヒルダは現在「セロニア学園高等学校」の1年生である。この学園は貴族だけではなく、お金さえあれば平民も通う事が出来る学園だ。その為に貴族派と金持ち財閥の派閥と2分極されていた。
そしてこの学園に入学と同時に、生徒たちはそれぞれの派閥に所属する事になるのだが、ヒルダだけは何処の派閥に入る事も無かった。
何故ならヒルダは爵位を剥奪された貴族であり、ハリスからは年に金貨50枚を貰っている為、金持ちの部類にも属する立ち位置だったからである。
それに、ヒルダは派閥事態を馬鹿らしい事だと思っていたので、敢えてどこの派閥にも属さなかったのである。
その為・・・学園内でのヒルダに対する風当たりは強い物であった。
朝―
ヒルダは左脚を引きずりながら登校してきた。ヒルダは毎日の足のマッサージやリハビリ運動を頑張って続けていた為、今では足を引きずるものの、杖をつかなくても大分歩けるようになっていた。
慎重に階段の手すりにつかまりながら、2階にある自分のクラスへ向かっていると、踊り場で貴族派閥の令嬢達がたむろしていた。そしてヒルダを見ると言った。
「あら~誰かと思ったら、何処の派閥にも属さない変わり者のヒルダじゃないの?」
リーダー格のダフネ・モーガンが言った。
「ええ、そうよ。教室へ入りたいの。そこをどいてくれる?」
ヒルダは眉1つ動かさずに言う。
「チッ!相変わらず不愛想な女ね・・・喜怒哀楽も無い、まるでお人形のような・・。」
ダフネは貴族令嬢らしからぬ舌打ちをするとヒルダを睨み付けた。しかし、ヒルダは大して気にも留めない様子で言った。
「分かったなら、そこを通してくれる?」
すると別の少女が言った。
「そんなにここを通して欲しいならさあ・・お金を置いて行ってくれない?噂に聞いたけど・・あんた、親から相当お金を貰っているそうじゃないの?」
腕組みをしながら少女は言う。
「・・・何処でそんな話を聞いたのかは知らないけれど・・。私が援助して貰える期間は高校に通う3年間だけなの。高校を卒業すれば、私は何処か就職先を見つけて働かなくてはならないの。だから決して余裕がある訳では無いわ。分かったなら・・・ここを通して貰える?」
ヒルダは表情を崩さずに淡々と語る。
「あら、そう。なら通ればいいでしょう?」
ダフネは肩をすくめると、踊り場の隅に移動した。
「・・・」
ヒルダは手すりにつかまりながら再び階段を上り続け、踊り場にようやく到着した。大分リハビリで歩けるようにはなったが、やはり階段の上り下りは息が切れる。
そしてヒルダが次の階段に向って歩始めた時・・ダフネの足が伸びて来るとヒルダの前に足を差し出した。
「!」
咄嗟の事でヒルダは危うく転びそうになったが、何とか手すりにしがみ付き、転倒する事だけは免れた。
「何をするの?」
ヒルダは努めて冷静にダフネに尋ねた。
「あら?何の事かしら?」
「とぼけないで、貴女は今私に足を引っかけて転ばそうとしたでしょう?」
「さあね~証拠は何処にあるのかしら?ねえ、皆?」
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「そうね。確かに証拠はないかもね・・・。」
そこでヒルダは冷めた目で彼女達を一瞥すると、ダフネ達の前を素通りして再び階段をゆっくり登り始めた。
「な・何なのよっ!あのヒルダの態度は・・・!」
背後ではダフネの悔しそうな声が踊り場に響き渡るのだった—。
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