上 下
80 / 566

第7章 3 グレースの出した条件

しおりを挟む
「そ、それで・・・俺達に何をして欲しいんだよ。」

イワンはビクビクしながらグレースを見た。イワンは自分がハチの巣を叩き落としているので、グレースの脅迫が誰よりも怖かった。

「ヒルダを呼び出すからあなた達にも協力して欲しいのよ。」

グレースは3人を見渡すと言った。

「ルドルフったらヒルダと婚約を破棄したのに、未だに私に振り向いてくれないのよ。きっと何かヒルダがルドルフに入れ知恵しているに決まっているわ。だっておかしいと思わない?ルドルフは以前は私にとても親切にしてくれていたのよ?放課後は毎日私の家へ来て勉強を教えてくれていたのに・・今のルドルフは私の馬車での送り迎えを嫌がるのよ?折角毎日迎えに行ってるのに・・・。」

その話を聞いて驚いたのはコリンだった。

「な・・何だって・・?そ、それじゃグレース。お前が・・・朝は遅刻、帰りは早退していたのは・・ひょっとしてルドルフの送り迎えの為だったのか?」

「そうよ?何か文句あるの?お父さんが多額の寄付を学校にしてくれたから、毎日の遅刻や早退を多めに見て貰えてるのよ。」

「そ、そんな・・・何て身勝手な・・・。」

ノラは思わず本音を口走ってしまった。するとグレースはノラをキッと睨み付けると言った。

「何よ。そもそも貧しいあなた達でも学校に通えるのは私達のようなお金持ちの家の寄付があるから、通えているのよ?私とあなた達を一緒にしないでよ。学校にだって文句を言わせないわよ。」

何所までも傲慢なグレースの態度に3人の友人達は呆れてしまった。しかし、家が貧しい彼らはグレースの言いなりになっていれば自分達にも何らかのおこぼれがあるので、何も言い返す事が出来なった。

「分かったよ、グレース。それで俺達が協力したら・・・さっき言っていた事・・約約束してくれるんだよな?」

コリンは念を押すようにグレースに尋ねた。

「ええ、勿論よ。皆に温かいコートを買ってあげると約束するわ。」

「本当?!絶対に約束は守ってね?」

ノラは温かいコートが手に入ると思うと嬉しくてたまらず、笑顔で言った。

「ええ、ただしそれには条件があるわよ。」

「「「条件・・・?」」」

3人は声を揃えた。

「ルドルフが私の方へ戻ってくれないとコートはプレゼントしてあげないからね。」

グレースの無茶な条件に3人の顔が曇った。

(ルドルフの気持なんか俺達がどうこう出来るはずないだろう?!)

コリンは悔しそうに歯を食いしばった

(酷いわ・・・グレース。私達を利用するだけして、約束を破るつもりかしら・・。)

(ルドルフにグレースと仲良くしてやってくれと頼めばいいのかな?)

イワンは1人のんびり構えている。

「でも、とにかくまずは私がヒルダをここに連れて来るから、私達全員でヒルダを説得するのよ?私の元へルドルフが戻って来るように伝えろって。」

グレースは腰に腕を当てると言った。

「わ、分かったよ・・。」

 彼等には内緒にしていたが、今のグレースはルドルフを取り戻す為には手段を選んでいられる余裕が無かったのだ。何故ならグレースの父親が事業で負債を作ってしまい、借金を肩代わりしてくれた金持ちの男性がいた。そしてこの男性が肩代わりした代償にグレースが18歳になったら妻として迎えたいと婚約を申し出てきたのだ。しかもこの男性は32歳とグレースとは一回り以上年が離れていたのだった。

(いやよ・・・どうして私があんな年上の男の人と将来結婚しなくちゃならないの?ハンサムな人ならまだ我慢できるけど・・あんなに醜く太っている男の人となんて・・!ルドルフが私と婚約してくれれば・・結婚を断る事が出来るのよ!)

ルドルフは爵位を貰って今は男爵の身分を持っている。かたや相手の男は金持ちだが爵位は無い。きっと爵位のある男性と婚約が決まっていると伝えれば、相手の男は自分との婚約を結ぶことを諦めてくれるだろう・・・。

グレースはそう考えていたのだった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ
恋愛
身に覚えのない罪で婚約破棄のはずが、何故かヒロインを立派な令嬢にするために引き取ることになってしまった! 結果によってはやっぱり婚約破棄? 血の繋がりがない婚約者と子爵令嬢が兄妹?いったいどういう意味? 虐められていたのは本当?黒幕は別?混乱する公爵令嬢を転生兄妹が守り抜いたら、別の公爵令嬢に悪役フラグが立った!

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

あなたに愛や恋は求めません

灰銀猫
恋愛
婚約者と姉が自分に隠れて逢瀬を繰り返していると気付いたイルーゼ。 婚約者を諫めるも聞く耳を持たず、父に訴えても聞き流されるばかり。 このままでは不実な婚約者と結婚させられ、最悪姉に操を捧げると言い出しかねない。 婚約者を見限った彼女は、二人の逢瀬を両親に突きつける。 貴族なら愛や恋よりも義務を優先すべきと考える主人公が、自分の場所を求めて奮闘する話です。 R15は保険、タグは追加する可能性があります。 ふんわり設定のご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。 24.3.1 女性向けHOTランキングで1位になりました。ありがとうございます。

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

処理中です...