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第1章 7 食欲の無い朝
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翌朝―
「ヒルダ様?朝ですよ。朝食はどうされるのですか?奥様と旦那様がお待ちですよ?」
メイドのカミラがヒルダの部屋のドアをノックしている音が聞こえているが、ヒルダはドアを開ける事無く、ベッドの中で言った。
「ごめんなさい。カミラ。今朝は食欲が無いの。馬車の中で・・・サンドイッチでも食べるわ。用意して貰える?お父様とお母様には朝食の席に行きませんと伝えてくれる?」
するとカミラの声が聞こえた。
「はい、では伝えておきます。サンドイッチも用意しておきますからヒルダ様は学校へ行く準備をなさって下さい。」
「ありがとう、カミラ。」
ヒルダは言うと、ベッドから起き上がって制服に着替えた。
「そうか・・・ヒルダは朝食を食べに来ないのか・・・。」
父・ハリスは溜息をつきながら言った。
「あなた・・・どうするんですか?あの子、相当昨夜の話がショックだったようですよ?」
マーガレットは心配そうに尋ねた。
「・・こうなったら無理やりにでも見合いをさせるしか無いだろう。先方に連絡を入れて週末ヒルダと会わせるようセッティングするしかあるまい。ラッセル家の令息が今一番ヒルダに会いたいとアプローチしているから・・・その彼とヒルダを会わせるのだ。」
「そんな勝手な事をして・・・大丈夫ですか?」
「仕方あるまい。ヒルダがルドルフとかいう少年に興味を持ちさえしなければ、これ程焦る必要は無かったが・・何としても平民の息子をフィールズ家に入れる訳にはいかないからな。」
そしてハリスは食事を再開したが、マーガレットはヒルダの事を思い、胸を痛めるのだった—。
ヒルダは馬車の中にいた。カミラにお願いして作って貰ったサンドイッチがバスケットの中に入っているが、食欲など皆無だった。丁度その時、ルドルフの2人の友人がこちらへ歩いて来るのが見えた。
(そうだっ!あの人達に・・!)
「すみません!馬車を止めてっ!」
ヒルダは御者に言うと、すぐに馬車を止めてくれた。ヒルダはバスケットを持って馬車から降りると、イワンとコリンの元へ向かった。
「あ、あの・・おはようございます。」
ヒルダは恥ずかしそうに俯きながら言った。
「あん?何だ・・お前。確かヒルダお嬢様・・・だっけ?」
イワンがヒルダをジロジロ見た。
「俺達に何の用だよ。言っておくが、ルドルフはもう俺達と登校していないからな?」
「はい、それは知っています。実はお2人にサンドイッチを食べて頂けないかと思って・・・。」
ヒルダはおずおずとバスケットを差し出し、中を開けた。するとそこには野菜サンドに卵サンド、フルーツサンドが入っている。
2人の少年はあまりの美味しそうなサンドイッチにつばを飲み込んだ。
「な、なんだよっ!俺達を・・ば、買収でもしようとしてるのか?」
「貴族の施しなんか受けるかよ。」
イワンとコリンが交互に言う。
「いえ、施しでは無くて・・・私が食欲が無いので・・お2人に食べて頂けたら・・・と思って。」
それを聞いてコリンがイワンに言った。
「おい、どうする?」
「う~ん・・・まあ・・せっかくだしな・・・よし、仕方ないから貰ってやる!」
イワンは言いながらヒルダの手からバスケットを乱暴に受け取ると言った。
「言っておくけど、俺達はこれ位じゃ懐柔なんかされないからな。」
「ええ。私もそんなつもりは少しもありませんから。受け取って頂いて有難うございます。」
ヒルダは上品に礼を言うと、馬車へと戻って行った。そしてヒルダを乗せた馬車が通り過ぎるのを見届けた後、コリンが言った。
「・・・貴族にもあんな奴がいるんだな・・・。」
「さあな、単にあいつが変わり者なんじゃないか?それより早く食おうぜっ!」
イワンは早速卵サンドを取るとかぶりついた。
「う・・うんめえっ!これが貴族の食事かよっ!」
「お、おいっ!独り占めする気かっ?!」
コリンは慌てて、野菜サンドを手に取るとムシャムシャと食べながら言った。
「なあ・・あの女・・・泣いてたんじゃないのか?目が真っ赤だったぞ?」
「そうか?俺は気付かなかったけどなあ?」
そして2人の少年は食べ歩きしながら学校へと向かった―。
「ヒルダ様?朝ですよ。朝食はどうされるのですか?奥様と旦那様がお待ちですよ?」
メイドのカミラがヒルダの部屋のドアをノックしている音が聞こえているが、ヒルダはドアを開ける事無く、ベッドの中で言った。
「ごめんなさい。カミラ。今朝は食欲が無いの。馬車の中で・・・サンドイッチでも食べるわ。用意して貰える?お父様とお母様には朝食の席に行きませんと伝えてくれる?」
するとカミラの声が聞こえた。
「はい、では伝えておきます。サンドイッチも用意しておきますからヒルダ様は学校へ行く準備をなさって下さい。」
「ありがとう、カミラ。」
ヒルダは言うと、ベッドから起き上がって制服に着替えた。
「そうか・・・ヒルダは朝食を食べに来ないのか・・・。」
父・ハリスは溜息をつきながら言った。
「あなた・・・どうするんですか?あの子、相当昨夜の話がショックだったようですよ?」
マーガレットは心配そうに尋ねた。
「・・こうなったら無理やりにでも見合いをさせるしか無いだろう。先方に連絡を入れて週末ヒルダと会わせるようセッティングするしかあるまい。ラッセル家の令息が今一番ヒルダに会いたいとアプローチしているから・・・その彼とヒルダを会わせるのだ。」
「そんな勝手な事をして・・・大丈夫ですか?」
「仕方あるまい。ヒルダがルドルフとかいう少年に興味を持ちさえしなければ、これ程焦る必要は無かったが・・何としても平民の息子をフィールズ家に入れる訳にはいかないからな。」
そしてハリスは食事を再開したが、マーガレットはヒルダの事を思い、胸を痛めるのだった—。
ヒルダは馬車の中にいた。カミラにお願いして作って貰ったサンドイッチがバスケットの中に入っているが、食欲など皆無だった。丁度その時、ルドルフの2人の友人がこちらへ歩いて来るのが見えた。
(そうだっ!あの人達に・・!)
「すみません!馬車を止めてっ!」
ヒルダは御者に言うと、すぐに馬車を止めてくれた。ヒルダはバスケットを持って馬車から降りると、イワンとコリンの元へ向かった。
「あ、あの・・おはようございます。」
ヒルダは恥ずかしそうに俯きながら言った。
「あん?何だ・・お前。確かヒルダお嬢様・・・だっけ?」
イワンがヒルダをジロジロ見た。
「俺達に何の用だよ。言っておくが、ルドルフはもう俺達と登校していないからな?」
「はい、それは知っています。実はお2人にサンドイッチを食べて頂けないかと思って・・・。」
ヒルダはおずおずとバスケットを差し出し、中を開けた。するとそこには野菜サンドに卵サンド、フルーツサンドが入っている。
2人の少年はあまりの美味しそうなサンドイッチにつばを飲み込んだ。
「な、なんだよっ!俺達を・・ば、買収でもしようとしてるのか?」
「貴族の施しなんか受けるかよ。」
イワンとコリンが交互に言う。
「いえ、施しでは無くて・・・私が食欲が無いので・・お2人に食べて頂けたら・・・と思って。」
それを聞いてコリンがイワンに言った。
「おい、どうする?」
「う~ん・・・まあ・・せっかくだしな・・・よし、仕方ないから貰ってやる!」
イワンは言いながらヒルダの手からバスケットを乱暴に受け取ると言った。
「言っておくけど、俺達はこれ位じゃ懐柔なんかされないからな。」
「ええ。私もそんなつもりは少しもありませんから。受け取って頂いて有難うございます。」
ヒルダは上品に礼を言うと、馬車へと戻って行った。そしてヒルダを乗せた馬車が通り過ぎるのを見届けた後、コリンが言った。
「・・・貴族にもあんな奴がいるんだな・・・。」
「さあな、単にあいつが変わり者なんじゃないか?それより早く食おうぜっ!」
イワンは早速卵サンドを取るとかぶりついた。
「う・・うんめえっ!これが貴族の食事かよっ!」
「お、おいっ!独り占めする気かっ?!」
コリンは慌てて、野菜サンドを手に取るとムシャムシャと食べながら言った。
「なあ・・あの女・・・泣いてたんじゃないのか?目が真っ赤だったぞ?」
「そうか?俺は気付かなかったけどなあ?」
そして2人の少年は食べ歩きしながら学校へと向かった―。
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