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第89話 あなたについていきますっ!

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 ガラガラと馬車は走り続け、ついにアルフォンス家に到着した。

馬車が門をくぐり抜け、巨大な屋敷の大扉の前に到着すると馬車は停車した。

「よし、到着したな。お前たち準備はいいか?」

ベルナルド王子が3人の腰巾着達に声を掛ける。

「いいわけ無いでしょう?何も戦いの準備が出来ていないのに?」

「本当に降りないといけないのですか?我々は丸腰なんですよ?」

「帰りたい…今すぐ家に帰りたい…」

マテオ、オーランド、アークが同時に声をあげる。

「あなたたち、何情けないことを言ってるのよ?!ユリアさんの危機なのよっ?!四の五の言わずにさっさと降りなさいっ」

テレシアは3人の腰巾着達に命令を下し、彼らは渋々馬車から降りてゆく。マテオ達はいつの間にかテレシアの腰巾着へと成り下がっていた。

「よし、我らも降りるぞ?」

ベルナルド王子が私の方を振り返ると言った。

「はい、ありがとうございます」

そして私とベルナルド王子も馬車を降りると御者に命じた。

「おい、いいか?我らがこの屋敷に入って1時間たっても出てこなければ城に行き、応援を呼んできてくれ」

「えっ?!何ですか、それはっ!」

オーランドが声を上げる。

「何だ?何か問題でもあるのか?」

ベルナルド王子の問いかけにアークが喚いた。

「問題ありです!おおありですっ!」

「何で1時間て時間を設定するんですか?!普通だったら今すぐに応援を呼んでくるでしょうっ?!」

マテオが馬車をバシバシ叩きながら言う。

「あの~…私はどうしたらいいのでしょう…」

御者の男性が困り顔で言う。そこで私は言った。

「屋敷の外も危険があるかもしれません。直ぐにここから立ち去って応援を呼んできた方がいいでしょう。何しろ敵は恐ろしい程の強さを持っていますから」

「わ、分りました!今すぐにここから逃げますっ!」

その言葉を聞いた御者は手綱を握ると恐ろしい速度で馬車を走らせ、あっという間に見えなくなってしまった。

フフフ…ああいう言い方をすればきっとすぐにでも応援を呼んで連れて来てくれるだろう。

どう見てもこの3人の腰巾着達はヘタレだ。私は時分の命が惜しい。彼らだけに託せば助かるものも助からないだろう。

しかし…。


「おい…今の御者の台詞聞いたか?」

アークが顔を青ざめさせている。

「ああ、俺も聞いた。確かに聞いたぞ」

マテオは走り去っていく馬車を見つめながらぼそりと言った。

「だ、駄目だ…あの御者、絶対にもう戻ってこないぞ…」

聞き捨てならないオーランドの台詞に驚いた。

「えっ?!ちょっと!どういう事なの?!応援を呼びに行ったんでしょう?」

オーランドの襟首を掴みながら必死で尋ねた。するとベルナルド王子が言った。

「そうだな。オーランドの言う通りだ。あの御者は『今すぐにここから逃げる』と言ったんだ。だから戻っては来ないだろう。うん、やはり我々だけでなんとかするしかないようだ」

「ええ、そのようね。私はいつでも準備出来ているわよ」

何故かテレシアは自信たっぷりだ。…ひょっとすると彼女はとても強い女性なのかもしれない。

「テレシアさん。私…貴女についていくことにしますっ!」

私はテレシアの手をガシッと握りしめると言った。

「ええ。任せて頂戴!」

そしてテレシアは男性陣たちをぐるりと見渡すと言った。

「ではみんな!屋敷へ突入よっ!」

そして私達はその後じゃんけんで誰が先頭を歩くかを決め、負けたオーランドが扉を開ける役割を担う事になった。


「うう~…そ、それじゃ中へ入りますよっ!」

オーランドは半ばやけ気味に言うと扉に手を触れた―。


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