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第2章 5 待ちぼうけ
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「ルドルフ・・・遅いな・・・。」
ヒルダは厩舎の前のベンチに座ってルドルフがやって来るのを待っていた。約束の時間はとうに過ぎ、もう1時間近くヒルダは待っていたのだ。
そこへ作業を終えたマルコが戻り、ヒルダがベンチに座っている姿を見ると驚いた。
「ヒ、ヒルダお嬢様?まだこちらにいらしたのですか?」
「ええ。ルドルフが・・・まだ来ないの。」
ヒルダはマルコを見上げながら言った。
「あ・・・あいつは・・一体何を考えているんだ?!ヒルダお嬢様をこんなにも長く待たせて・・・!」
マルコは怒りのあまり両手を握りしめた。その様子を見たヒルダは慌てた。
(いけない!このままじゃ・・・ルドルフは後でマルコさんに怒られてしまうわ!)
「待って下さい、マルコさん。どうか・・ルドルフを怒らないでください。きっとルドルフ・・何か大事な用事が出来たと思うんです。そうでなければ約束を破る人じゃないのは私は良く知っています。だから・・どうか絶対にルドルフを怒らないと約束して貰えませんか・・?」
ヒルダは必死でマルコに訴えた。
(わたしのせいで・・・ルドルフが起こられるなんて絶対嫌だわ・・・。)
「わ・・分かりました・・。ヒルダ様がそこまでおっしゃるのであれば・・ルドルフを怒るのはやめにします。その変わり何故約束を守れなかったのか・・理由だけは問い詰めます。それでよろしいですか?」
「ええ。私はそれで大丈夫。それじゃ・・・マルコさん。私・・今日はもう部屋に戻るわ。大分日も薄暗くなってきたし・・・。」
ヒルダは立ち上がると言った。
「そうですね・・・。また明日練習をなさればよいです。ルドルフが来れないのであれば、明日は私がヒルダ様の練習にお付き合いしますので。」
「いいえ、マルコさん。お仕事の手を煩わせるわけにはいかないので、大丈夫です。もしルドルフの都合が明日もつかないのであれば、1人で乗馬の練習をするから気にしないで下さい。それではまた明日来ますね。」
ヒルダは頭を下げると、屋敷へと帰って行った。その後ろ姿は・・・酷く悲しげだった。
「ヒルダ様・・・。」
マルコはそんなヒルダの後姿をいつまでも見届けていた―。
その日の夜―
ヒルダは父と母の3人で夕食を食べていた。
「どうした?ヒルダ。あまり食が進んでいないようだが?」
父ハリスはいつになく娘のヒルダが食事に手を付けていないのが気になり声を掛けてきた。
「そうね・・朝は元気だったのに、家に帰ってからは元気が無いわ。何かあったの?」
マーガレットは心配そうに尋ねる。ヒルダは困った。まさか自分が元気が無いのは本日ルドルフと2人で乗馬の練習をするはずだったのに彼が現れなかったからだと両親に告げる事が出来ないからだ。
特に問題なのは父ハリスである。ハリスはルドルフの話になると妙に神経過敏になる。実はルドルフと2人で乗馬の練習をするのもハリスには内緒の話だったからだ。
「ううん、何でもないの。ただ・・あまり乗馬の練習が進んでいないからよ。それじゃ・・・私食欲があまり無いので・・・先に部屋に戻らせて頂きます。」
ヒルダは口元をナフキンでぬぐうと、カタンと席を立ってダイニングを後にした。
そんなヒルダを見送りながらマーガレットは言った。
「ヒルダ・・・大丈夫かしら・・・。」
「う、うむ・・・。」
「大体、貴方がいけないのですよっ!」
マーガレットはキッとハリスを睨み付けた。
「な、何故私がいけないのだ?!」
「ヒルダはもともと乗馬が苦手なのですっ!いいですか?ヒルダの為にきちんとした乗馬の先生を探して付けてあげて下さいっ!私も気分が悪いので下がります。」
マーガレットはガタンと席を立った。
「お、おい・・お前まで・・・。」
「知りません!」
そしてマーガレットは席を立ち・・ハリスは1人寂しくダイニングにとり残されるのだった―。
ヒルダは厩舎の前のベンチに座ってルドルフがやって来るのを待っていた。約束の時間はとうに過ぎ、もう1時間近くヒルダは待っていたのだ。
そこへ作業を終えたマルコが戻り、ヒルダがベンチに座っている姿を見ると驚いた。
「ヒ、ヒルダお嬢様?まだこちらにいらしたのですか?」
「ええ。ルドルフが・・・まだ来ないの。」
ヒルダはマルコを見上げながら言った。
「あ・・・あいつは・・一体何を考えているんだ?!ヒルダお嬢様をこんなにも長く待たせて・・・!」
マルコは怒りのあまり両手を握りしめた。その様子を見たヒルダは慌てた。
(いけない!このままじゃ・・・ルドルフは後でマルコさんに怒られてしまうわ!)
「待って下さい、マルコさん。どうか・・ルドルフを怒らないでください。きっとルドルフ・・何か大事な用事が出来たと思うんです。そうでなければ約束を破る人じゃないのは私は良く知っています。だから・・どうか絶対にルドルフを怒らないと約束して貰えませんか・・?」
ヒルダは必死でマルコに訴えた。
(わたしのせいで・・・ルドルフが起こられるなんて絶対嫌だわ・・・。)
「わ・・分かりました・・。ヒルダ様がそこまでおっしゃるのであれば・・ルドルフを怒るのはやめにします。その変わり何故約束を守れなかったのか・・理由だけは問い詰めます。それでよろしいですか?」
「ええ。私はそれで大丈夫。それじゃ・・・マルコさん。私・・今日はもう部屋に戻るわ。大分日も薄暗くなってきたし・・・。」
ヒルダは立ち上がると言った。
「そうですね・・・。また明日練習をなさればよいです。ルドルフが来れないのであれば、明日は私がヒルダ様の練習にお付き合いしますので。」
「いいえ、マルコさん。お仕事の手を煩わせるわけにはいかないので、大丈夫です。もしルドルフの都合が明日もつかないのであれば、1人で乗馬の練習をするから気にしないで下さい。それではまた明日来ますね。」
ヒルダは頭を下げると、屋敷へと帰って行った。その後ろ姿は・・・酷く悲しげだった。
「ヒルダ様・・・。」
マルコはそんなヒルダの後姿をいつまでも見届けていた―。
その日の夜―
ヒルダは父と母の3人で夕食を食べていた。
「どうした?ヒルダ。あまり食が進んでいないようだが?」
父ハリスはいつになく娘のヒルダが食事に手を付けていないのが気になり声を掛けてきた。
「そうね・・朝は元気だったのに、家に帰ってからは元気が無いわ。何かあったの?」
マーガレットは心配そうに尋ねる。ヒルダは困った。まさか自分が元気が無いのは本日ルドルフと2人で乗馬の練習をするはずだったのに彼が現れなかったからだと両親に告げる事が出来ないからだ。
特に問題なのは父ハリスである。ハリスはルドルフの話になると妙に神経過敏になる。実はルドルフと2人で乗馬の練習をするのもハリスには内緒の話だったからだ。
「ううん、何でもないの。ただ・・あまり乗馬の練習が進んでいないからよ。それじゃ・・・私食欲があまり無いので・・・先に部屋に戻らせて頂きます。」
ヒルダは口元をナフキンでぬぐうと、カタンと席を立ってダイニングを後にした。
そんなヒルダを見送りながらマーガレットは言った。
「ヒルダ・・・大丈夫かしら・・・。」
「う、うむ・・・。」
「大体、貴方がいけないのですよっ!」
マーガレットはキッとハリスを睨み付けた。
「な、何故私がいけないのだ?!」
「ヒルダはもともと乗馬が苦手なのですっ!いいですか?ヒルダの為にきちんとした乗馬の先生を探して付けてあげて下さいっ!私も気分が悪いので下がります。」
マーガレットはガタンと席を立った。
「お、おい・・お前まで・・・。」
「知りません!」
そしてマーガレットは席を立ち・・ハリスは1人寂しくダイニングにとり残されるのだった―。
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